給料の約2/3を貰える!産休・育休中の各種手当て・特典と国際比較

著者名SJ
給料の約2/3を貰える!産休・育休中の各種手当て・特典と国際比較

出産は誰にとっても大きなライフイベント。働く女性にとっては特に、どのくらい育休を取って復帰するか、その間のお金のやりくりはどうするかなど、悩みは尽きません。

そもそも、育児休暇中の給料は、いつからいつまでどのくらい貰えるのでしょうか。育休中は給料の何割かが支給されるというイメージがありますが、実は育休中に会社から給料が支払われることはほとんどありません。そのかわり、各種保険から法律で定められた様々な手当の支払いを受けることが出来ます。雇用条件によって利用できるものが変わってきますが、制度をフル活用して安心して産後の育児期間を過ごせるよう、仕組みをしっかり知っておく必要があります。

育児休暇とは

一般に私たちが「育児休暇」と呼んでいるものは、正式には「育児休業」という法律上の制度のことです。育児休業は、「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称「育児・介護休業法」)で定められた、子どもを養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことを指します。

これに対して「育児休暇」は、企業がそれぞれに定める、育児のために取得できる休暇のことをいいます。この記事では、制度である「育児休業」の期間中の手当についてご紹介します。

期間

民間企業に勤めている場合、基本的には最大1年、子どもが1歳になる誕生日の前日までが対象ですが、保育所に入れなかったなど一定の条件を満たせば、子どもが2歳になるまでの2年間に延長が可能です。育児休業の期間については、別の記事で解説していますので、詳しくはこちらを参照ください。

育児休業(育児休暇)期間はいつからいつまで?図でわかりやすく解説! - CANARY
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大体の貰える金額と期間

育児休業中に貰える金額は、育児休業開始日から180日目までの間は一か月あたりの月給の67%、181日目以降は月給の50%です。ただし、それぞれ上限と下限が決まっていて、180日目までの上限は月299,691円、181日目以降の上限は月223,650円ですので、この上限の基準となっている賃金月額約45万円を大きく超える月収を得ている人は、がくんと収入が減ることになりますので、特に注意が必要です。

会社から給料は支払われない

育児休業中に受け取ることのできる大体の額を紹介しましたが、実はこれは、会社から給料として支払われるものではありません。ではこのお金が一体どこからどういう名目で支給されるのか、詳しく見ていきましょう。

支払い義務

多くの企業が育休の制度を取り入れており、本人または配偶者の産後期間に休暇を取得することができます。しかし、育休中の給料に関して、企業側には支払い義務がありません。会社によっては支給されることもありますが、支給されない場合がほとんどです。実は、育児休業中に支給されるお金の出所は、会社ではなく雇用保険。このため、支給を受けるための手続きはハローワークで行います。

公務員との比較

公務員の育児休業については、民間企業勤務の人の育児休業とは別の法律で定められています。官僚や国立大学職員など国家公務員の場合は「国家公務員の育児休業等に関する法律」、市町村役場の職員など地方公務員の場合は「地方公務員の育児休業等に関する法律」が根拠となります。また、制度上、公務員は雇用保険に加入できないため、育児休業中に公務員が受け取るお金の出所は、民間の場合と異なり、公務員共済組合となっています。

公務員と民間企業の育児休業の違い

公務員の場合、育児休業の期間は「「子が3歳に達する日まで」とされているため、最大3年間の育児休業が可能です。民間の場合は、延長可能な条件を満たさない限り基本的に1年間ですので、公務員か会社員かで、休むことのできる期間には大きな違いがあります。一方で、給付金については公務員も会社員と同じ条件です。育児休業開始日から180日目までの間は収入額の67%、181日目以降は50%が、子が1歳に達するまでの最大1年間支給されます。この手当の受給を最大2年まで延長できることとそのための条件も、会社員の場合と同じです。

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貰える手当

続いて、育児休業とそれに先立つ産休(産前産後休業)期間中に貰える手当について、ひとつずつ見ていきましょう。

出産手当金(給料の約2/3)

