2017年ブロックチェーン技術動向・総まとめ

著者名おくい はつね
即戦力ブロックチェーン技術者養成道場

仮想通貨元年とも言われた2017年。その基幹技術であるブロックチェーンに興味を持ち始めたエンジニアも多いのではないでしょうか。ビットコインを始めとした仮想通貨がどこまで隆盛を極めるのか、金融システムの既存インフラをどう刷新するのか。今後のブロックチェーンを占う上で、2017年度のトピックスを聞いてきました。

お話を伺ったのは、黎明期よりブロックチェーンに携わる、コンセンサス・ベイス社代表の志茂 博氏。経済産業省『ブロックチェーン検討会』委員も務めた経験のある、業界の第一人者です。

 

──早速ですが、ブロックチェーンにとって2017年とはどんな年でしたか?

「一般消費者から見ると、盛り上がった1年ですよね。取引所のTVCMがバンバン流れて、“億り人”なんて言葉も大きく取り上げられました。でも、技術的に大きな革新があったかと言うと微妙かもしれません。どちらかと言えば2016年の方が盛り上がっていました。」

 

──2016年はどんな年だったのですか?

「大手メガバンク、証券会社など金融機関で実証実験が多く行われました。ただ、2017年になっても殆ど実用化には至らないですね。落ち着いたな、という印象です(笑)」

 

──パブリック型は知名度もマイナーも増えたけれど、プライベート型は伸び悩んだという事でしょうか。

「そうですね。ブロックチェーンには中央管理者を持たず、誰でもマイニングに参加できるパブリック型と、管理者を設けチェーン参加者も限定できるプライベート型があります。前者がビットコインなどで、後者が金融機関など企業で取り入れる事が多いですね。法規制などまだ沢山の問題がありますが、特にプライベート型は課題解決に至らなかったと言えるでしょう。ブロックチェーンは秘匿性が難しいという大きな課題があります。例えば複数の銀行でブロックチェーンを導入した場合、取引履歴がすべて公開されてしまうので、Aさんがどれくらいの数量のコインを買ったという情報がB社にも見れてしまう。この辺がなかなか実用化に至らない理由ではないでしょうか。」

 

──なるほど。明るい話題というといかがでしょうか?

「やはり仮想通貨とICOでしょうね。技術的な進化はイマイチかもしれませんが、一般消費者からの反響や世の中への波及効果という所で言えば大きな盛り上がりを見せました。やはりこの2つが2017年の主要トピックスでしょう。」

 

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仮想通貨

「2017/04/01に仮想通貨法が施行されました。銀行法の資金決済に関する項目ですね。これを機に上場企業の参入も増え、一般層へも急激に浸透しました。ビットコインは時価総額が1年で26倍となったことは記憶に新しいです。

──技術的な課題はまだあるのでしょうか?

「全然あります(笑)。インターネットで言えば、1994年から96年くらいの黎明期の段階ですよ、まだ。一番の課題がスケ-ラビリティです。ビットコインは、少し前までは世界の裏側に一瞬で送金できたのが、今では1日経っても送れないことがある。0.01円で送金できていたのに、今では何千円もかかることもある。銀行より高いです。送金指示を扱うハコが1MBしかないことが原因なのですが、マイナーやプログラマーの間で、ビットコインはいかにあるべきかという政治論争に発展しました。これだけ手数料が高額になるのはおかしいという派閥。問題はあってもビットコインとしての価値を守るべきという派閥。結果、ビットコインとビットコインキャッシュに分裂してしまいました。この議論と事の顛末は、アツかったですね(笑)」

「その他に問題は色々あります。例えばUXですね。“このワードをメモしてください”だの分かりづらい、使いづらい仕様が多いです。より沢山の人を取り込んでいくためには解決すべき課題でしょうね。」

