ユーザー参加型のゲーム開発とは?チームアルカナ高屋校長を直撃!

著者名CANARY 編集部
高屋校長とチームアルカナ-新作格ゲー開発室-
美少女対戦格闘ゲーム『アルカナハート』シリーズを手掛けるチームアルカナが全く新しいゲーム制作の形を作り上げようとしている。2016年末より新作のアルカナハートを制作すると宣言した高屋校長。注目すべきはその制作形態で、なんとオンラインサロンやTwitterなどのSNSを通じて、制作過程をオープンにする試みを行っている。

「#アルカナハートを遊ばない理由」という衝撃のハッシュタグ

美少女対戦格闘ゲーム『アルカナハート』新作の制作過程をオープンにする今回の試み。企画会議やキャラデザインの草案、仕様書やシナリオ、生々しい資金調達の話までもがSNSで公開されている。さらに、オンラインサロンメンバーになれば開発スレッドの議論にまで加わり、開発の始まりから終わりまで全てを見ることができるだけでなく、自分の意見がアルカナハートにダイレクトに反映される可能性もある。

アルカナハートファンはもちろん、ゲーム制作に携わる人、マーケッターなど様々なジャンルの人にとって有用な本プロジェクトは業界内外で注目されてきている。今回は、チームアルカナの最重要人物であり、サロンオーナーの一人、高屋校長に直撃した。

 

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–アルカナハートの魅力はホーミングや相殺システムなどの多様なシステムにあると感じています。その分システムの複雑さから新規ユーザーに敬遠される可能性があると企画会議でも懸念されておりました。

その対策としてTwitter上で一般の方に向けて「アルカナハートを遊ばない理由」という衝撃のアンケートを公式から発信するまさかの展開に震えました。今回、SNSで広くユーザーから意見を募ったことによるメリットは何でしょうか?

高屋校長:メリットとしては、やはり多くの人に知ってもらえることですね。

ゲーム開発において「開発をユーザー参加型にして、しかも会員料金まで取る」と言うやり方は、これまで国内では誰もやったことがなく、参考に出来る前例もなかったんですよ。それで、ジャンルは違いますが他の方々のサロンを拝見して、やはり運営者自身が宣伝頭にならなければいけないなと思い、まずは長く放置していたtwitterを再開させることにしたんですね。

初めは 「完全新作か、続編か」 という企画の方向性を決める時に、ほんとに何気なくアンケートのツイートをしたのですが、アルカナハートはどちらかと言えばニッチなタイトルにも関わらず、1日で1200票が集まり、私自身おどろきでした。

これは「ユーザーの意見も聞きつつ宣伝になる」

と思い企画の方向性を決めたいときにアンケートを取ることにしました。「アルカナハートを遊ばない理由」のアンケートは、投票数3,345票、 10万ビューになりましたね。

 

–海外からの反応はいかがでしたか?

高屋校長:海外市場に向けては、ユーザーの動向が日本とは違うので、日本特有の「ブルマやスクール水着といった萌えキャラ衣装」について、どう思うか?を、率直に聞いてみたかっただけなのですが、ものすごい勢いでコメントが帰ってきてこちらも驚きでした。

その多くは「日本と同じものを遊びたい」というものでしたが、日本のゲームが海外で発売される際に「表現規制」が入って、服装が露出の少ないものに変えられたりすることが良くあるんですよ。それで、自主規制で日本と海外で違ったものにはしないで欲しいという熱い意見を多く頂きました。

海外ユーザーの生の声を聞けたのは非常に有意義でした。

–逆にデメリットはありませんでしたか?

