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声・脳・教育研究所 立ち上げまでを振り返る〜五戸美樹のごのへのごろく〜

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声・脳・教育研究所 立ち上げまでを振り返る〜五戸美樹のごのへのごろく〜

《 本日のごのへのごろく 「声と脳 知識広めて まいります」》


この度、「一般社団法人 声•脳•教育研究所」(こえ・のう・きょういく けんきゅうじょ)を設立しました。私は副代表、代表理事は声と脳の専門家・山﨑広子先生です。トーク編コラム「研究所設立までの話」。

 ■会えなかった出会い■

私と山﨑先生との出会いから振り返ってみたいと思います。

まだ私がニッポン放送のアナウンサーで、『上柳昌彦 山瀬まみ ごごばんフライデースペシャル』のリポーターを担当していた時、ゲストに山﨑先生がいらっしゃいました。私は中継先から、スタジオのゲストトークを聞いていて、声を科学的に分析する山﨑先生のお話に感銘を受け、ぜひお会いしたいと思い、中継後急いでスタジオに戻るも、先生は既にご帰宅に。

山﨑先生は『8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声』を発売された頃だったので、私はまず本を読んで勉強をし、いつか先生に会いたいと思いを募らせながらも、局アナ時代は叶うことなく退社。

その後フリーアナウンサーとして活動中、日刊スポーツでWEB連載を持つことになり、「今こそチャンス」と思い立ち、山﨑先生に取材を依頼し、やっと直接お話を伺うことができました。

 ■相談会になった取材■

私は取材当時、タレントにトークレッスンをするようになった頃で、ラジオのオープニングトークの作り方などを指導していましたが、声についても伝えられないとらちが明かないと思うことが多々ありました。本番になると作り声になる子や、プライベートの時から作り声でしゃべっている子は思いのほか多く、山﨑先生の本から学んだ「オーセンティック・ヴォイス」を見つけることを、生徒たちに提案し始めていました。

初めての取材は、先生がどうやって声を科学的に勉強されてきたのかといった質問をするとともに、私の相談会になってしまいました。「このストレッチは声が出しやすくなると思うんですがどうでしょうか!?」「この子は普段から高音で話すんですが、本来はもっと低い声だと思います、どうでしょうか!?」などなど…。先生は嫌な顔ひとつせず答えてくれました。

山﨑先生はそれまで、たくさんのボイストレーナーを取材してきて、特に話し声に関しては「オーセンティック・ヴォイスを見つける」という観点からあまりに離れた教えをしている教室が多く、「通わないほうがいい」と結論を出されたところで、オーセンティック・ヴォイスを見つけて、磨くことを目指している私のような存在は、かなり珍しいようでした。

 ■先生に興味を持ってもらえた自分の声■

一方で山﨑先生は、私の声に興味を持ってくれたようでした。のちのち伺ったことですが「はじめからオーセンティック・ヴォイスをバリバリに発揮して取材をしてくれたのは五戸さんが初めて」とありがたくも言っていただいたことがあります。

私は元々今の声だったわけではなく、かなり苦労してやっとたどり着きました。滑舌に関しては「サ行」と「ザ行」が極端に苦手で、大学の頃に初めて“舌をあてる位置”が間違っていることを知り、それから修正したのでかなり時間がかかりました。

 ■自分の声がわからなかった頃■

それに、「口を大きく開ける」ことが正しいとする“都市伝説”を信じていたので、入社4年目くらいまで滑舌が悪いままでした。「ニッポン放送からのお知らせです」が、どうがんばっても言えないのです。

また、新人の頃はもっと声がボヤッとしたイメージでした。放送を聞いていると、プロの先輩方が話している中に、間違えて“素人”が混ざってしまったような感じがしました。その“素人”の声が自分の声でした。もっと先輩たちは芯があって響きのある声だったのです。

そして、本番は今よりもっと高音で話していました。明るく聞こえるのは高い声だと勘違いしていたからです。以前このコラムにも書いたことがありますが、作り声で話すのは、舌骨筋への影響が出る可能性があり(=滑舌が悪くなる)、心身ともに悪い影響が出ることも考えられます。

 ■そうしてやっと今の声に■

口を大きく開けないようにして、本番で高音にならないようにし、しゃべり始めにぐっと力を入れるのをやめる…こういったことを、何度も何度も繰り返しトレーニングをして、録音を聞いて確認して、やっと今の声になりました。

私のこの、今の声になった流れを、山﨑先生はとても興味深く聞いてくださり、先生の本『相手に届き、自分を変える 心を動かす「声」になる』に「オーセンティック・ヴォイスを使いこなしているアナウンサー」として取り上げていただきました。

 ■心に火がついた番組■

その後も、度々情報交換をさせていただくにつれ、この教えをもっと広めないといけないんじゃないかと思うようになりました。それを強く思ったのは、テレビでとあるボイストレーナーを取り上げているのを見た時です。簡単にまとめると、高い声を推奨して、作り声になった女性を褒めているような内容でした。

息苦しい世の中だなと思いました。本来持っている声を無視して、高音が美しいとする価値観で責めて、同調させて、自己否定させる…うう、苦しい…。いくら私ががんばって活動しても、日本人の声に対する考え方は変えることができないのではないかと、絶望すら感じました。

でも、声について本当のことを知りたいと思う人は少なくないはずで、知識が広まれば、そしてそれを教えられる人が増えれば、ボイストレーナーの教えの何が間違っていて、何が正しいのかを、生徒さんたちが判断できるようになるのではないかと考えるようになりました。

 ■結果的にコロナもきっかけに■

次第に山﨑先生と話し合うようになり、知識を広めるためには、今までのように書籍を出すだけでなく、教科書が必要ではないか、その教科書を元に資格がとれるようになればいいのではないか、資格を認定するなら団体を作ったほうがいいのではないか・・・このように逆算をしていって、社団法人設立の検討が始まりました。

そんな中、新型コロナウイルス感染症拡大があり、身動きがとれない一方で、山﨑先生の講演会のお仕事がすべて延期になり、私も司会の仕事が中止や延期になったことで、ぽっかりと時間が作れることになりました。ピンチはチャンスだとばかりに、設立に向けて動き始めようと思い立ち、信頼できる行政書士さんや税理士さんと出会うことができ、オンラインで打ち合わせを進め、無事設立ができました。

 ■存在意義と野望■

法人の業務をしていて思うのは、これが「自分にしかできない仕事」なのではないかということです。ずっとどこかで「自分にしかできないことってなんだろう」と考えていた気がします。

手広くやり過ぎだとか、そんなに抱えてどうするのと言われることもありますが、私はこの法人を一生かけて大きくしていきたいと思いますし、もっと仲間を集めて、数十年後には自分以外の方がプロジェクトを立ち上げるくらいにしていきたいです。

ここはまだまだスタート地点。まずは資格を取得された方が誇らしく思えるような、そんな団体にしていきたいと思っています。

【参考図書】山崎広子先生の著書『相手に届き、自分を変える 心を動かす「声」になる』(大和書房)、『8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声』(角川新書)、『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』(NHK出版新書)、『人生を変える「声」の力』(NHK出版)。


【五戸美樹】(コラム「第85回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)(題79回までは日刊スポーツコムに掲載し、オンラインサロンのライブラリに抜粋。第80回以降ライブラリにのみ掲載)


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