周りとどこで差をつけるか。これからの美容師・サロンのあり方を考える

著者名稲垣 佳乃子

今回お話を伺ったのは、アツトシさんと宮永えいとさん。お二人はそれぞれ、表参道にお店を構える大人気美容室「GRADUATE」と「TORA」の代表・店長を務めるカリスマ美容師です。男女2名のモデルにサロンワークをしてもらいながら、その人気を支える「企画力」「発信力」「インプット力」について探りました。

男女同時ビフォーアフター企画始動。

女性モデルを担当していただいたのはGRADUATEのアツトシさん、男性モデルを担当していただいたのはTORAの宮永えいとさんです。お二人は共同でオンラインサロンを運営しているものの、同じ美容室で同時にサロンワークをするのは今回が初めての経験だそう。 施術中は互いに他方のサロンワークを食い入るように見る場面も多々ありました。

 

【女性モデルプロフィール】

常見さん

サロンへは1ヶ月~2ヶ月に1回通っている。赤オレンジ系の色で髪を染めることが多い。夏から伸ばし始めたものの、過去一番多かった髪型はショートボブ。

 

【男性モデルプロフィール】

松本さん

サロンではお任せが多いそうだが、いつもだいたい同じ髪型に。服装は白と黒が多く、地味な印象になりやすいのが悩み。

【ビフォーアフター女性編】希望を叶えるだけが全てじゃない

アツトシさん

では、はじめますね。

常見さん

お願いします。

アツトシさん

今回は、見た目の印象は変えないで、全体に軽さを出していきましょう。カラーの色味は赤みを抑えたグレーベースのアッシュをいれます。アクセントにブルーとグリーンの単色を多めに入れていきますね。

常見さん

アッシュは初めてです。

カナリー編集部

あ、アツトシさん。せっかくのビフォーアフター企画なんで髪型もガラッと変えちゃってください……(小声)

アツトシさん

今回僕は、彼女に髪を短くしないという提案をしたいです。彼女、今の長さが一番似合うと思うんです。

常見さん

実は夏まではボブで、最近伸ばしはじめました!

アツトシさん

そうだったんですね。そのため、今回はカラーをメインに仕上げていきますが、正直、カラーというものは色の調合ですから、将来はAIに色の情報を読み込ませて、データ上から、お客様の髪の毛に合う色なんかを選ぶ時代がくると思っています

僕はAIにすごく興味があって。AIが美容師に代わって仕事をする時がくるんじゃないか、なんて思うこともあるんです。

 

アツトシさん

そうすると、人間の美容師にやってもらうか、AIの美容師にやってもらうかはお客様によって使い分けられることになります。

自分がこれからも美容師をやっていく上で、AIに負けないと自信を持って言えることは提案力です。

よりお客様に満足していただくために、時にはお客様の希望と違うスタイルを提案することもあるんです。

カナリー編集部

だからさっき、彼女に”髪を短くしない”という提案をしたんですね!

アツトシさん

そうです。オリジナリティがある提案力の裏には、『インプット』が必要だと思っています。何事に対しても『なんで?』と疑問を持ち続ける。そして自分自身の答えを見つけ、更にはそれを説明できるようにする。

インプットを増やすためにも、とにかくいろいろなモノを観察することが大事ですね。

アツトシさんの「インプット」はどこから?

カナリー編集部

アツトシさんは、普段どこからインプットしてるんですか?

アツトシさん

常にです。

サロンワークの技術的なインプットは、毎年イギリスのヴィダルサスーンの学校に行っています。技術やコミュニケーションスキルをみっちり学ぶために、3週間、週5回で毎日9時から18時まで通うんです。

カナリー編集部

アツトシさんは、サロンの運営者なのに、まだ学校に通ってるんですか!?

アツトシさん

通ってます。僕は本当に勉強が一番大事だと考えていて、運営者のスキルとして、ティチャーズトレーニングを受講したり、コミュニュケーション能力から、カットの実技、実技テストまで幅広く勉強していますね。

アツトシさん

僕は全てを説明できなくちゃいけないと思っていて、『こんな感じに切ったから、なんとなくかわいくなった』ではダメなんです。例えば、髪が流れる向きには、ハサミを入れた角度が関係しています。

自分が理屈を理解できていないと、お客様に提案できません。

カナリー編集部

SNSでの情報発信も毎日されていますが、SNSを活用する上で何か心がけていることはありますか?