高屋校長:デメリットは、今のところは何もないです。強いて言えば、引き返せなくなったことくらいでしょうか(笑)。

 

将来的にゲームを作る人が一人でも出てきて欲しい

高屋校長とチームアルカナ-新作格ゲー開発室-

–企画会議の中で、現実的な資金調達の話をされている(かつそれを公開しちゃっている)ことが印象的でした。資金調達関係のお話について、業界関係の方からの反響はありましたか? 業界の方からすれば「チームアルカナの事情ってそうなんだ」と衝撃があったのかなと想像しています。

高屋校長:予算やスケジュールの話は同業者であれば、いつもしている話なので、内容に関してはあまり反響はありませんでしたね、まぁ話しづらい内容でもありますし(笑)。

今回、クラウドファンディングでの開発資金集めを考えているのですが、こちらは、かなり興味はあるようですが、なかなか普及しませんね。私もこの方法は、もっと早くに日本国内で広まって一般的な資金集めの方法になると思っていました。

これが、実際に仕掛けてみると、なかなか条件が多く、「自社ブランドの商品がある」「開発者かタイトルに、すでにファンがついている」「会社の規模が大きすぎない」「失敗時の責任取る人がいる」などなど、簡単には手が出せる状況ではないようです。

そして、本当に開発資金を調達できるのは、ごく一部のタイトルで、ほとんどは「宣伝」として扱っているようですね。 みなさん、ひとまず様子見と言ったところですかね。

サロンの参加者からは「早く金を払わせてくれ」と言う、ありがたいご意見も頂いていますが、時期や目標金額など慎重に決めていきたいと思います。

–フルスペックならx億かかる、予算の都合上重視する要素、削る要素、利益を出すためには何本売らなければならないかなど非常に生々しい会議をされていましたね。

高屋校長:開発予算やスケジュールのことを、かなり細かく報告しているのは、参加者の中から、将来的にゲームを作る人が一人でも出てきて欲しいという想いからです。数年後に、参加者の中から一人でもクリエイターが現れれば、このチャレンジは成功だったと言えると思います。

 

「ゲーム制作」と「オンラインサロン」の相性がいい

–サロン内ではシナリオやゲームシステム、キャラデザまで多岐にわたるスレッドが立てられており、そのどれもが活発に議論が交わされていて驚きました。多いものだと100件近くのコメントが! これほど盛り上がっていることの要因は何だと思いますか?

高屋校長:盛り上がっている要因はやはり「ゲーム制作」と「オンラインサロン」の相性がいいからだと思いますね。ゲームクリエイターは人気業種の上位にいますが、実際には一握りの人しかなれませんし、その実情は非常に厳しいものです。その開発現場にネットを介して少しでも関われるというのが、受け入れられたのではないでしょうか。

それが、これまで遊んでいたゲームの新作であればなおさらでしょう。

–サロンのスレッドを盛り上げるために配慮している点などはありますか?

高屋校長:「意見を聞く」ようにしています。開発スタッフが考えた内容を報告するだけでなく、サロン内であがった意見に対しては、それがどんな内容でも「そんな見方があるのか。なんとか取り入れられないだうか?」と一度、客観的に見るようにしています。

あとは、入会した方に提供できるサービスが少ないと、失望させてしまうので、スタート直後は、とにかくコンテンツを増やすことに注力しました。それが結果的に活性化に繋がったのではないでしょうか。

今ではかなりのコンテンツ量となり、入会された方の離脱率も非常に低いですね。

 

ユーザーの反応が見れるのはスタッフのやる気向上に

 

–ゲームの企画、スケジュール管理、各チームのアサインに加えてTwitterやサロンにあげられる情報の分析、サロン内での企画立案など、ゲーム制作をオープンにしたことでとても作業量が増えたのではと推察しております。今回この手法をとったことで苦労している点はありますか。

高屋校長:実は、今回の方法をとることによっての苦労はあまりないんですよ。企画、スケジュール、作業のアサインといった業務は、実際の開発現場でも行っているのですが、サロン向けに素人にもわかりやすいように、考えをまとめてから動画で報告するようになったことで、逆に開発チーム内での情報共有も以前より出来るようになりました。

末端の作業をしている人にも、どの様なことを考えて企画の方向性が決まったのかを知ることが出来ますしね。作業量自体も、依然と比べ極端に多くなったとは感じません。結局は、同じ業務をやっているのを、内部スタッフだけに報告するか、サロンで報告するかの違いでしかありませんしね。

