従来のやり方は通用しない!成田直人流の事業再生術とは?

著者名大橋博之
従来のやり方は通用しない!成田直人流の事業再生術とは?

店舗経営コンサルタントの成田直人さん。繁盛店を作りあげる独自のノウハウを武器に、誰もが知る大手企業や中小企業に対して、年間200回、10000名以上のコンサルティング・研修業務を提供している、今、もっとも「売れている」人物のひとり。

そんな成田さんに「売上が伸びない」と悩む経営者や店長はどうすべきかを聞いてみました。

人手不足と従来の常識が通用しない時代

─店舗経営コンサルタントである成田直人さんから見て、売り上げが伸びないお店の課題とは、どのようなことだとお考えですか?

一つは、よく言われているように人手不足。もう一つは、従来のやり方が通用しなくなっているということです。この2点が大きな原因で、一気に赤字に転落した店舗が増えたということが体感としてあります。

 

─一つ目の人手不足については、深刻な問題になっているとニュースなどでよく聞きますよね。

外国人就労者を増やして行こう、という動きもありますが、人手不足で閉店したお店も実際にあります。また、私がこれまでに担当したあるクライアントは、200席もあるのにスタッフが10人しかいないと頭を抱えていました。200席であれば、通常、3~40人は必要なところです。僕が半年間トレーニングを担当した結果、なんとか21人体制にすることができました。

 

─二つ目の、従来のやり方では通用しない、というのはどういうことでしょうか?

消費者から店舗が飽きられているんですよ。チェーン店などは金太郎飴のようにどこでも同じサービスが受けられることを強みにして規模を拡大してきましたが、今の消費者は誰もそこに魅力を感じていません。なぜなら、選択肢がすごく増えたからです。

例えば、これまでは「お金がないからとりあえず大手チェーン店の居酒屋に行こう」という人が多かったのに、今は安くて、美味しくてオシャレな居酒屋が増えてきた。同じような価格帯であれば、当然消費者は料理が美味しくて、オシャレな方を選びますよね。今までは選ばれる努力などしなくてもお客様は来てくれていたのですが、これからはお店側が「選ばれる努力」をしなければお客様は来てくれません。

また、これまで大手チェーン店は広告にかなりのお金をかけていました。しかし、今のお客様は、大手グルメサイトのレビューのように、実際にお店に行った人からのリアルな”声”で行きたいお店を判断するようになっています。つまり、これまでは広告で誤魔化せてきた部分が誤魔化しきれなくなった結果、客足が遠のいてしまうんです。

 

─どうしてお店が増えたのでしょう?

それは、正直、僕にもわかりません(笑)。しかし、企業が多角化しだした、ということは感覚としてあります。僕のクライアントにも沖縄で家具屋をやりつつ、飲食店も始めた、という会社があります。

あとは、今はなんでもネットで検索できるので、良いお店がいくらでも見つかるようになったということもあるでしょうね。なので、お店が増えてきたというよりは、これまでもお店自体はたくさんあったけど、それがより表面化してきたという方が正しいと思います。

売上向上に魔法はない

─成田さんにコンサルタントを依頼するのはどのような企業なのでしょう?

僕が呼ばれるのは、すごく業績が伸びているか、上手く行っていないかのどちらかです。

 

─すごく伸びているのに呼ばれるのですか!?

そうです。業績が伸びていることに危機感を感じている経営者からお声をかけていただきますね。利益が出ている間に、次のステージに行くためのコンサルを、という考え方です。

逆に、上手く行っていない場合は、伸びているときには「大丈夫だ」と安心しきっていて、ある日突然売り上げが低下して大変な状況になっても「まだ大丈夫だ」と思っている。そのうちにどうにもならなくなって、お声がけいただくことが多いですね。

 

─なるほど。具体的な事例を教えていただけますか?

