3つの視点でわかりやすく学ぶ!日本のスポーツビジネスが成長する鍵

著者名サトートモロー
3つの視点でわかりやすく学ぶ!日本のスポーツビジネスが成長する鍵

日本のスポーツ産業が抱える課題とその解決策を共有し、様々なアイディアと具体的なアクションを起こそうと立ち上がったオンラインサロン、『日本一やさしいスポーツビジネス』。

サロンオーナーである河島徳基さんに、「国際スポーツイベントと協会団体」「国内リーグと企業」「子供のスポーツ体験」という3つの視点で、日本のスポーツビジネスが抱える課題と解決に向けたアイディアを伺いました。

協会団体が、国際大会で生まれる「お金と関心」の手綱を握れるか

―2018年6月14日にはFIFAワールドカップロシアが、そして2年後には、オリンピックの開催が控えています。国際的なスポーツの祭典が続く中、日本にはどんな課題があるでしょうか?

日本は海外と比べて、スポーツを観る文化があまり発達していませんが、一方で日本人は「日本代表」という存在が大好きなんですよ。ワールドカップの盛り上がりを見るとよくわかります。そこにビジネスチャンスを見出した大手広告代理店は、番組制作やスポンサーの獲得を通じて巧みに大会をコンテンツ化しました。その結果、1つの大会で多額のお金が動き、多くの人々を巻き込みながら熱狂を作り出したわけです。

この活動自体はとても素晴らしいものです。ただ問題となるのが、そうやって集まった利益や関心が、スポーツ協会や国内リーグなどにあまり還元されないということです。せっかく高まった資産が、そのスポーツの発展に直結しにくいんです。

もしもスポーツ協会が、国際大会で独自にビジネスを展開し、その権利を有することで直にお金が入る仕組みを作ることができれば、若手の育成、スポーツ普及、国内リーグ発展に寄与することができます。本来広告代理店と手を組む、あこぎに言えば彼らを利用してビジネスをしないといけないのに、今では逆の図式になっています。

企業主導の大会運営はコンテンツとして見るとクオリティが非常に高く素晴らしいのですが、協会にはそのノウハウがないんですよ。

 

―協会が大会において手綱を握るような力や、ある種の国際競争力を持っていないんですね。なぜ、そういった力が培われなかったんでしょうか?

スポーツ協会というのは、一種の「会員ビジネス」です。これまで人口の自然増加に併せて競技人口も増えていたので、協会の予算は何もしなくても増えていました。それが災いして、急激に進む少子高齢化=会員減少に、どう対応するべきかわからないんです。

しかも、現在は多種多様なスポーツの選択肢もある上、スポーツ以外の娯楽も多いのですが、協会はこの様な競争相手と戦う術を知りません。

 

―スポーツ協会・団体の影響力が深刻な状態に陥っているんですね。今後協会がさらなる発展を迎えるのに、何か解決策があるのでしょうか?

まず必要なのが「協会員の職業化」です。最近話題になった日大アメフトで言えば、関東学連というのはほとんどが会社員、つまりボランティアが運営を担っているんです。やはり、協会運営に専念できる職業人が必要です。

他に挙げるとすれば、「ビジネスに長けた若手を大胆に起用すること」でしょうか。基本的に、スポーツ協会の中核を担うのは、そのスポーツをプロや職業としてやってきた人々です。彼らは育成・指導面で活躍できても、ビジネスには詳しくありません。

少し突飛ですが、堀江貴文さんのようなビジネスの天才に、有償で会長職に就いてもらうくらい大胆な起用が必要です。

さらに、ここでポイントとなるのが若手の参入です。スポーツ協会には、日本の「年功序列」という悪しき文化が残っています。これは知人の話ですが、オリンピックに出場したキャリアを持つ65歳の方が、「若造」扱いされてしまうような世界なんですよ。だからこそ、思い切って若手を会長にしよう!くらいの決断が求められていると言えるでしょう。

Jリーグの創設者である川淵三郎さんは、創設時にはまだ50代。当時のベテラン達にガンガン叩かれていたと聞きます。その時、彼らよりも少し若い世代の方々が、川淵氏を擁護してクッション材になっていたというエピソードがあるんです

現在、フェンシング協会の会長にはまだ30代の太田雄貴さんが就任し、アルペンスキーで知られる皆川賢太郎さんは、40代の若さでスキー連盟の競技本部長を務めるなど、確実に若手の参入の流れは来ています。

海外に目を向ければ、2012年のロンドンオリンピックで組織委員会会長を務めたセバスチャン・コーは、当時50代でした。日本で同じポジションを務める森喜朗さんは80代なので、大きな違いですよね!