–なんだか良いことづくめのような感じですね。

高屋校長:もう一つ大きなメリットとしては、ゲームの企画着手から発表までは、短くても1年以上はかかるもので、通常、開発をしている期間は「きっと面白いはずだ」と信じて進めていくのですが、製作途中のものをサロンで発表する機会が出来たことで、製作途中でもユーザーの反応が見れるのはスタッフのやる気向上にも繋がっていますね。

キャラクター制作にはサロン内のユーザーの意見がかなり反映されています

–サロン内のユーザーの意見はゲーム内容にどのくらい反映されているのか、高屋校長も参考にした意見があったのか、差し支えない範囲で教えてください。

高屋校長:キャラクター制作にはサロン内のユーザーの意見がかなり反映されていますよ。なるべく取り入れるようにしているのは、すでにファンがついている前作のキャラクターの取り扱いですね。逆に、新しい試みに関しては、我を通すこともあります。賛否の意見が出てくるくらいの方が、良いアイデアの場合が多いので。

サロンで開発を行うことの一番のメリットは、「クオリティのチェック機構」としての働きです。このアイデアどうですか?と、曖昧に投げかけた場合にもいろんな視点の意見がいただけるので、その中から、よりよい物をチョイスしてブラッシュアップしていけます。始める前はファン視点の意見が多いと思っていたのですが、いざ初めて見ると客観的に分析した意見も多く、非常に幅が広いので、実際の企画内容を考える際にはかなり参考にしています。おかげで、現在、進行中の企画には非常に手ごたえを感じています。

高屋校長とチームアルカナ-新作格ゲー開発室-

 

–一般読者にこっそり教えてもらえる作品の最新情報があれば教えてください。

高屋校長:現在、サロン内では二つの企画が進行中です。一つは完全新作。

そして、もうひとつは「アルカナハート3 LOVEMAX SIXSTARS!!!!!!」の家庭用の発売です。この作品は、アルカナハートの最新作なのですが、現在アーケード版のみ稼働中で、これまで家庭用ゲーム機へ移植されていません。多くの要望をいただいていながら、これまで着手出来ていませんでしたが、サロンのおかげようやく動き出すことができました。

開発資金は、クラウドファンディングで集めたいと思い、事前登録サイトを立ち上げました。

アルカナハート3 LOVEMAX SIXSTARS!!!!!!

まずは移植を目指しますが、より多くの資金が集まった際に向け、新キャラクターや新ストーリーの追加なども準備も進めており、開発状況もサロン内で少しづつ公開しています。

–最後に、高屋校長にとってズバリ「チームアルカナ」とは何でしょうか?

高屋校長:「ゲームへの”愛”の集まる場所」といったところでしょうか。ありがとうございました。

 

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ユーザー参加型ゲーム制作の試金石!チームアルカナから目を離せない

いかがだっただろうか。オンラインサロン内では、開発費の話やシステムの裏話まで、え? 載せちゃっていいの?と言った情報が公開されている。

『アルカナハート』ファンはもちろん他業種のビジネスマンにとっても、具体的なマーケティング理論、開発フローが学べるため、オンラインサロンとしてだけでなく新しいプロジェクトマネジメント手法としても注目されている。

高屋校長自身もユーザーの意見を即時反映できるこの開発手法は有効な手段だとして手応えを感じているようだ。ユーザーにとっても開発側にとってもWin-Winなこの試み。今後もチームアルカナの開発から目が離せない。

興味を持った人は、クラウドファンディングやオンラインサロンで、ぜひこのプロジェクトに実際に参加してみてはいかがだろうか。

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高屋校長とチームアルカナ - 高屋校長とチームアルカナ-新作格ゲー開発室- - DMM オンラインサロン格闘ゲームを制作したスタッフで結成された、チームアルカナが参加者と新作格闘ゲームの企画を立ち上げ、一緒に楽しみながら完成を目指します。
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