あるホームセンターさんはとても大変でした。お声がけいただいた時には、従業員5000人を抱えながら、毎年1億以上の赤字が出ていて、2~3年内にはつぶれるんじゃないかという状況でした。僕への依頼は、まず赤字を止めて、四半期で黒字化して欲しい、というものでした。正直、最初のうちは勝算が見えなかったので、僕は「ムリです」とはっきり答えました。

 

─最初は断ったわけですね。

「どうしても、一度現地を見て欲しい」と言われたのですが「僕にはムリです。行きません」と最初は断っていたんです。でも、日当が出るというので、「じゃ、行きます」と(笑)。そして、現地を見に行ったとき「これは楽勝で黒字にできる」と直感したので依頼を引き受けて、結果的には四半期で黒字化を達成することができました。

 

─一体どんな魔法を使ったんですか?

魔法はまったく使っていません(笑)。実は、そのホームセンターはやるべきことを何もやっていなかったんですよ。例えとして、キャンプ用品で説明します。キャンプ用品は重くて持ち帰るのが大変なので、実店舗で購入するよりも、ネットで買って届けてもらったほうが楽です。価格競争でも、ネットに勝つことは容易ではありません。

では、どうすればホームセンターでキャンプ用品を買ってもらえるようになるのか?それは、キャンプに行く人をターゲットにするのではなく、行く気のない人を行く気にさせることです。

例えば、ホームセンターの真ん中に大きなテントを張って、キャンプを楽しむ家族の写真が飾ってある。それを見た子どもが「キャンプに行きたい」と言えば、ママも「一度は家族でキャンプに行きたいね」と同調します。するとパパも、テントを張って尊敬される姿を思い描き、ふと見るとテントには近くのキャンプ場のリストが貼ってある。そして、家族で「キャンプに行こうか」となって、その場でキャンプ用品をお買い上げです(笑)。

このような販促活動を、そのホームセンターは何もしていなかった。だから、魔法ではなく、どこの店でも普通にやっている販促活動を積極的にやって、お客様がわくわくするような売り場を作れば必ず効果は出るんです。他にも、僕が販促のアイディアを出すのではなく、ホームセンターのスタッフが自らアイディアを出して盛上げてもらうようにしました。

 

─なぜ、最初からやらないんでしょうか。

課題を持っているお店は、僕が提案しても「そんなことやって意味はあるんですか?」と言います。「なんだ、この若造が」みたいな感じで。でも、言われた通りにやって見ると売れるんですよ。そのうち、販促が楽しくなって、自ら色々考えられるようになり、どんどん売り上げが上がっていくんです。

サロンで事業再生ができるトレーナーを育てる

─成田さんはそのようなコンサルティングで売上や客単価をあげているのですね。

企業を利益体質にするということが、僕が今、力を入れていることです。例えば、多くの企業の収益を圧迫している採用コストですが、企業が利益体質になり売上を伸ばす努力をすれば、自然と定着率は上がって行くので、結果として利益が出やすくなるんです。

利益が出ないと悩む、多くの企業を救うことが僕の目標です。

 

─コンサルを行う企業は多くあると思うのですが、株式会社FamilySmile は成田さんおひとりで運営されているんですよね。

マネージャー2人いますが、基本的にはピン芸人です(笑)。だから、僕の「成田直人のセールスイノベーション」を活用して、今後は様々な活動をしていきたいです。僕のサロンは今、60名くらいの方に入会していただいていますが、300名を超えたら、中でトレーナーを育てようと思っています。

今は僕のところにたくさんの相談が来ますが、僕は一人で活動しているので受けられる案件も限られています。そこで、僕の受けきれなかった案件を、育てたトレーナーに振っていくんです。他にも、僕のサロンには大手企業のエリート店長やトップセールスマンがたくさんいるので、そんな方々の正体を隠して悩みを抱えている店舗に派遣するのも面白そうですよね。

 

─それは面白そうですね!他には何かありますか。

会員がもっと増えて、500から700名になったら、後継ぎ不足や、資金難によって事業を廃止せざるを得ない、100年以上の歴史ある和菓子屋や、高い技術力を持つ町工場などを、オンラインサロンの利益で買い取って、そこにトレーナーを派遣して事業再生するような取り組みをしたいと考えています。

最終的には、オンラインサロンをM&Aのプラットフォームにして、案件ごと作られたプロジェクトチームで活動していくようなものを目指しています。オンラインサロンをただのファンクラブにするのではなく、ビジネスの場として活用していきたい、というのが僕の野望です。