アツトシさん

SNSは毎日チェックし、インプットとアウトプットの両面で使い分けてますね。

カナリー編集部

両面とは?

アツトシさん

インプットは、他の人がどのように情報を発信しているかに注目しています。例えば、落合陽一さんのツイートを見て、どんな情報を、どんな言葉選びで発信しているか、などはよく見ていますね。

SNSは足を運ばなくても毎日専門的な知識を得られるのでとても便利です。

カナリー編集部

アウトプットでは?

アツトシさん

美容師向けとお客様向けのツイートを完全に分けて投稿するように心がけてます。

専門性が高い投稿って美容師にとっては役に立ちますが、お客様からするとわりとどうでもいいことだと思うんです。でも、ツイートの内容を分ければ、それぞれが興味を持っている情報だけを手に入れることができますよね。

どうしたら、自分の発信する情報を飽きずに、興味をもって見てもらえるか。これはSNSに限らず、いつも考えていることです。

【ビフォーアフター女性編】アフター

アツトシさん

はい、完成です。

カナリー編集部

どうですか、常見さん。すごく似合ってますね!!

常見さん

自分でもびっくりしています。今から会社へ出社するんですが、ちょっとドキドキします。

カナリー編集部

パーマをあててないのに、髪の毛がふわふわなのはどうして!?

アツトシさん

実はこれ、すきバサミを使わずに全体を軽くしているんです。癖毛の人って縮毛矯正とかパーマをあてて無理やり個性を殺してしまうことが多いんですが、本当はカット次第で癖を生かせるんです。

毎日綺麗な髪型になるように保つためには、セットじゃなくてカットが大事。美容院帰りが一番かわいいという状態ではなく、毎日かわいい状態を作りたいですね。

【ビフォーアフター男性編】観察することで見えてくるもの

カナリー編集部

では、えいとさんお願いします。

えいとさん

よし、始めましょう。

カナリー編集部

どんな感じにされるんですか?

えいとさん

癖毛と、硬めの髪を生かします。で、今日はカラーで赤を入れたいと思います。

松本さん

僕、今までの人生で一度も髪を染めたことがありません…。

えいとさん

絶対似合うと思います。あと、今大学生だということで、単純に今までしたことがなかった色に挑戦してもらおうと思います。

カナリー編集部

イメージが決まるのがとても早いですね!

えいとさん

声のトーンや喋り方、雰囲気から、松本さんがどういう人なのか、どういう生活を送っているのか、いつもどういう服装を着ているのかを全部イメージできているからです。

カナリー編集部

どうしてモデルさんの普段の姿をイメージすると、髪のイメージが出てくるのですか?

えいとさん

カットやカラーをするときは、その人のイメージをガラッと変え過ぎない、『馴染む』髪型やカラーを提案することが大切です。そのためには、お客様の雰囲気やイメージを捕らえなくてはいけません。なので、施術する前からお客様の事はかなり見ているんですよ。

『ながら』作業で3つ以上のことを同時に。

カナリー編集部

ZINE の取り扱いをしたりと、美容院ではあまり馴染みのない企画をたくさんしていらっしゃいますが、企画の元となるインプットのコツはあるのでしょうか?

えいとさん

そうですね、常に3つ以上の『ながら』で何かをするように意識しています。

カナリー編集部

ながらとは?

えいとさん

例えば、SNSで情報を発信しながら、テレビで映画を流して、サロンの企画を考えている、みたいな。いつも3つぐらいのワークを同時に流すイメージですね。

美容師って正直めちゃくちゃ忙しいんですよ。サロンワークを始め、SNSの発信、レッスン片付け、と日々タスクに追われています。あと営業記録やオンラインサロンの運営、撮影のレタッチなんかもします。とにかくやることがいっぱいあるんです。

カナリー編集部

なるほど、本当にやることが多岐にわたっていますね。

えいとさん

なので、いかに複数の物事を同時にできるかが重要なんですよ。生きている間、ずっと時間は流れているんで、その時間でどれだけのことができるか、です。僕は、とにかくみんなが寝ている間がチャンスだとずっと思っていましたね。

だからアシスタント時代は、定休日の火曜日にモデルのハントをめちゃくちゃやったりしていました。

カナリー編集部

常に考えている状態って疲れないですか?