出産手当金は、勤務先企業で加入する健康保険から支給されるものです。出産の日(或いは、実際の出産が予定日後のときは出産予定日)から前に遡って42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間について支給されます。出産が予定日より遅れた場合には、予定日から実際に出産した日までの期間についても手当が支給されます。

支給額は、支給前12カ月間の標準報酬月額を平均した額を30で割った額の3分の2を日額として計算しますので、給料の3分の2と考えておけばよいでしょう。休んだ期間の分についても勤務先から給与の支払いがあった場合でも、支払われた給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合には、その差額が支給されます。

出産育児一時金

出産育児一時金は、1児につき一律42万円が支給されるものです。1児あたりで額が決められているので、双子を出産した場合には、42万円×2児分の84万円が支給されます。ただし、産科医療補償制度に加入していない病院などで出産した場合は、1児40.4万円となります。

出産育児一時金は健康保険から支払われるものですが、勤務先の健康保険組合、協会けんぽ、共済組合等に加え、配偶者の加入している健康保険や国民健康保険からも支給されますので、専業主婦や自営業者、フリーランスでも受け取ることが出来ます。

さらに、直接支払制度があるので、管轄機関から医療機関等に対して直接支払いを行ってもらうこともできます。直接支払い制度を利用した場合で、出産にかかった実際の費用が支給額より少なかった際は、出産後にその差額を請求することができます。

育児休業給付金上の「大体の貰える金額と期間」で紹介したのが、育児休業給付金です。育児休業開始日から180日目までの間は収入額の67%、181日目以降は50%が支給されるものです。会社員は雇用保険、公務員は共済から支給され、いずれの場合も子が1歳になるまでの1年間が上限です。

ただし、保育所に申し込みを行っているのに入所できない時や、配偶者が死亡したり,離婚した等の理由で配偶者が子の養育をできなくなった場合など、特定の条件を満たす場合には、申請をすることで受給期間の延長が可能です。延長により、最長で子が2歳になるまでの2年間受給が可能ですが、延長は6カ月ごとのため、1歳になった時と1歳半になった時にそれぞれ延長の申請を行う必要があります。

児童手当

子育て中に受け取ることのできる手当として、市区町村から支給される児童手当も忘れてはいけません。児童手当は、中学校卒業までの子どもを養育している人に支給されるものです。支給額は子供の年齢に応じて月額が規定されており、3歳未満の子どもは一人当たり1万5千円、3歳から小学校卒業までの子どもは第2子までは1万円、第3子からは1万5千円、そして中学生なら一人当たり1万円です。

ただし、支給は年3回、4カ月分ずつ行われます。公務員の場合は市区町村でなく勤務先から支給されます。児童手当について注意しなければいけないのは、所得制限が設けられている点です。扶養家族の人数に応じて所得の上限が決められており、上限額を超える場合には、受け取ることのできる児童手当の月額が一人当たり一律5千円となります。たとえば配偶者と子ども2人を扶養している人が児童手当を申請する場合、上限となる年収は960万円です。

貰える条件

これらの手当を貰うためには各々条件があります。自分の場合はどれが貰えるか、一つずつ条件を見ていきましょう。

出産手当金

出産する人自身が勤務先で健康保険(公務員の場合は共済)に加入していることが条件です。出産する本人が働けない期間の賃金を補填するのが目的なので、専業主婦など夫の健康保険の扶養に入っている人は受け取ることが出来ません。また、国民健康保険に加入している自営業者やフリーランスも対象外です。勤務先で1年以上健康保険に加入していれば、出産手当金の支給中に退職する場合でも全額受け取ることが可能です。

出産育児一時金

勤務先の健康保険、扶養に入っている場合は夫の健康保険、そして国民健康保険、いずれからも支払われるので、会社員、公務員のほか専業主婦や自営業者、フリーランスなど、誰でも受け取ることができます。

育児休業給付金

雇用保険から支給されるものなので、自身が勤務先で雇用保険に加入していることが条件です。このため専業主婦や自営業者、フリーランスの人は受け取ることができません。会社勤めの場合、同じ事業主に1年以上雇用されており、かつ子どもが1歳6ヶ月になっても引き続き雇用される見込みがあることが受給の条件となっています。一方、公務員の場合は特に勤務期間に関する条件はありません。ただし、勤務先から休業前の賃金額の8割以上の賃金が支払われる場合は受給できませんので、休業中も会社から給与支給がある場合には、金額を会社と確認しておきましょう。