顧客感動を高めていくことが大切

─規模を問わず、数多くの企業から依頼がある成田さんですが、依頼を受ける受けないの判断はどのようにしているのでしょうか。

一番大切にしているのは、共に成長できる企業かどうかということです。名誉とか、お金のためではなく、一緒に成長したいと思う人たちと組みます。あとは、「今、ここで僕がやらないとダメだ」と思えるところですね。きっと僕は神様から試されているんだろう思ったときは、たとえ利益が出なくてもお仕事を受けるようにしています。

逆に受けないのは、今の業績不振を人や環境のせいにする会社。先日もある企業の方から相談があり、「お店で商品を見て、ネットで買うような人をどう思いますか?酷いですよね?」と言うので、「多分、僕もそうすると思います」と言ったら、大変に怒ってしまいました(笑)。自分達に原因があるとは少しも考えずに、なんでも周りの環境や人のせいにする。そんな考えを持っている方とは、一緒に仕事をしたくありません。

 

─思い当たる経営者は多そうですね。

そうですね。商品が売れない原因を、今だにリーマンショックのせいにしたり…。まだ言っているんですか?みたいな感じです。あと、「うちのスタッフは使えない」とか、従業員の悪口をいう人もすごく嫌です。

周りの環境や人のせいにする前に、「あなたたちは売る努力をしていますか?」という話なんです。例えば、Amazonが日本に浸透して、業績が悪化した小売店はたくさんありました。でもAmazonは、サイトの使いやすさを改善したり、素早く商品を届けられるように流通網を整えたり、商品を売るためにものすごい努力をしているんですよ。一方で、文句を言っている小売店は、未だに商品を並べただけで、工夫の一つもしていなかったりする。何もしないで売れる時代ではないですよと言いたいですね。

 

─では、どのような努力が大切なのでしょう?

大きく分けて2つあります。一つは従業員満足度の「ES」、もう一つは顧客満足度の「CS」の向上です。

従業員が働いている職場に感謝したり、良い環境だと思ってもらうこと、つまり、従業員満足度の向上は企業の発展において欠かすことはできません。ですから、その土台を作りをする、経営者や店長といったトップが考え方を変えなければ、企業は次のステージには行くことはできないんです。では、何を変えるのかと言うと、まず一つは、先ほども言ったように「人や環境のせいにしない」ことです。

ライバルがいるなら、「ライバルがいたせいで。ライバルなんかいなければ良かったのに」と思うのではなく、「ライバルがいたおかげで、努力しないといけない環境になって良かった」と思うくらいでないといけません。そうした時に、初めて課題が見えてくるはずです。その課題を解決しようとすれば、必然的に顧客満足度も上がって行きます。

二つ目は、お客様の課題を解決することです。そうすれば、お客様は「あの店に行って良かった」と感じて、顧客満足度とリピート率が上がります。そして、それを継続してもらうことを何よりも大切にしなければなりません。そのためにはいつも発見のあるお店にする。それが選ばれる努力であり、飽きさせない努力なんです。

 

─それができて当たり前ということですよね。

そうです。でも、その当たり前をしていない企業が実に多いんですよ。「これでよく今までやってこれましたね」と思うほどです。「努力していたのに、売り上げが落ちた」という企業もいますが、それは努力の仕方が間違っているんですね。サボらないで頑張ることが努力ではありません。

今までと同じやり方をして、仕事の仕方がパターン化しているようではダメなのは当たり前。だから、企業経営では手足を使うのではなく、頭を使うことが大切です。

これからの時代はAIが人間の仕事を奪うかもしれません。しかし、お客様の課題を解決したり、お客様が新しい発見をし、感動してもらう仕組みを作ることはAIにはまだまだできないことです。「満足」だけではお客様を呼べない今、「顧客感動」を高めていくべきだと言えます。

考え方を変えて成果を出して行く

「課題発見力」が大事という成田さん。当たり前と思っていることを、当たり前と片付けるのではなく、真摯に向き合って成果を出して行くことが大切だと語りました。悩むことは課題を見つけること。まずは考え方を変えることから始めてはいかがでしょうか。

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