「世代を超えた交流」と「白熱コミュニケーション」〜猪瀬サロンの全容

著者名シナプス編集部
「世代を超えた交流」と「白熱コミュニケーション」〜猪瀬サロンの全容

猪瀬直樹の近現代を読む」サロンは定期的にオフ会を開いている。筆者は前回のオフ会レポートにおいて、猪瀬サロンに若者が少ないことを残念だと書いたが、今回猪瀬サロンにハタチのメンバーふたりが加わった。

ひとりは広島から来た男性、彼はオフ会前日に東京での大学受験を終えたばかりだ。自己紹介で彼は「今日もとても緊張しています」と言ったが、猪瀬は「受験とは違って気持ちのいい緊張だろ」と笑いかけていた。もうひとりは大学2年の男性、昔から猪瀬直樹の著作を読んでいて当サロンに入ったという。「家長としての責任感」を説く猪瀬の諸著作を読んできたという彼の顔つきは、凛々しく頼もしい。

「若者以上の好奇心とバイタリティに溢れる猪瀬の言動」に直に触れる体験は、現役世代のみならず次代を担う若手にとっても刺激的だろう。

猪瀬は「サロンは自分の職業や発想に基づいて発信しあう場なんだ。僕自身もみんなからの刺激が欲しくてこのサロンを始めたんだよ」と言っていたが、この日のオフ会には20歳から63歳まで、さまざまな職業の方々が参加していた。猪瀬サロンはこれからもっとおもしろくなるだろう。

ふたりの若手加入もさることながら、今回のオフ会参加者は過去最多の22名だった。地方にいて日程が合わない人、海外から都合をつけてもわざわざ来る人、東京でも仕事で急に会合と重なってキャンセルした人、いろいろ事情があって毎回出席できるとはかぎらない。毎回の人もいるが、2回に1回、3回に1回などフレキシブルに参加している。どうしても時間が合わない場合は、後半だけの参加も許されている。そのあたりは自由なので出席できなくてもみな負い目はない。ロータリークラブなどと違って義務ではないからだ。多忙な人が多いが、それでも駆けつけるのは、精力的に活動している猪瀬の発信力ゆえだろう。彼はこの日もオフ会開始直前まで某局の取材を受けていた。

多忙にもかかわらずこの日の猪瀬は非常にリラックスしているように見えた。一昨日久しぶりにしたランニングとテニスのリフレッシュ効果だろうか。「東京の敵」をひとり倒したからだろうか。猪瀬がまとうビビッドオレンジのセーターと、ハタチの青年がくべた薪(猪瀬が薪のくべ方を教えていた)から立ち上る暖炉の火が、サロンの人々が集まった応接室を明るく、暖かく演出していた。

いつも、最初に猪瀬直樹のサイン本が参加者に無料で配られる。同時に、最近のニュースに関するテレビでは絶対にわからないオフレコ話も開陳されるのでみな興味深々に聞き入るのだ。

初の参加者が多いため、オフ会は自己紹介から始まった。今回新たに加わったメンバーもまた、商社マン、不動産会社経営者、ITのインフラ管理に携わる方、元テレビ制作会社勤務の方などバラエティーに富んでいた。

自己紹介が苦手な人は多いかもしれないが、自己紹介は自分のことを知ってもらうチャンスだ。猪瀬直樹を前にして自己紹介するのは確かに緊張する。しかし恐がる必要はまったくない。有名無名かかわらず数多くの人々にインタビューを行ってきた猪瀬は、人の話を聞くプロだ。あなたの話を真剣に聞き、さらに引き出そうともする。

この日も不動産経営の方が、自身の知識に基づいて森友学園のニュースに対するコメントをしていたが、その話を猪瀬は興味深そうに聞いていた。いまいる自分の社会の位置で見える景色や、考えていることをなんでも話そう。「みんなからの刺激が欲しくてこのサロンを続けている」という言葉を思い出す。

