ここから日本が変わる。猪瀬直樹サロン『近現代を読む』オフ会レポート

著者名安里 和哲

すっかり秋めいてきた平成29年9月26日の東京は、激震の只中にあった。

前日9月25日に都知事である小池百合子氏が「希望の党」を立ち上げたからだ。このニュースを耳にしたとき、翌26日に開かれる猪瀬直樹氏のオンラインサロン『近現代を読む』のオフ会が、がぜん楽しみになった。

 

猪瀬直樹のオンラインサロンはふだんFacebook上で意見交換をする場だ。猪瀬が語るだけでなく、さまざまなフィールドで活躍している会員たちが忌憚なく議論を交わすサロンとなっている。

このサロンは定期的にオフ会を開催している。全国に散らばるサロン会員たちが一同に会するのだ。

さて、現在の混乱する政局を猪瀬はどのように見ているのだろうか。都知事として、2020年東京オリンピック・パラリンピックの誘致に成功した猪瀬は、今の東京、そして日本をどのように読んでいるのだろうか。元都知事であり、作家としても精力的な活動をしている猪瀬直樹の開催するオフ会をレポートする。

 

猪瀬直樹とサロン会員の相思相愛

18時、僕が猪瀬オフィスの前に着くと、会員がふたり、立ち話をしていた。開始は18時半だ。待ちきれず来てしまったのだろう。

ふたりとも関西からやってきた方だ。彼らは毎回、このオフ会のために時間をやりくりして遠路はるばる東京にやってくる。

サロン会員はみな一様に猪瀬に対するリスペクトを語る。作家や政治家としての仕事に感銘を受けている人もいれば、単純に人柄が好きで応援しているという人もいる。理由はそれぞれだが、みな高い熱量を持っている。

猪瀬直樹と蜷川有紀

この日は、猪瀬の恋人であり画家で女優の蜷川有紀氏も見えていた。猪瀬が座るソファーの隣に座るよう、僕は勧めた。しかし彼女は「ここでいいですよ」と微笑み、丸椅子に腰掛けた。

サロン会員を前にして、様々な話題を繰り広げる猪瀬を少し後ろから控えめに見つめる蜷川氏が印象的だった。

猪瀬が恋人をサロンに呼ぶところに、猪瀬がサロン会員たちに向ける信頼の厚さを感じた。

 

猪瀬直樹のリーダー評 〜石破茂の素直さ、小池百合子の国家観のなさ〜

当日、9月27日から開催される「安藤忠雄展 挑戦」の開会式に蜷川さんと共に出席したという猪瀬は、同じく出席していた小泉純一郎元首相の話題をとっかかりに語り始めた。

猪瀬自身が所長を務める日本文明研究所のシンポジウムで、小泉氏が見せた「脱原発」への熱い想いを、猪瀬は評価しているようだ。

 

「僕自身は、原発に反対するのもどうなのかなという立場だけど、小泉さんの話を聞いてると実現できそうな気がしてくるんだよな。説得力がある」

その一方で、安倍内閣には原発担当大臣がいないことを指摘し、「安倍さんには政策がないんだよなぁ」と、痛烈な言葉を放った。

「安倍さんの唯一良いところは人の意見を素直に聞くところだったのに、今はそうじゃなくなったよね。獣医学部だって本当につくりたいんならつくればよかった」

重ねて、次の解散総選挙の勝利ラインを自民公明合わせて233としたことにも「はっきり言ってそれじゃ負けだよね」と一刀両断する。

さて、「希望の党」を発足した小池百合子都知事のことを、猪瀬はどう思っているのだろうか。小池さんの国家観については、『国民国家のリアリズム』(三浦瑠麗・猪瀬直樹著)で三浦さんと話し合ってるんだけど……」と言い、小池氏のことを語った。

「結局、小池さんは『銀座のマダム』のように海千山千の客あしらいがものすごく上手なんだよね。

失礼な質問が来ても、小池さんはニコッとしてかわすよね、あの辺は本当にうまい。僕なんかはすぐムッとしちゃう、顔に出るんだよ(笑)」

先の都議会選挙は「都民ファーストの会」が勝ち過ぎた結果、パワーバランスが崩れた。

「都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏を倒し、小池都政に移るまではよかった。しかし、自民党の稲田朋美元防衛大臣や豊田真由子氏が決めたオウンゴールは、「都民ファースト」に実力以上の勝利をもたらしてしまった。その結果、「都民ファースト」のガバナンスが問われている。

猪瀬直樹の「近現代を読む」

では、北朝鮮情勢の緊張がエスカレートし、原発の問題も棚上げされ、オリンピックに向けて明るい未来ばかりではない日本を立て直せるリーダーをいないのだろうか。

ここで猪瀬は石破茂氏に期待を寄せているようだった。

「石破さんは素直なんだよ。そこが偉い。彼が防衛副大臣になったとき『昭和16年夏の敗戦』を読んで『僕はこんなことも知らないで防衛副大臣やってたのかと恥じ入った』って言うんだ、そういう謙虚さがいいよね。それで菅直人に『これ読んだか!』って国会の予算委員会で質問していた」

昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

猪瀬は「石破さんってやっぱりインテリなんだよね」と評価し、次のようにも語る。

「菅直人に質問した時も1時間半原稿なしで喋ってるんだから。

稲田朋美なんてのが防衛大臣だったのはとんでもない話でね。防衛っていうのは専門家がやらないとダメ。憲法改正の問題でも、きちんと答えられる人がやらないと」

安倍首相が謙虚でなくなったことを嘆きながら、石破氏の知性を高く評価した。猪瀬が国家のリーダーに期待することは、確かな国家観と、政策、そして素直さだということが、この日のオフ会では垣間見えた。

