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「 隠されたアイスランド革命」

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「 隠されたアイスランド革命」
有料・活動支援版メルマガ 『 田中優の未来レポート 』  (第20号/2012.8.15発行 )より

「 隠されたアイスランド革命」



◆ 経済破綻したはずのアイスランド


 今年(2012年)7月、アイスランドに行ってきた。アイスランドに行くのは二回目。白夜の時期で一日中暗くならなかった。


↓夜の12時に船から撮った写真。何と、この時期日照時間は24時間だそうだ!



そこまで乗ってきたピースボートの船を離れ、タクシーでホテルに向かう。人口31万人ほどのこの国 なのに、似つかわしくないほどたくさんの建物があって町も広い。 

 しかしどうにも人影が少なすぎるのだ。ふと気づくと建物には「For Sale」の文字がある。タクシーの運転手に聞いてみると「2008年の経済危機の影響だ」という。しかし一方でそんな影など微塵もなく、 短い夏のせいもあるのだろうが若者たちは深夜まで町で車を走らせ、店も賑わいを見せている。 



↓夜11時頃のアイスランド首都レイキャビックの街中。たくさんの若者が車を走らせている。



 『どうしたことなのだろう』と思う。とはいえ白夜の国、深夜といっても薄明かりのままなのだが。

 アイスランドは経済的に破綻した状況になり、負債だけがアイスランドに残されているはずだった。

 そこまでの話は聞いてきたのに、その後の話はぱったり聞かない。前回来たのはちょうど破綻の寸前、浮かれたような状況のアイスランドだった。建物がバブルのように建てられていた。 その分の債務だけでも人々は生活が圧迫されているはずなのに。 



◆ 住宅・金融分野からの破綻

 オーストラリアと米国を拠点とするシンクタンク「経済平和研究所」の2012年版「世界平和度指数」に よれば、世界一平和な国はこのアイスランドなのだそうだ。 日本も第五位だからお互い平和な国同士だが、日本より居心地がいいようだ。人々がみな親切で、暴走族らしき轟音を立てる車ですら、歩行者にはきちんと道を譲るのだ。

 気になって調べてみると、アイスランドはその債務を国民の負担とせずに踏み倒していた。

 もともとアイスランドは経済の6割以上を農業・漁業に頼っていた。しかしその後は工業・サービス業へと移行し、特に金融・不動産部門が発達したおかげで、一人当たりGDPで世界第五位(2006年)まで上がっていた。人口の少なさのせいもあって。

 しかしその繁栄は「金融と不動産部門」の発達のおかげだっただけに、2008年に始まる世界金融危機の影響は著しかった。


 それまでの政府の財務体質は良好で、1998年以降はずっと黒字になっていた。ところが2008年、アイスランドの民間銀行は経済危機の影響を受けて破綻状態となった。危機に直面した政府はそれらすべての銀行を国有化した。と同時に、信頼を失った通貨はほとんど紙くず同然になってしまった。


 それを解決すべく、ロシアから40億ユーロの緊急融資を受け、さらにIMF(国際通貨基金)に正式に支援を要請した。いよいよIMFの登場だ。IMFの処方箋を受けて再建できた国はない。IMFが要請するのは厳しい「緊縮財政と国の持つ資産すべての売却」、その後に残るのは世界の多国籍企業に売り払われた残骸と、進出してきた多国籍企業だけになるのが通常だ。それなのに売り払われるどころか、国内にあのマグドナルドすら存在しない。
 
 タクシーの運転手に聞くと、「通貨が暴落して、原料も輸入できないと撤退したんだよ」と笑った。
 破綻した国は、マグドナルドだらけになるのが普通なのだが。



◆ 革命の名に値する大逆転

 実際問題、政府は2009年、国家の負債として35億ユーロをイギリスとオランダに、月賦で15年間、5.5%の金利で支払うことにしていた。国民はわずか31万人だから、赤ん坊を含めて一人あたり113万ユーロ(当時のレートなら一人170万円だ)の負担がのしかかる予定だった。 

 そして2010年1月、政府管理下の銀行への公的資金投入を決定した。その資金は国民に使われるのではなく、つぶれた銀行預金者の救済のために使われる。実際の預金者はアイスランド人ではなく、英国やオランダなどの大口預金者だった。


 これにアイスランド国民が強く反発した。国民の反発を受けて大統領が提案に拒否権を発動する。
そして2010年3月6日、国民投票が行われ、93%の圧倒的多数により債務支払いが拒否された。さらに危機を招いた銀行家や官僚らに捜査が入り、多くの企業役員らが逮捕された

 しかし英国やオランダ政府は、それぞれの国内で大口預金者の損失を「肩代わり」していた。大口預金者の預金を肩代わりして返済していたのだ。そこでそれらの政府は再度反発し、アイスランド政府に圧力をかけた。


 その結果アイスランド政府は2011年2月、人々の借金になる公的資金投入を決定し、銀行の負債を英国などに払おうとした。しかし再び大統領が拒否権を発動し、2011年4月、再び国民投票となり、再び英国などへの返済が否決された。


