湯川 鶴章氏に学ぶ『世界の2歩先』を読む方法

著者名おくい はつね

AI、仮想通貨、VR──。常に新たなキーワードが飛び交う変化の速い世界で、先を見通すには何が必要なのだろうか?ITジャーナリストとして、テクノロジーの第一線で次のトレンドを予測し続けてきた湯川氏に『世界の2歩先』を読むために必要な能力や考え方を伺った。

 


湯川 鶴章氏

1958年生。時事通信社の編集委員を経て、テックメディア「TechWave」創業。現在は「AI新聞」編集長を務める。代表的な著書は『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)など。


 

──古くはFacebookやAmazon、最近ではAIの動向に早期から注目されていますよね?

Amazonで言えば、2015年からスマートスピーカーの可能性に言及していますね。Facebookに注目したのは2007年のプラットフォーム戦略発表からです。当時はgoogle全盛期。ネット上の情報は年々膨れ上がって、巨大な図書館のような状態でした。で、今後インターネットはどうなるの?と立てた予測のひとつが『巨大な公民館化』です。人間社会の基本って、実名でのコミュニケーションですよね。互いに相手の名前を知った状態で、信頼関係を深めていく。ネットにもその要素は持ち込まれるだろうなと。

実名SNSなんて日本では無理だ、自己顕示欲の強いアメリカ人だから成り立つとか色んな議論がありましたけどね。やっぱり人が生きるというのは、実名で築いてきた生活や人間関係がベースですから。匿名の前に実名がある。実名SNSという、人が集う公民館を基盤として、誰でも開発できるプラットフォーム化を推進したらFacebookはどれだけ大きなインフラになるんだろうと主張していましたね。

AIで言うと『人工知能が急に進化し始めた!』という記事を書いたのが2014年です。各種メディアが注目し出したのは2016年頃でしょうか。

 

──早速ですが、湯川さんの『未来を読む力』を分解すると、どういった要素が他の方より優れてらっしゃると思いますか?

うーん。僕は何にもスゴくないですよ(笑)

 

──情報量の多さ、アンテナの質、トピックスから共通する幹を見つける力など、何か違いがあるのだと思うのですが。

うーん。別に頭がいい訳でも、物事を見る目が優れている訳でもないですねぇ。強いて言えば、英語ができたこと…?僕はアメリカの大学に行ったんですが、ネット上にある英語の文章って、日本語の数百倍位はありますよね。海外で流行っていることを日本でも流行ると言ってきただけです(笑)。──でもそうだ、友達は多いですよ!

 

──2011年から主宰されている勉強会『TheWave湯川塾』は、各界の起業家や著名人の卒業生が多いですよね。時代の先端を走る方々を集める求心力が長けているのでしょうか?

結果的にスゴい人達が集まってますよね(笑)。そして皆どんどん起業したり、転職して重要なポジションに就いたりしていく。僕は一度も転職とか起業を薦めたことなんて無いのに。むしろ『やめておきなよ』といつも言ってます(笑)

勉強会を始めた頃は、どこか怒りと言うかフラストレーションを溜めた人が集まってきましたね。未来は大きく変わる、それを早く捉えて何か取り組まなきゃと思っているのに、周囲や会社に理解されない。そんなはぐれ者が集って、勝手に意気投合して何か始めるといった感じでした。今はもう少し穏やかな感じで、未来を話すのは楽しい、知的な議論が娯楽だという人が多いです。

TheWave湯川塾』同窓会の様子

 

ただ求心力と言われるとどうだろう。結果的に友人たちから最新のテクノロジー情報をキャッチすることはありますが、意図して場を創って人を集めている訳じゃない。ただただ皆とワイワイ話すのが楽しいから続けているだけです。

僕、本当に何にも頑張ってないんですよね(笑)。どうしたらラクできるかしか考えていない。好きなことしかやらない。頑張っている人を見ると『頑張れー』と呑気に応援しちゃう。

子どもの頃からそうです。興味があることをただやっていた。20代後半で就いた新聞記者も、組織に居ながら自営業のような職業で好きにやっていた。でもサラリーマン時代は多少はストレスがありました。飲むと皆『ジャーナリズム論』とか語りたがるんです。でも立派な持論は上司とぶつかると、すぐ下がる。そんなジャーナリズムなんてくそ食らえですよ。まぁそういうしがらみからも抜けた今はもう、ストレスって何?という状態です。

 

──なるほど(笑)。お話を伺って思ったこととしては、もちろん情報収集のアンテナや仮説を立てる力はすごく長けてらっしゃるのでしょうが、それよりも『好き』のエネルギーの大きさが湯川さんの『未来を読む力』の根源なのではないかと。やりたいこと・興味のあるテーマを、肩肘張らず素直に楽しんで追求した結果、未来を読めてしまった。そんな風に感じるのですが。