えいとさん

もう習慣になってますね。『即レスゲーム』みたいに、返事を返すのもひとつのルーティンワークになっています。

サロンワークは計画性の塊で、何をやったあとに何をするか、みたいなことは常に考えなければいけません。切っている間以外も動き続けないといけないんです。なので、もう自然にできますね。

えいとさんのインプットはどこから?

カナリー編集部

具体的にインプットはどのように行なっているのでしょうか?

えいとさん

色々なことがインプットになってると思います。なので、特別何が、とは言いにくいですね。例えば、某番組の恋愛人間模様に対する芸人さんの話し方はとても勉強になりますね。

他者の発言に対してどのようなコメントを残しているかを副音声で聞いてるんです。同意するときの声のトーンや笑い方、うなずき方で、人の印象やイメージができあがっていて、すごく面白いです。

カナリー編集部

あの番組をそんな視点で見てるんですか!人そのものを観察をしているんですね。

えいとさん

そうです、そうです。会話中の同調の仕方なんかも、美容師にはすごく参考になると思います。特に誰も傷つけない会話の仕方とか、使えるなぁって思います。

【ビフォーアフター男性編】アフター

えいとさん

完成です!

カナリー編集部

どうですか、松本さん。めちゃくちゃかっこいいですよ。

松本さん

今風だ……。

えいとさん

今回は服のスタイリングも行いましたが、イメージはやんちゃロンドンボーイです。赤の髪色も馴染んでいい感じです。松本くんは痩せ型で身長も185センチと高身長なので絶対似合うと思いました。

【ビフォーアフタ女性男性編】まとめ

アツトシさん

僕、かなりの飽き性なんです。サッカーと美容師にしか興味がなくて。他はいろんなことをやってもすぐに飽きちゃうんです。自分が飽き性だからか、お客様を含めて、周りにいる人をいかに飽きさせないか、が重要だと思っています。

なので、美容師の知識だけではなく、色々な分野の知識を身につけて、自分が発信する情報をいかに面白がってもらえるかを常に考えていています。あと、話す時の目線なんかにも気を配っています。

カナリー編集部

確かに!今日ずっと取材クルー全員(3名)と目が合っていて、すごいなと思っていたんです。

アツトシさん

それも考えてやっています。僕は美容師の価値を上げたいんです。そのためには、テキトーに話をして、髪を切って終わり、ではダメだと思っています。

でもすぐにできることではないですから、まずは自分のサロンから変えていきたいですね。

えいとさん

日常にもたくさん企画のタネがあると思います。それをどう組み合わせて、何を企画していくかを考えることが大切です。

以前、現役大学生のイラストレーターがデザインしたカップで、スタバで働くバリスタの淹れたコーヒーを提供する『トラズコーヒースタンド』というイベントを開催したことがあります。

カナリー編集部

それは素敵なアイディアですね!

えいとさん

店内の片方ではカット、もう片方ではコーヒーを淹れている、というなんとも不思議な空間でした。

70名の方にお越しいただいたのですが、30名はTORAのもともとのお客様で、40名は新しいお客様でしたね。

カナリー編集部

すごい!

えいとさん

こういうイベントは、参加者も主催者もみんな楽しいし、さらには集客にもつなげることができるんです。余談ですが、このイベントの後、現役大学生のイラストレーターには3件新しい依頼が入ったそうです。

僕のお店はホットペッパーなどを利用していないので、自分なりの集客方法を探していかないといけません。そこで、企画力やブランディングが必要になってくるんです。これは、これからの時代、美容師以外にも求められるスキルかもしれませんね。

カナリー編集部

お二人とも、貴重なお話をありがとうございました!

 


『TORA宮永えいと・GRADUATEアツトシのマルチバーススクール』では、お二人を中心に、様々な業種の「プロ」を招き、日々ブランディングや一流の考え方を発信。24時間365日、講師から発信された最新のトピックを受け取る事ができます。更にはオフラインでの交流会も。

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