長沼博之氏からヒントを得る「人生100年時代のキャリアデザイン」

著者名笹沼 杏佳
長沼博之氏からヒントを得る「人生100年時代のキャリアデザイン」

長生きすることが当たり前になり、定年退職という概念がなくなりつつある今。これからの生き方をより有意義なものにするために、20代、30代の私たちは何を考えればいいのでしょうか。

近未来の社会や次世代ビジネス、そして人生100年時代のキャリアや事業についての情報発信をされている長沼博之さんにお話を聞き、ヒントをもらってきました。


長沼博之

一般社団法人ソーシャル・デザイン代表理事。イノベーションリサーチャー・事業開発コンサルタント・作家。近未来の社会や次世代ビジネスのトレンドを紹介するメディア「SocialDesignNews」やインキュベーションコミュニティ「SocialDesignSalon」を運営し、事業開発コンサルティング、講演、執筆活動を行う。テクノロジー社会や最新のビジネスモデル、働き方等のテーマでテレビや雑誌から取材多数。NHKクローズアップ現代「”仕事がない世界”がやってくる!?」等の番組もプロデュース。著書に「100年働く仕事の哲学」「ビジネスモデル2025」「ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉」がある。


20代から意識したい、60代以降のキャリア

─長沼さんは、著書『100年働く仕事の哲学』を出されるなど人生100年時代のキャリアデザインについて発信されていますが、”100年働く”とはどういうことなのでしょうか?

近年、日本人の健康寿命はかなり長くなってきており、定年退職という概念や年金支給の時期が不確定なものになっています。以前は、30〜50代の”働き盛り”と呼ばれた年代に輝いていれば”人生成功”とみなされてきました。

しかし、これからの時代は人生の終盤戦が勝負。退職なき時代だからこそ、60代以降の生き方をいかにクリエイティブなものにして有意義に過ごせるかということに価値があると私は考えています。

─60代以降のキャリアを充実したものにするために、20代や30代のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?

働き方や考え方は人それぞれなので、一概に言うことはとても難しいのですが……早いうちに60代以降のビジョンを持っておけるといいのではないでしょうか。具体的に「何をやりたいか」までは及ばずとも、自分が「どう生きたいのか」「どんなことができそうか」といった大きなビジョンでも構いません。

たとえば、60代以降に社会に貢献するとしたら、どんなふうに自分の力を活かせるかイメージしてみるのもいいかもしれませんね。Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグは、「僕らの世代にとっての課題は、誰もが目的感を持って人生を歩む世界を創り出すことなのです」と言いました。私もそれに賛同します。

一人ひとりが自分自身のミッションを見つけて、そこに向かってキャリアを築けたら、それは理想的なことではないでしょうか。

言葉の重さは経験に比例する

─長沼さんの場合は、ご自身の60代以降のキャリアをどんなものにしたいと考えていらっしゃるのですか?

私の場合は、”書く”ことが60歳からの大きな仕事のひとつだと思っています。今も、自身が運営しているWebメディアの『Social Design News』をはじめ、メディアや書籍で執筆をしていますが、60代以降は書くことをさらに軸にしたいですね。

─書く仕事を軸にしていこうと決めたのはいつごろでしたか?

1冊目の著書『ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉』を執筆したときなので、31歳のころでしょうか。私は20代のころから、次の時代のパラダイムを発信する活動に力を入れてきました。そのなかで、いちばん自分に適しているのは言葉を使って伝えていくことだと気がついたのです。

何かを伝えるためには、自分の言葉で発信をしていかなければと。言葉の重さは、経験に比例します。いろいろな経験をして、ときには大きく苦労もし……それが言葉に乗ったときに、風雪に耐えた石のような重みのある言葉を発信できる。

そのため現在も、関わっているあらゆるものごとが、私の60歳以降の仕事につながっていると考えて活動しています。

大切なのは、「誰もがクリエイター的な意識を持つこと」

─そもそも、長沼さんがビジネスに興味を持つようになったきっかけはどんなことだったのですか?

小学生時代に父の事業がうまくいかなくなり、母の実家がある福島に引っ越した経験がきっかけです。今となっては良い経験と言えますが、当時は小学生なりに悲しい体験でもあったので。

それから「どうして事業には成功と失敗があるのか」「経済活動っていったいなんなのか」とうようなことを考えるようになりました。

─子どものころから今の活動につながるような考えを持っていたということは、ある意味自然な流れで人生のミッションを見つけたということになるのでしょうか?

いや、どちらかというと「のたうちまわっているなかで掴んだ」という感覚ですかね。どうやるべきか、何をするべきか、なぜやるのか、といった考えを繰り返すことで深まってきたというイメージです。

若い人たちに話をするときにもよく言うのですが、自分の価値観を”しぼる”のはとても難しいこと。むしろ、”しぼられてくる”というのが正しい感覚も大切にして欲しいです。

みなさんが60代以降のキャリアについて考えるときも無理やり見つける必要はなく、いろいろな経験のなかで、こっちのほうがよさそう、ミッションはここにあるのかも、など気づきを繰り返していくことが大切だと思います。予想しなかった出会いが人生を変えることも多くありますし、無理やり分析してしぼろうとすると、可能性を排除してしまうことにもつながりかねませんからね。

─では最後に、長沼さんご自身が”書くこと”において大切にされていることがあれば教えてください。

常に意識しているのは、センスメイキング──つまり”意味の創造”です。読んだ人が何か深いインスピレーションを得られるような文章になればと思索しながら書いています。

意味の創造は、新たな”発明”とも呼べるような何かにつながっていきます。また私が文章を書く際には、まずビジョンがあって、それを実現する部品として、様々な文章、事例を積み上げていくということが多いです。

 

─60代以降のキャリアを考え、目指すことも、仮説を立てて意味づけしていくのと似ていますね。

そうですね。思い描くビジョンに向かっていろいろな経験をつなぎ合わせることで、それぞれのキャリア、つまりその人の物語が形づくられていきますから。

人生100年時代の現代において60代以降のキャリアを充実させるためには、今や情報を一方的に受け取るだけでなく、自らの内面から湧き上がってくるイメージや言葉をいかに紡いで、個々の力を発揮していけるかが重要になっていくはずです。

誰もがセンスメイカー、クリエイターとしての意識を持つことも大切ではないでしょうか。


長沼さん主宰のオンラインサロン『Social Design Salon』は、近未来の社会や次世代ビジネス、人生100年時代のキャリアと事業に関して、メンバー同士がつながり、語り合い、実践をする場所です。”イノベーションリサーチャー”として長沼さんが集める情報や密度の高い考察が共有されています。自身のキャリアを考えたい人から、起業家として事業を始めたい人など、さまざまなメンバーが参加中です。これからのキャリアやビジネスについて精度の高い情報をキャッチしたい人や、あらゆるバックグラウンドをもつメンバーとつながりインスピレーションを得たい人は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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長沼博之 - Social Design Salon - DMM オンラインサロン近未来のより良い社会や次世代ビジネスモデル、人生100年時代のキャリアに関してメンバー同士がつながり、語り合い、仲間と実践を通じ学んでいくサロンです。DMMオンラインサロンアワード『コミュニケーション賞』にノミネート
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