伝統・格式に固執しすぎないためにも、若い世代の台頭・活躍は必須条件でしょう。

日本リーグはもっと「グローバル」な戦略を攻めるべき

―国際的なイベントを通じて見る日本の課題の次に、日本国内のスポーツ産業に目を向けたいと思います。サッカーや野球を筆頭に、日本には多くのスポーツリーグが存在しますが、それらが抱える課題はなんでしょうか?

市場規模という点で見ると、日本は海外と比べて低いという評価になるでしょう。例えば、MLBの年商は約1兆円なのに対して、NPBの年商は約1,500億円です。また、サッカーで世界的な人気を誇るクラブ、マンチェスターユナイテッドとレアル・マドリードの年収は約700億円にもなるのに、日本屈指のクラブである浦和レッズでも約80億円にとどまります。

しかし、競技人口やリーグあたりのチーム数を考えると、実はそこまで差はないんですよ。実際、NPBやJリーグは海外にない独自のコンテンツもあり、十分な頑張りを見せています。

では、一体なにが問題なのかというと、「グローバル・ナショナル・ローカル」という3つの市場に対する、日本リーグの働きかけという点にあるんです。

グローバルというのは、先ほどのワールドカップやチャンピオンズリーグ、WBCです。多額のお金が動き、スポンサー企業も付きます。

ナショナルというのは、まさに国内リーグのことです。そしてローカルはJ3など、地域に根ざした下部リーグのことを意味すると考えてください。

日本国内では、しばらく地域密着という言葉が信奉されました。プロ野球もそれを標榜し、本来ナショナルな市場からあえて市場規模の小さなローカル分野へ下りてきてしまったんです。

その結果、チームが地域に愛されるようになったというメリットはありました。実際、プロ野球は人気低迷と言われることが多いものの、球場の満員率は意外に高く、DeNAではチケットの完売率が96%にも達しています。

しかし、球場が全席満員になったら、それ以上に収益を得るチャンスはほとんどありません。それが、ナショナル、ローカルな市場規模の限界です。一方、MLBはナショナルだけでなく、グローバルな展開も続けてきました。NPBには、これまでグローバルな活動がほとんどないんです。

―より大きな市場に行けば、さらに収益を得るチャンスがあるんですね。NPBがグローバルに参入するには、どんな方法があるんでしょうか?

実現可能性は置いておいて、例えばNPB内に台湾・韓国のチームを引き入れ、国の枠を超えたリーグ運営をするなどの大胆な改革が考えられるでしょう。ただ、こうした戦略はチーム単体でできる範囲を超えています。やはり、そのスポーツの統括団体がビジネスを展開しなくてはいけません。その時必要になるのが、プロ経営者や先ほど話したような若い血ですね。

子供に必要なのは、することと観ることの楽しみを伝えること

―河島さんは、企業や団体のスポーツ産業についてだけでなく、スポーツ体験の入り口である子供時代も注目していますよね。子供達の視点で考えると、スポーツ活動はどう改善すべきなんでしょうか?

この問題を話す上で大前提となるのは、「99.9%の子はプロにはなれない」という事実です。だからこそ大人は、「プロに行けない子のためのプログラム」を提供しないといけません。

それなのに、既存のシステムはプロになれる0.1%の子供を探すような仕組みになっています。プロになれない子供のケアを放棄しているんです。そうしてスポーツから離れた子が、運動そのものを嫌いになってしまうのが一番の悲劇ですよね。

そこで提案したいのが、プロに行きたい子たちのための「強化」をする仕組みも用意しつつ、スポーツの「普及」を目的としたプログラムの作成です。例えば、1人の子が2つ以上のスポーツを楽しんでもいいじゃないですか。本来、スポーツをプレーするというのは、遊ぶという要素もあるはずです。日本では1つのことを極めることが美徳と考えがちです。しかし1年365日、同じスポーツをやる必要はないわけです。シーズン制にして、オフの時は違う分野に取り組んでもいいでしょう。

それと、日本のスポーツでは「する人と見る人の分断」という問題も重大です。練習に励む子供達は、実はプロの試合を観る機会がほとんどありません。彼らはその時間練習に必死で、試合を観る時間なんてないからです。

これは野球界のちょっとした笑い話なんですが、ある大学生2人が、それぞれドラフトを通じて別のチームに入団したんです。そして彼らがとある企画で対談した時、こんなセリフが飛び出ました。

「俺とお前って、対戦するんだっけ?」

そう、彼らはこれからプロになるのに、セ・リーグ、パ・リーグの2リーグ制を理解していなかったんです(笑)。

―え、そんなことがあったんですか!?

