クリエイターとして差がつく「編集力」の鍛え方とは?

著者名おくい はつね

出版不況が叫ばれ、はや20年。本が売れない時代に、新人著者から大御所までベストセラーを送りだしている編集者・小寺 裕樹氏は『鍵を握るのは、編集力』と語ります。良いテーマやコンテンツがあっても、どれだけ優れたクリエイティブでも、それを貫く『編集力』がないとモノは売れない。その神髄と、今日から鍛えられる『編集力』のノウハウを小寺氏に伺いました。

編集力を構成する5つの要素

─ひとことで言うと『編集力』とは何でしょう?

届けるべき人に情報を確実に届け、その人を動かす力だと思います。

この数年で、世の中の情報量は圧倒的に増えました。コンテンツを発信するハードルは年々下がり、今ではSNSやYouTube、アプリなどを使って一瞬で情報を公開できる時代です。しかし、多くの人にチャンスが生まれた反面、その圧倒的な情報の海の中から自分のコンテンツを見てもらうことも難しくなりました。

いま求められているのは、この情報時代を勝ち抜く力です。届けたい人に、自分のコンテンツの強みや価値を伝え、手に取ってもらい、買ってもらう力。このスキルなしには、どんなに良いモノを作っても自己満足で終わってしまいます。せっかく力を注いだコンテンツを、日の目を浴びないガラクタにしないために、クリエイターやモノづくりを志す人には今こそ編集力を鍛えてもらいたいと思います。

 

─『編集力』を分解すると、どんな要素があるのですか?

大きく分けると、5つほどの要素があると思います。

【1】コンセプトメイキングのセンス

まず必要なのが、コンテンツの骨子を決める力ですね。

今は多くの場合、情報自体は既にある。例えば本を作りたい人というのは、既にスモールステップとなるブログやメルマガなどに情報を掲載している場合が多いので、それらのコンテンツをベースにすることが多いです。ただしブログやメルマガの特性上、1ページ・1メルマガあたりの情報量は少なく、ぶつ切れとなっていることも多いので、情報が乱立しているケースが殆どでしょう。それらを整理し、何が最も価値のある情報なのか、一番伝えたいことは何なのかを考え、軸を見つける力がコンセプトメイキングです。

 

【2】ストーリーを描くセンス

コンセプトが決まるということは、誰に何を伝えるべきかが確定したということです。その次のタスクとなるのは「どのように伝えるか」ですね。これがストーリーを描くセンスです。もしかしたら、伝えたい人次第では、書籍という手法ではない方が良いのかもしれません。文章だけでは伝わりにくいのであれば、動画配信やイベントといった方法の方がふさわしい場合もあります。

「どのように伝えるか」には、売れるまでの道筋を描くことも含まれます。作って終わりじゃない。例えば僕のオンラインサロンにも参加して頂いている岡崎かつひろさんという方がいますが、彼のビジネス書『自分を安売りするのは〝いますぐ″やめなさい』はデビュー作ながら、シリーズで5万部に迫るヒットとなっています。もともと起業家として多くのファンを持っていた彼ですが、著者としては実績がないので書店の反応も芳しくはない。書店員を味方につけるために、発売1ヶ月前から無料で原稿の一部を先に読めるようにしました。その原稿のサキヨミが大当たりし、発売前に5000件を超える登録がありました。この施策のおかげで、結果的に多くの書店でこの本が棚に並びヒットに結び付いたのですが、コンテンツの強みや著者のバックグラウンド次第で「どう売るか」のストーリーを練ったことが功を奏しましたね。

 

【3】コピーライティングのセンス

コンテンツとストーリーが立ったら、タイトルやキャッチコピー、見出しなどを際立たせる味付けに移ります。いかに書店で目を留めて手に取ってもらうか。書籍においてタイトルという看板は非常に大きいので、いかに世間に響く強い言葉をチョイスするかが大事です。

 

【4】フィルターを持つセンス

1~3はコンテンツの骨子を作る力ですが、これに加えて自分がコンテンツオーナーではない場合はキュレーション力が必要ですね。既に世の中にある情報を見つける嗅覚や、世間のニーズに合致するコンテンツを見つける力というのでしょうか。DJのように、既存のものを自分なりのフィルターでろ過し、再構成して世の中に発信するスキルがあると編集者としては強いでしょう。

 

【5】プロデュース・ディレクションのセンス

ものづくりは自己完結で終わらないことが多いです。例えば書籍の場合、著者・営業・デザイナー・イラストレーター・編集者などが集い、1つの作品を創り上げます。それぞれの特性や強みを把握し、チームをまとめゴールに導く力が問われますね。具体的には、それぞれのメンバーにコンテンツの強みや特徴を正確に共有することも大事ですし、先を読み、段取りする力も必要です。チーム全体の進行管理力が問われます。

─お話を聞くと、編集力とは総合力のように感じますが、クリエイターがまず手をつけるべきスキルはありますか?