ああ、本当そうだと思います。自分の嗅覚が一番大事ですね。今はやりたいことが見つからないなんて若者も多いと聞きますが、その感覚が全然分からないです(笑)。いい学校に入れ、いい会社に入れと言われて『好き』を何十年も押し殺すとそうなってしまうんでしょうかね。

『好き』が低い人はどうすればいいんですかねぇ。『好き』のエネルギーが比較的高いタイミングをうまく使うとかでしょうか。簡単に言うと『一気にやる』。書きたいと思った時に、集中して原稿を全部書く、とかですね。熱意が一番高まっている時、気持ちの降下が起こる前に全部終わらせてしまう。後に回すと、思いだすのにも時間がかかりますしね。

ちなみに今の究極の方法は、取材中に原稿を執筆しきってしまうこと。これ、一昨日から始めたんですが、1時間取材の時間をもらったらまず30分雑談する。そうしたらgoogle docsを立ちあげ、ざっと質問リストを書いていく。それを相手に共有して、質問の回答を入力してもらう。ものすごく合理的じゃないですか。親しい人にしかできないけど(笑)

湯川鶴章オンラインサロン

──『好き』自体を磨くには、どうすればよいのでしょうか?

うーん。自然にやれちゃうので分からないけど、自分の中のネガティブな部分も見つめることでしょうか。なぜそう思ったんだろう?と自分の感覚を掘り下げる。例えば『今度お話できませんか?』と言われたとして、男だったらめんどくさいと断るのに、女の子だとちょっと躊躇する(笑)。そんな時、やましい気持ちあるなぁ、カッコいいと思われたいんだな、とか自分の心を見つめて、ネガティブな思いも肯定します。

あとは『冴える』タイミングを最大活用することです。僕は頭と心が冴えるのが朝なんですね。だから午前中はアポを入れない。ヨガ、瞑想、ストレッチなんかを2時間くらいしながら、考えごとをしたり、感情に向き合います。そうすると色んなアイデアが浮かんでくる。傍らにパソコンを置いて、浮かんだことをメモしたり、執筆したり、人にメールを送ったりします。この時間は一番大事にしていますね。

 

──センサーを研ぎ澄ませて、見えてきたこと、どう在りたいかなどはありますか?

本当にしたいことは何か、本当にすべきことは何か、日々自分のセンサーと向き合って5年くらい経ちました。そうしたら、興味関心が少しずつ移ってきましたね。昔は、自分がすべきことは『テクノロジーの真ん中で未来を見定める』ことだと思っていた。でも最近はあんまりそういうの興味ないんです(笑)

昔はITと言えばインターネットだった。でも今はメーカー、金融、物流、福祉とか何にでもテクノロジーが入っていく。そうするとあまりにも枝葉になるので追えないですし、AI以外あんまり興味もないです。どちらかと言えばテクノロジー云々よりは『そこでその時、自分が何をやりたいか』の方が大事ですね。

そういう意味ではもう『肩書き』とかつけたくないですね。とか言うと講演の時に『何かつけて下さい』って言われて面倒なんですけど(笑)。都度やりたいことをやるって、僕にとってはすごくシンプルですけど、世間は難しいですねぇ。

ただ、そういう僕を重宝してくださる人も増えてきました。最近6社くらいの顧問というかアドバイザーをしています。僕『諦めない』とか『目標に向かって着実に』とか、いわゆるビジネス実務と真逆の存在なので、経営のアドバイスとかではなくただ雑談をするだけなんですが『湯川さんは存在自体が希望でエネルギーだ』と言われたりします。自分が面白いと思うことに真っ直ぐ向き合う時のエネルギーってやっぱり爆発的なものがあって、それを求めて頂いているのかなと思います。

AIの時代、『好き』はどんどん重要になっていきますよ。思考はもうAIに勝てない。人間に残された最後の、そして最大の価値は、直感やこだわり、好きという感覚になると僕は思っています。

 

編集後記

「何も頑張っていない」とお話しされつつ、自分のセンサーにはどこまでもストイックな湯川氏。それを磨く重要な『道具』を1つ挙げるなら、朝ヨガを行う空間だろうか。

『ただのウォークインクローゼットです。奥さんにそこが書斎ねと追いやられた、狭い空間です(笑)。だけど、余計な情報がないので自分の感覚に集中できますよ』と湯川氏は語る。

湯川鶴章オンラインサロンでは、湯川氏のアンテナを通過した最先端かつ精度の高い情報が随時更新されている。二歩先の未来を読みたい方は、ぜひ参加してはいかがだろう。

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