 人々は自分たちに関係のない民間銀行の負債を自分たちの借金にすることを拒否したのだ。その結果、海外投資家に奪われるはずだった資金を守ったのだ。その資金で行われたのは国民の住宅ローンの免除だった。人々は借金を負わされるどころか、自らの負債の免除に使ったのだ。

 こうしてアイスランドは、ぼくが二回目に訪れるまでの間に、順調な黒字財政から一転して債務危機に陥り、国民一人当たり170万円もの負担を強いられるところを二度も蹴り飛ばし、安定に戻っていたのだ。



◆ 金融は不滅、人々は絶滅


 一方で、ギリシャは破綻寸前に陥り、すでにIMFなどから約10兆円の借金をしている。そのためにギリシャは莫大な金額の返済を強いられ、緊縮財政が敷かれたせいで人々の生活は困難になっている。


 この始まりは、2001年からのゴールドマンサックスとギリシャ政府との秘密のデリバティブ取引が原因だった。その赤字を隠させるために、さらにゴールドマンサックスはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)をギリシャ政府に仕込み、債務を隠させていた。それはギリシャ政府が破綻した場合の債権回収に保険を賭ける仕組みだ。破綻するかしないかで賭けを作り、市場全体に負担させる方法だ。


 しかしゴールドマンサックスだけは破綻することを知っていた。なぜなら自分が協力して、ギリシャ政府に作らせた「隠れ借金」があったからだ。ところがゴールドマンサックスはこのことを伏せたまま、ギリシャ政府が破綻する側に投資したのだ。そしてギリシャ政府の破綻が進むことでゴールドマンサックスは利益を受け取り、世界中に小分けされたCDS債券が世界中に金融危機を招く構造を作ったのだ。


 その後には「破産管財人」のような顔をしてIMFが入り、超緊縮財政と国際の資産の売却によって国民生活は地を這う状態になった。これが普通の破綻のパターンだ。金融ファンドから話を持ちかけられ、無責任な政府が同意し、経済破綻へと進んでいく。
 その責任は罪のない国民のツケにされ、国民は赤貧の状態になって国の債務の奴隷にされる。
これが国際的な金融のルールなのだ。


 ところがアイスランドだけは違った。人々は「それは国民が作り出した借金ではないのだから払わない」と主張したのだ。しかも国民投票という荒業を2度もやってのけた。単なる民間銀行のツケを、国民のツケとはさせなかった。ギリシャがもし同じだったなら、2001年当時の政府とゴールドマンサックスの関係者を逮捕させ、彼らから負債を取り立てていただろう。共同で犯罪行為を行った彼らから、不当な利益を吐き出させればいいのだ。



◆ 隠された革命を日本にも


  そう、国民のツケにすることを拒否したアイスランドの事例は、腐敗した政府や金融ファンド関係者には都合が悪い。そのせいでアイスランドの事例は報道されないのだ。アイスランドの事例は先進国メディアから隠されてしまった。メディアの大口スポンサーである金融機関にとって都合が悪かったからだろう。

 人々のすべきことは明らかだ。アイスランドの事例を広く知らせ、政府と金融関係者の作り出した「不法な債務」など、「国民は肩代わりしない」ということを知らせることだ。

 今回の福島原発事故の後始末も税金でされているが、これまで儲けてきた金融やマスメディア、ゼネコンや原発メーカーなどの原発ムラの利益を吐き出させていないではないか。

 これまでの日本政府にも、たくさんの隠された負債がある。「日本危機」が訪れたとき、私たちはその債務を政治家と共犯である金融機関や官僚に負担させるべきではないか。「それは国民がした借金ではない」と主張して。それとも今後も政府や一部の利権を持つ人々のために、支払い続けることでいいのだろうか。その日は近いかもしれない。私としては、一日も早く「国民投票制度」を作りたい。

 債務を引き受けるかどうかの判断を、国民一人ひとりが判断できるようにすべきだ。


 この構造は福島原発事故の「原子力ムラ」の場合も同じだ。

 すべての国民が原発推進を判断したかのように装うことで、実際に進めてきた原子力ムラの人間は、不当な利益を受けたまま吐き出していない。一銭も負担せず、無罪放免で国民の借金にして税金から負担させている。


 現に事故原因者である東京電力株式会社ですら破綻にならず、そこに貸し込んできた生命保険会社や銀行など金融機関の債権も、傷ひとつ受けていない。破綻させれば少なくとも株主や融資した側への返済はされなくなり、それだけ国民負担の額は減っていたはずだ。さらに不当な利益を吐き出させれば、国民の税金もこれほど多額に使わずに、事故処理できたかもしれないのに。


 だからアイスランドの事例は知らされないのだ。彼らの国が小さかったことも、独自の言語や文化を大事にしてきたことも幸いしている。特に彼らの知的レベルの高さと識字率の高さも幸いしている。

 日本でもこれを実現させられないものだろうか。




↓夜10時半のアイスランド首都、レイキャビック



↓レイキャビックの海沿いを歩く田中優




↓街には「for sale」のを貼られたたくさんの家があった。




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