順序として手を付けやすいのは、【1】コンセプトメイキングのセンスですかね。何を伝えたいかという思いの部分、エネルギーの根幹部分なので、これが無いと何も始まりません。先ほどは既にブログなどでベースとなるコンテンツがある場合の話をしましたが、人によっては何もネタがないというケースもあるでしょう。その場合は、他人にとって価値のある自分の強みを整理するとコンテンツが見つかることも多いです。

何もネタが無いという人には、過去に一番辛かったことと、それをどう克服したかを聞いていますね。そこで何かを達成する力や手法に納得できるものがあれば、それを多くの人が扱えるように汎用化していくと、コンテンツが出来上がります。

逆にすぐには鍛えにくいのが【3】コピーライティングのセンスでしょうか。言葉の感性は、一朝一夕では研がれません。ただ、字面の「見た目」「温度」にこだわっていれば、この感度は徐々に上がっていきますよ。暇があれば広告や広辞苑を見るのがおすすめです。同じ言葉でも「なぜこの広告は漢字じゃなくひらがななのか?」など疑問を持つのが大事ですね。例えば「可愛い」って、ひらがなの「かわいい」より漢字の方が愛らしさやロマンチックさを感じませんか?カタカナの「カワイイ」だと対象年齢が低い印象もあるでしょう。読者層に合わせて言葉を料理するセンスを育てていけると良いですね。

ただ、正直な話、どこから手をつけてもいいと思います。何からやるかよりも、本気でまず何かに取り組んでみて、それをやりきることの方が大事ですよ。

やりきることで、編集力が身につく

─何かに取り組む、やりきるということも、それなりにハードルが高いように感じますが、ファーストステップとして有効な手法はありますか?

うーん。何でもいいんですけどね。例えば、「好きなブロガーさんの記事を書籍化するなら?」という想定でコンセプトやターゲット読者層を決める、タイトルや目次を立ててみるとか。何か1本イベントを作って人を呼ぶ、商品のプロモーション動画を勝手に作ってみるなど、何から取りかかっても良いと思います。でも、重要なのは「完成品に近い状態までやりきる」こと。

お話した5つの要素は全部繋がっているので、どれが欠けても売れる商品は作れません。いくらコンセプトやタイトルにこだわっても、読者層に響かなければ手に取ってもらえませんし、コンテンツを完成させて初めて「本当にこれは価値があるのか」「この視点が欠けていた」と考え気づけることも多いです。かなり具体的なものを作りこんでほしいですね。

こればかりは実践あるのみなんです。だから僕は″最強のメディア編集集団″と自負する、オンラインサロンを運営しているのですが、ここではとにかく実践の機会を提供するようにしています。メンバーのお三方、何か「こんな実践をしている」という話はありますか?

″最強のメディア編集集団:小寺メディア戦略室″メンバー達

左手前:ビジネス書作家 岡崎かつひろ氏

左奥:リーディングファシリテーター 大岡啓之氏

右奥:SNS・WEB講師 杉川雅彦氏

岡崎氏:私の場合、小寺さんにデビュー書籍の編集を手伝って頂いたので、本当に全てが「実践」ですね(笑)。原稿に赤字が入ってくるのですが、例えば「言う」をひらがなの「いう」に使い分けたり、文字使いの感性を実地で学ばせてもらっていますね。あと、もちろん新人ながらヒット作を飛ばせた、その戦略ひとつひとつに「なるほど」と思うことばかりです。

大岡氏:私は普段はホテルで勤務していて、将来は書籍執筆やファシリテーションなどの分野で独立を希望しているのですが、先日中目黒の蔦谷書店に行った時に、岡崎さんの本が並んでいるのを見ましたよ! 作って終わりではなく流通など全てのプロセスを体感できるので、独立後のイメージが湧きます。

杉川氏:小寺さんは実践的なお題を次々出してくれます。例えば「新聞広告に載せる書評を書いてください。いいコメントは実際に掲載します」とか「この書籍のカバーデザインはABどちらの案がいいですか?」とか。リアルなビジネス上で考える機会があるのは大きいですね。その上で編集講座や合宿を開いてくれているので、理論と実践が紐づくのが有難いです。

小寺氏:皆さん、色々ありがとうございます(笑)。

やっぱり、机上の空論で終わっては力にならないと思うんですよね。他にも素人から音声番組配信を始めたメンバーもいます。全体構成やゲストなど企画を立て、音声を録って編集して配信まで行う。メンバーからフィードバックをもらって改善していくので、編集スキルがどんどん上がっているなと思います。

今後もリアルビジネスで経験値を積んで、編集や著述、動画など各種クリエイティブ分野の第一人者をどんどん輩出していきたいですね。皆で更に大きいことがやれたら素敵だなと思っています。

 


書籍編集をはじめとしたリアルビジネスを題材に、より一流のクリエイターを目指して切磋琢磨するコミュニティ。100万部を売る著者をゲストに招いてのセミナーや、合宿なども行っているそうです。最強のメディア編集集団の一員になって、クリエイターにとって必要不可欠な編集力を培ってみてはいかがでしょうか。

小寺裕樹 - 小寺メディア戦略室 - DMM オンラインサロン
小寺裕樹 - 小寺メディア戦略室 - DMM オンラインサロン「無邪気なアイデアをカタチにする」をテーマに、きずな出版の編集長である小寺裕樹と共に、クリエイティブなコンテンツや作品を量産するアウトプット型コミュニティです
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