 

猪瀬自身、とても謙虚な人だ。サロン会員がFacebook上である映画をオススメすると翌日には鑑賞して感想を書き込んでいる、なんてことが頻繁にある。この行動力に驚かされてしまうばかりで本質が見えなくなりがちだが、この行動力の根底には猪瀬の好奇心がある。

人が良いと言ってるものが少しでも気になったら、自分も試してみようという無邪気さを、猪瀬は持っている。猪瀬と長く付き合いのある人は、「猪瀬さんはずっと少年みたい」と言う。

人が勧めるものに、虚心に、しかもすばやく反応する。自分が知らなかったことには先入観なく驚き、好奇心を持ってさらに話を聞こうとする。

こういった「素直さ」が猪瀬直樹の知的活動の根底にある。だからこそ彼は、息の長い作家として、読み継がれる作品をいくつも書いてこられたのだろう。

 

文章は映像だ。

先日、サロン会員の長島芳明氏が『銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語』 (角川書店)を上梓した。この日のオフ会では彼自身が著作の解説を行うコーナーも設けられた。

銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語

長島さんは、ホワイトボードに書き込みながら、著作の裏話や出版後のエピソードなどを語ってくれた。

著作の解説を行う長島さんに対して猪瀬が鋭い質問を飛ばし、より深い議論が生まれていくエキサイティングな時間。作家同士にしか分からない質疑応答をも繰り広げる二人に、駆け出しライターの端くれとして僕は、少しばかり嫉妬してしまった。

猪瀬直樹の「近現代を読む」

また、この著作にはある冒険家が出てくる。それに触れて猪瀬は興味深いことを語った。

「冒険家は文章がうまいんだよ。言葉にならないような絶対的な風景を見ているからなんだろうなあ。自然描写がとにかくうまい人が多い」

猪瀬はいつも「情景が目に浮かぶ文章が書けなきゃダメだ」とか「文章は映像なんだ」と言う。たしかに猪瀬の著作同様に、『銀翼のアルチザン』も人物や景色が目に浮かぶ良著だった。

 

懇親会では直接質問も。

オフィスでのオフ会が終わると、近所の中華料理屋で懇親会が開かれた。広い個室に置かれた3つの中華丸テーブルは満席だ。2時間超に渡って、猪瀬は各テーブルを回り、サロン会員ひとりひとりと談笑したり、議論したりしていた。

猪瀬直樹の「近現代を読む」

会員から質問が飛ぶ。「本ってどういう風に書き始めるんですか? 最初から結論は決まっていて、設計図を書いてから始めるんですか?」。このサロンには自身も作家志望である方が少なくない。確かにどうやって本を書き始めるのか、僕も気になる……

猪瀬は「設計図はあっても完成形はそれとは違ってくるよ」と言う。

「漠然とした全体像はあっても、書きながら変わってくことはたくさんあるよね。

何よりも大事なのは書き出しのシーンが浮かんでること。結局文章っていうのは映像なんだよね。映像が浮かんでこないのが下手な文章」

この柔軟性が猪瀬の著作が孕むドライブ感の秘密なのかもしれない。文字が映像を立ち上げ、光景がつぎつぎと流れていくから、猪瀬の著作を読むとき人は、ページをめくる手を止められなくなる。

「小説に必要なのは、状況が目に浮かぶように書くこと、そして謎解きの要素があること」だと猪瀬は語る。猪瀬自身が小説の登場人物として、読者と共に謎解きを行っていく。その臨場感が猪瀬の著作を単なる歴史ドキュメンタリーではなく、エンターテイメント性に富む小説に昇華させている。

 

知的好奇心がうずいている方はぜひ猪瀬サロンへ!

猪瀬はフレンドリーにサロン会員とコミュニケーションをとる。記念撮影にも気さくに応じるし、質問にも懇切丁寧に答える。「僕自身、サロンの方々から学んでることがたくさんある」と言っていたが、それは本心だろう。

彼は非常に実践的にものを考える人間だ。自分の知的好奇心が満たされないと分かったら、このサロンは直ちに閉鎖するだろう。しかしその気配は少しも感じられない。

猪瀬直樹の「近現代を読む」オフ会では毎回2冊サイン本が配られる(初回参加の方は4冊)。

誤解されては困るので直ちに付け加えると、僕は何も猪瀬が利己的だと言っているわけでない。むしろその逆だ。猪瀬の知的活動は常に、日本を正しい方向に進めるための奉仕としての側面を持っていた。このサロンもその一環だ。

つまり、明日の日本の担い手を発掘し育てようという秘密の目論見をも、猪瀬は持っているのではないか。1年間サロンに参加させてもらった僕のこの実感は、そんなに的外れではないはずだ。

あなたがもし今の日本を憂いているなら、そして日本を良くすることに少しでも貢献したいと思うのなら、猪瀬直樹のサロン『近現代を読む』に入ることをオススメする。

このサロンの中であなたは、猪瀬直樹と同じ目線の高さ、視野の広さで、近現代を見ることができる。このサロンはいわば、猪瀬直樹の著作をVR体験できる場だと言える。

学ぶ意志のある者を、猪瀬直樹は等しく歓迎するだろう

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