児童手当

支給対象となる子どもを養育している人に対して支払われるので、日本国内に住む0歳以上から中学卒業までの子どもを育てている人は、全員受け取ることが出来ます。

正社員・派遣社員・アルバイト

ここで紹介した4つの手当てのうち、出産手当金と育児休業給付金を受け取るためには、受け取る人自身が勤務先で雇用保険に加入している必要があります。だからといって、正社員でなければいけないということではありません。出産手当金は、勤務先で社会保険に加入し自分名義の保険証が発行されている人であれば、派遣社員やパート・アルバイトでも受け取ることができます。育児休業給付金の受給条件である雇用保険は、1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であれば加入必須ですので、正社員ではなくとも加入している場合がほとんどでしょう。

そのため、パートやアルバイトの方でも、


①休業前の2年間で、11日以上出勤した月が12ヶ月以上ある

②育休中は、休業前の賃金額の8割以上の賃金が支払われず、働く日数が月10日以下または勤務時間が80時間以下


の2つの条件を満たしていれば、パートやアルバイトでも育児休業給付金を受け取ることが出来ます。たとえば配偶者の扶養内でパートとして働いている人でも、こちらは受給できる可能性が大きいのではないでしょうか。

ただし、育児休業取得においては、


① 申請の時点で1年以上同じ雇用主に雇用されている

② 子が1歳6か月になっても引き続き雇用される見込みがある

③ 週2日以上働いている


の3つの条件を満たしていない場合や、アルバイトなどの有期契約労働者については、育休の取得が認められない場合がありますので、その場合は育児休業給付金を受給することができません。

免除される税金・医療手当

今まで見てきた4種類の手当に加えて、産休・育休期間は社会保険料や子どもの医療費の負担が免除されたり軽減されたりする特典がありますので、あわせてチェックしておきましょう。

厚生年金保険・健康保険

産休および育休中は、勤務先で徴収されている厚生年金保険や健康保険といった社会保険料が免除されます。免除される期間は、休業の開始月から、終了予定日の翌日の属する月の前月までです。将来、受給できる年金額を計算する際には、この免除期間も保険料を納めた期間として扱われますので、年金が減る心配もありません。

子どもの医療費

一般的に、医療費の患者負担は3割ですが、小学校入学前の未就学児(7歳になる年の3月まで)については、2割に抑えられています。これだけでもありがたいですが、近年は都道府県ないし市区町村ごとに子どもの医療費助成の拡充が進んでいます。都道府県レベルでは就学前まで、市区町村レベルでは15歳の年度末までを対象に助成している例が多いようです。自治体によって対象年齢や補助対象、所得制限の有無などばらつきがありますので、住んでいる自治体の助成内容を確認してみましょう。

母子家庭・父子家庭の医療費は免除の場合も

両親の離婚、父または母の死亡などで養育者が一人となった「ひとり親家庭」(母子家庭ないし父子家庭)の人は、「ひとり親家庭医療費助成制度」を活用することで、さらに医療費の負担を軽くできます。この制度は市区町村で運営されるものなので、自治体ごとに助成内容に差がありますが、一般的に、子どもが18歳になる年の年度末(3月末)まで、その子と親の医療費負担が軽減されます。子どもの医療費については全額免除される例も多いので、ひとり親家庭に該当する場合は、住んでいる自治体で助成内容を確認しつつ、すぐに手続きを進めましょう。

世界の産休比較

日本で産休・育休の制度や、もらえる手当についてはイメージ頂けたでしょうか?出産手当金に限って言えば、産前6週と産後8週の合計14週間にわたって直前の給料の67%を受け取ることが出来ますが、果たしてこれは「手厚い」と言えるのでしょうか。比較のため、海外ではどのくらい貰えるのか、諸外国の産休について調べてみました。

