「概念は実在しない」ってどういうこと? 池田清彦が語るその意味とは

池田清彦先生

フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」に出演していることでも知られる、早稲田大学国際教養学部教授、山梨大学名誉教授である池田清彦。

専門の生物学分野のみならず、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する70冊以上の著書を持つ同氏が、様々な情報を発信しているオンラインサロン『池田清彦のあなたも自由人になろう』のサロンメンバー限定交流会が開催されました。

その模様をお届けします。

 

存在しているのは「人間」ではなく、個人である

池田清彦

池田清彦先生とリアルなディスカッションができる交流会が行われたのは、真夏日となった8月10日。最近の政治情勢などについて冗談も含め雑談をしながら、話は本題へ。

「今日のテーマは『概念は実在しない』。これは構造主義科学論で一番重要なメッセージなんだ」

概念は実在しない…。

何か禅問答のような印象を受けますが、一体どういうことなのでしょうか?

「例えば『犬』という名前はあるけど、実在しているのは個々の犬だよね。『人間』という概念はあるけど、実在しているのはそれぞれの人間。つまり、一般名詞というものは実在しないんだ。それは世界を切り取って名前をつけているだけで、言葉というものは実在を含んでいない。」

「結局、犬って何かというと、生物学者は犬の特徴から犬を定義するけど、突然変異を起こしたやつも犬なわけだ。かつてプラトンは『犬のイデアを持っているものが犬』として同一性で括ろうとしていたけど、ともかく普通の動物にとっては概念なんてもの存在しない。

人間にしか存在しない考え方なんだよね。人はそれぞれみんな違うけど、それを別物としてしまっては話が通じないから『違うものを同じとみなす能力』が必要で、それが概念なんだ。」

 

犬などの存在だけではなく、病気も存在しない?

池田清彦

池田先生の「概念」についての話は、犬や人間といった存在だけでなく、病気のような現象や状態にも当てはまるという。

「神戸大学で感染症を専門としている岩田健太郎さんという人が『感染症は実在しない』という本を書いたんだけど、例えば結核という病。結核菌が検出されるけど症状が出ない人というのもいて、それは『結核菌に感染している人』であって『結核の患者』なのか?というと分からない。

さらに『統合失調症』なんて医者が勝手に言っているだけで、本当にあるか分からないよね。患者によって全然症状が違うし、薬を飲んでも効く人と効かない人がいる。社会生活が困難な人もいれば、普通に働いている人もいる。そうなると同じ病気かというと、とても怪しくなってくる」

疑うこと。そしてこの「概念は実在しない」という考え方が役に立つのは、自身が病気になった時なのだと池田先生は言います。

「医者も患者も、病名が決まるとその病名から『最適な治療法がある』と勝手に決めて薬を飲んで、それが効かないと『おかしいですね』ということになる。

でも病気が実在しないと思っていれば、何もおかしいことじゃない。違う病名をつけて治療した方が上手く行くということだってある。

それまで同一性でくくっていた病気を二つに分けて、それぞれ違う病名をつけて治療するようになった例とかあるでしょう。いい加減なものなんですよ。実在しているのは症状に苦しんでいる人だけだ。」

 

同じ人でも、毎日変わっていく。それを知ることが大切

池田清彦

病気は実在せず、実在しているのは苦しんでいる人だけだと話す池田先生ですが「苦しんでいる人」についても疑問を投げかけます。

「その病気で苦しんでいる人も毎日容体が変わるんだよね。アレルギーだってそうで、今日食べているものが明日ダメになるかもしれない。僕という人は実態として存在するけど、その中身は毎日変わっていくから、小さい頃と今では違うわけでしょう。それに対して合う生き方というのは自分で考えるしかない。」

自分で考えること。その大切さの再確認こそが「概念は実在しない」という考え方から得られる大きなメリットかもしれません。

「とにかく概念というものは頭の中にしかない。『平和』だって『正義』だって、人それぞれ思い浮かべるものが違う。指し示すことができないものというのは危険だ。

言葉というものは、同じ言葉を使っていると思いがちだけど、それが指し示している概念が頭の中で違うと全然話をすることができなくなってしまう。

国家が実在すると思っている人は多いけど、そんなものは実在しないんだ。国家が潰れても人間は存在できる。大日本帝国が潰れても日本人が生きているように。」

 

自由人として知を考え、楽しむオンラインサロン

池田清彦

こうして「概念は実在しない」をテーマに池田先生が自由に話を行い、それに対して参加者が質問をするなどして盛り上がった交流会ですが、実は話題はそれだけではありませんでした。

「言語におけるネイティブの定義とは?」
「文章上手くなるコツはリズム」
「ベーシックインカムと自動運転」
「YouTuber」

など、ちょっとした話の脱線がいつのまにか深い考察に至っており、とにかくエキサイティング。話題は尽きることなく、交流会は池田先生も参加した二次会へと続いていきました。

池田先生によるコラム配信のみならず、ディスカッションも行われているオンラインサロン『池田清彦のあなたも自由人になろう』では、不定期でこうしたオフラインの交流会も開催されています。

池田先生の深い見識から生み出される知的なハプニングは、毎日に新鮮な驚きをもたらしてくれるはず。あなたも参加してみませんか?

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照沼 健太

編集者/ライター/カメラマン。MTV Japan、Web制作会社を経て、独立。2014年よりユニバーサルミュージック運営による音楽メディア「AMP」の編集長を務め、現在は音楽・カルチャー・広告等の分野におけるコンテンツ制作全般において活動を行っている。ブログメディア「SATYOUTH.COM」を運営中。