ICO

「ICOとは、仮想通貨の発行で資金を調達するという新しい調達法です。昔はエンジェルやベンチャーキャピタルからの調達が一般的で、最終的な出口もIPOか買収かという淡々としたものでした。それが今や国内企業が国内外から100億円相当を調達するなど夢のある世界へ変貌しています。テレグラムに至っては数千億の調達目途など、明らかに調達の常識が変わりつつあります。

「中国のICO詐欺などは大きな問題になっています。日本でも金融庁や業界全体の動きで今後自主規制が行われる可能性があるなど落ち着く傾向にはありますが、世界を大きく変えたという意味ではものすごい出来事ですよね。」

──ICOはやや尻すぼみの状況ということでしょうか?

「全てが新しい世界なので、“読めない”が回答ではありますが、いったん落ち着くんじゃないでしょうかね。代わりに今は“ゲーム”が出てきました。『CryptoKitties』ですね。ブロックチェーン上で猫を育て、それが子猫を産んだりするゲームなのですが、猫が1,000万円相当で取引されることもあります。ネット上で1,000万のデジタルアセットがばんばん取引されるなんて、本当に世界が変わりましたよね。」

金融業界“以外”の参入

「仮想通貨、ICOに加えてトピックスに上がるのが、メーカーや不動産など金融業界以外の参入でしょうか。ブロックチェーンとサプライチェーンやIoT・スマートロックを掛け合わせる多様な実証実験が行われました。実用化に至ったものはほぼ無いものの、2018以降に盛り上がる可能性はあると思いますね。楽しみです。」

 

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いま、ブロックチェーンを学ぶ面白さ

「お金をプログラミングできる。こんなダイナミックな事が実現できるのがブロックチェーンの面白さだと思います。この条件が揃ったら送金する、botを作って自動売買とか。オンラインサロンには、個人の範疇レベルで儲けたい人も、起業を考える人もいます。企業でもブロックチェーン技術者を雇用したいものの、経験者が殆どいないので、今始めれば第一人者になれる。今はまさにそんなタイミングです。」

 

──ブロックチェーンを学ぶには、どんなエンジニアが向いているのでしょうか?

「難しいお題ですね(笑)。ブロックチェーンには色んなレイヤーがあります。暗号、ハッシュ関数、ネットワーク、P2P、コンセンサスアルゴリズム、DB、アプリケーション、ハードウェアなど…。それぞれの分野で活躍している方がいます。使うだけなら送金指示のAPIを叩けば良いですし、僕もそうですけどweb技術があれば十分ですが、組込でハードウェアを作る人もいるので、目的次第だと思います。」

 

──目的次第で、いかようにも使えるという事でしょうか。

「そうですね。目的次第でやりたいようにやれます。常に皆が新しいアイデアを出していますよ。日進月歩で業界絵図が変わっていく。僕も3ヶ月先の事は皆目分かりません(笑)。アイデア次第で、これまで世の中に無かった世界初のモノを作れてしまう可能性がある。ともすれば、常識外れの額の資金調達ができるような技術です。世の中のあるべき論やリミッターを外して自由に構想できる方にはもってこいの領域だと思います。」

 

──個人的な野望や、見てみたい世界というものはありますか?

「個人的には、組織のあり方、お金のあり方が今後どう変容するのかに物凄く興味があります。組織の話をすると、本当はプロダクトを作るのに組織や会社なんて必須ではない。ゲームを作るなら、ブロックチェーン上で有志を募ってマーケターやディレクター、プログラマーは集まる。プロダクトの所有者もいらない。もっと自由なモノづくりをできるはずなんです。そんな組織やお金から解放された世の中を見たいなと思いますね。」

 


■即戦力ブロックチェーン技術者養成道場

エンジニアに留まらず「最先端の分野で、何かしてみたい!」という方が集まった当サロンでは、ブロックチェーンの本質や要素技術・基盤技術の解説に加え、最新のブロックチェーンの技術動向やその技術・機能を解説しています。

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