OECD(経済協力開発機構)が42か国を対象に行った調査データによると、手当を貰える産休期間の長さではブルガリアが58.6週間でダントツのトップ。410日間なので、なんと1年以上です。支払われる額もかなり多く、産休前の給料の78.4%です。1年以上も給料の8割近くをもらいながら休業できるなら、余裕のある産後を過ごせそうですね。給料満額に換算すると約46カ月分で、2位以下を大きく突き放して堂々の一位でした。

続く2位はクロアチアで、給料満額が30カ月支給されます。3位はスロバキアで、満額支給に換算した場合で23.8カ月分。その後には満額23.3カ月分のギリシャが、さらに20カ月分のエストニアとポーランドが続きます。18カ月分でリトアニアと並んでチリが7位にランクインするまで、上位をすべて東ヨーロッパの国が独占しているのは興味深いですね。社会保障が手厚いイメージのある北欧が上位に入っていないのは意外ですが、産休の後に続く育休も勘案すると、スウェーデンなどはとても手厚い制度を整えているようです。

さて、気になる日本のランクですが、42か国中、下から9番目という少し残念な結果でした。偶然かもしれませんが、ILO(国際労働機関)は「休業前の給与の3分の2以上の現金給付をともなう14週間の出産休暇」を制度化することを呼びかけていますので、日本は国際的な最低基準をぴったり(というのか、ぎりぎりというのか)満たしている状態と言えます。手厚いと呼ぶには程遠いですが、文句を言うことはできない水準ですね。

ちなみに、こちらも気になるランキング最下位は、経済大国アメリカです。アメリカでは手当付きの産休が連邦政府の法律で義務付けられていないため、企業任せにされている状態です。中規模から大規模の企業の40%には産休中に手当を支給する制度がないという調査結果もありますので、アメリカで働く女性を取り巻く現実はかなり厳しそうです。

相談

職場によっては、産休や育休を取得すると、復職時に勤務先とトラブルになるケースがあります。それ以前に、そもそも育休をとりづらいといった悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。もし、産休・育休関連で会社と折り合いがつかず不利益を被るようなことがあれば、各都道府県の労働局に相談しましょう。

労働局

労働局には「紛争解決援助制度」というものがあり、会社とのトラブルについて来局、文書または電話で申立てを行うと、無料で事情聴取や企業への指導・勧告などを行ってくれます。産休や育休に直接関わらなくても、育児・介護休業法に関するトラブルであれば援助を受けることが出来ます。

例えば、3歳に満たない子を養育している人は、所定労働時間を6時間に短縮することができる「短時間勤務制度」というものがありますが、この制度を利用して時短勤務をしたいと申し出た正社員が、会社側からパートへの身分変更を強要されたケースが実際にあったそうです。この時は労働局が援助を行った結果、会社側が法律の理解不足があったことと申立者への対応に誤りがあったことを認め、申し立てを行った人は正社員のまま時短勤務できることとになりました。

FP(フィナンシャルプランナー)

産休や育休中のお金のやりくりのことなら、フィナンシャルプランナーに相談するのがよいでしょう。実際に手当を受け取るには、色々な手続きも必要ですし、受け取りまでには想像以上に時間がかかってしまうものです。たとえば産休中の手当は、出産後56日が経過してからまとめて受け取ります。したがって、産休期間中には受け取れないのが一般的です。また、育休中の手当は、休業開始から4~5カ月経ってから受給を開始するケースも多いので、特に貯蓄が多くない場合には、どの手当をどういった出費に充てるのか、出産前に計画しておくのがよいでしょう。

 

育児休業中の手当てや特典について、理解を深めて頂けたでしょうか。就業形態や契約内容、住んでいる自治体など、個別の条件によって受け取ることのできる手当や適用される助成の内容が随分違いますので、子どもを持つことを考え始めたら、自分の場合はどの特典が利用できるか確認しておくのがよさそうです。特に、自営業やフリーランスの人は受け取ることのできる手当がかなり限られているので、計画的に貯蓄する、社会保険完備のアルバイトやパートといった形態での就業を検討する等、出産に向けて戦略的に動いていく必要があるでしょう。

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