はい。その他にもサッカー界ではこんなエピソードがあります。

ワールドカップブラジル大会の日本VSコートジボワール戦の話なんですが、この試合が始まるのが日曜日の朝10時で、子供たちが皆観ることのできる時間帯でした。しかし、サッカー少年にはその日も練習があります。そこでJFAは、各クラブにこの日は練習を休むよう通達を出したんです。

子供達にとってもコーチにとっても、練習より試合を観る方がプラスになるじゃないですか。試合結果を生で知ることができるし、何よりトッププロのプレーを見て学ぶことができます。FCバルセロナのユースは、試合翌日の練習では、必ず前日のトップチームのゲーム内容について話す時間が設けられているといいます。

ユースのようなトップクラスじゃなくても、「この日は練習を休んで地元チームの試合を見に行こう」という活動があっていいはずなんですよ。プロになれない子供達が、そのまま地元チームやユースで所属したチームのファンになってくれることは、スポーツの発展という意味でも素晴らしいことでしょう。

欧州のスタジアムでは、サッカーの試合中、熟練の渋いプレーに対しても「おー」という歓声が湧きます。それを見て、他の人は「なるほどあれはすごいプレーなのか」と学ぶことができる。

スポーツの本質を知っている人が観戦する土壌が、日本ではまだ十分に育っていません。少年時代から、その感覚を養うことが重要です。

 

―子供が様々な形でスポーツに接することができるのが重要なんですね。それでは、子供達を教える立場である大人には、どんな変化が必要でしょうか?

理想を言えば、職業コーチ=プロコーチとして生計を立てられる人材を輩出する環境が必要です。先ほどの協会員のケースと似ていて、日本の教育現場では、子供にスポーツを教える大人はほぼ全員ボランティアです。

子供のスポーツ現場において最優先なのは、勝つことよりも安心・安全の確保です。練習中、熱中症などで子供が倒れるような事態が起これば、真っ先に非難されるのはコーチですよね。

当然、彼らの責任問題にもつながるわけですが、とはいえボランティアコーチが一方的に責められるという状況が続けば、誰もやりたがらないでしょう。これでは、担い手がいなくなってしまいます。

現在、高い資質を備えたコーチの育成ニーズは高まっています。そこで必須なのがプロコーチなわけですが、今度は「彼らの給料を誰が払うのか」という問題にぶつかります。

受益者負担の原則という観点で言えば、保護者がお金を払うのが妥当です。しかし、部活動やクラブのいいところは、非常に安価(場合によっては無料)でスポーツをすることができることにあります。

親ではなく行政が支援するのか。それともスポンサーを募るのか…。いずれにせよ、プロコーチという職業を維持するための仕組み作りが不可欠です。

サロン会員とは、スポーツ発展に何が必要かを一緒に考えていきたい

―河島さんのオンラインサロンは、10代〜50代の非常に幅広い方々が参加しています。サロン内ではスポーツビジネスについて非常に幅広い情報発信をしたり、サロン内で交流会を開いたりしていますよね。今後、どんな人と一緒にサロンを盛り上げていきたいですか?

「スポーツが好き」だからという出発点が、大きな前提にあるとは思います。そのスポーツの価値を、どう世の中に提供していくのかというのがスポーツビジネスです。スポーツの価値をお金と交換する、というのが本質と言えます。

かつて、この国にはスポーツ好きという思いだけでスポーツを維持・発展できる時代がありました。しかしこれからは、そんな単純な思いだけで事業拡大は望めないでしょう。

だからこそ、単なるスポーツ好きという枠を超えて、ぜひスポーツが持つ価値を、世の中に対してどのように提供していくのかという点に目を向けて欲しいと思います。

そういう広い視点に立つことにワクワクできるような方々と、楽しくサロンを盛り上げていきたいです。

子供から大人まで、本当はスポーツって誰もが楽しめる可能性のあるものだと思います。それが、現状の教育・産業の姿のせいで、ごく一部の人のものになってしまっているのかもしれません。

 

河島さんが運営するオンラインサロンでは、そんな現在の日本のスポーツ産業のあり方を客観的に話し合っています。

その上で、「もっとワクワクするような、みんなが分け隔てなくスポーツを享受できる社会を作るにはどうすればいいか」を、真剣かつ遊び心も満載に模索しているんです。

実はまだまだ可能性がごっそり眠っているこの分野。高い見識を持つ人もそうでない人も、このサロンで持続可能なスポーツ産業の明日を探してみませんか?

河島 徳基 - 日本一やさしいスポーツビジネス - DMM オンラインサロン
河島 徳基 - 日本一やさしいスポーツビジネス - DMM オンラインサロンスポーツビジネス界隈で起こっている話題を取り上げながら、日本のスポーツを盛り上げて行くにはどうしたら良いのかを一緒に考えていくサロンです。
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