「はい」は返事じゃない、人の話は遮ってもいい

この日のオフ会、猪瀬はコミュニケーションのあり方に言及する回数が多かった。

会員の方々が自己紹介をしている中、シナプス編集部の海野が参加者名簿に一言メモを書いていた。おもむろに猪瀬が「海野、いま自己紹介した人はどんな仕事してるのか分かったか?」と聞くと海野は「はい」とだけ応える。すぐに猪瀬は「『はい』じゃわからないだろう。復唱するんだよ、復唱。何やってるのかわかったならその内容を答えるんだよ」と少しキツい口調で言った。「むかし軍隊では必ず復唱したんだよね。なんでかって間違えたら終わりだから。危機管理って復唱なんだよ。だから俺はいつも『はい』は返事じゃないって言うんだ。復唱しろって」と続く猪瀬の話にメンバーたちがうなずく。

猪瀬がチャーミングなのはこのあとだ。再び「いまのちゃんとメモったか?」と聞かれた海野がメモした内容をスラスラ言うと、猪瀬は「いいじゃないか」と褒める。サロンメンバーはみな猪瀬のこの思いやりにやられてしまうのだ。

人の会話を遮ってでも自分が話す、というのも面白い話だった。「瞬間の記憶は20秒だから。犬の記憶は3秒っていうけど、人間もあんまり変わらない。僕もみんなの話遮って話し出すことあるだろ?」と猪瀬は笑う。「僕が講演なんかしても、全部話し終わるまで誰も質問しない。だから僕は『ハーバード白熱授業』みたいに思いついた瞬間に手を挙げなさいって感じでやっている。人の話を遮ってでも自分の疑問をぶつけていいんだよ」と言う。

話を聞いて筆者は「人の話を最後まで聞きなさい」と小学校の先生に何度も怒られたことを思い出した。「人の話を最後まで聞く」、「質問はその後でする」というのは礼儀であり、また授業を円滑に進めるために大切だと教えられてきた。

しかし猪瀬が言っていたのはまったく逆のことだった。相手の話が終わるころには、疑問に思っていたことも忘れてしまう。だから「どんな疑問でもいい。疑問が浮かんだ瞬間に聞けばいいんだよ」という猪瀬の言葉はとても新鮮で、大人数の場での会話や議論が苦手な人たちをもっと自由にしてくれるように思えた。

猪瀬サロンで必要なのは学ぶ意欲だけ

猪瀬のオフィスで行われたオフ会がお開きになると、近所の中華料理屋に移動して懇談会がはじまる。お酒が入りフランクな形で猪瀬と会員の、そして会員同士の交流が行われた。

3つの円卓を使って20人以上での会食である。猪瀬は各テーブルに移動しながら全員と話をしていた。今回私は運営側という立場上、猪瀬と同席することはできなかったが、他のテーブルでサロンメンバーの方々と話すことができた。

特に印象に残ったのは、最年長の方が語った東大紛争の思い出だ。当時中学生の彼は父に「この祭りを見てこい!」と言われてひとり安田講堂に行ったという。近所に住んでいたこともあって、マンホールの位置まで把握していたというキャンパスのなかで、中学生のわりにガタイのよかった彼は大学生と勘違いされ機動隊にぶん殴られたという。そんな話をハタチの青年ふたりが笑いながら聞いている光景はなんとも感慨深かった。ともすれば歴史に埋もれてしまうひとりの人生史が、若い世代に伝わっていく。これこそ猪瀬のやってきた仕事のひとつである。

若手はまだ緊張していてうまく話せない場面も多いようだったが、これから場に慣れて自分の世代ならではの感性で大人たちに刺激を与えていくだろう。

「猪瀬直樹の近現代を読む」サロンは、多種多様な人たちの参加によって成り立っている。猪瀬直樹の話を聞くだけではなく、さまざまな人々との交流を通して刺激を受けるために、そして自身の知識や知恵を、そして体験を伝えるために、このサロンを活用するのもいいだろう。

私が思うには、猪瀬サロンへの参加資格は、知的好奇心と積極性だけだ。学ぶ意欲さえあれば、猪瀬直樹もサロンメンバーもきっとあなたを歓迎するだろう。

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