Web小説の変化、キャラクター性が重視されるようになっているのはなぜ?

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Web小説の変化、キャラクター性が重視されるようになっているのはなぜ?

️この記事はプロのラノベ作家が監修しています。


Q.Web小説の変化、キャラクター性が重視されるようになっているのはなぜ?

️最近(2025年10月29日現在)、Web小説が、小説家になろう全盛期の頃と比べて変わってきているように思えます。


より展開に丁寧さが求められるように感じています。

基本的なニーズの部分は、変わっていないのですが。

この丁寧さとは、キャラクターが、何のために、何をするのか? という人間心理のリアリティ、感情の変化の納得感、話の整合性などです。
今のWeb小説最高峰のレーベルはカドカワBOOKSだと思うのですが、カドカワBOOKSから出ていて売れている作品は、この部分にかなり力を入れている印象があります。


この部分に力を入れると、相対的に展開はゆっくりになるのですが、これらの作品群は、一話一話の刺激の強さよりも、展開のていねいさによるキャラクターの魅力アップで勝負しているようにも見受けられます。


これはカドカワBOOKS以外の大判レーベルでも感じ取れることであり、ざまぁ対象なども、昔と違って、ただのヒャッハー! ではなく、ある程度、バックグラウンド持った、ちゃんとした嫌な奴になっている気がします。
(特にメインざまぁ対象は)


おそらく、なぜこの変化が起きているかというと、読者の目が肥えて来たからではないか?と考えています。
(あるいは、なろうからカクヨムへの移行が進み、ランキングの仕様が変わった結果、整合性が取れていないような違和感の多い作品がランキングに上がれなくなっているのかなと思います)


読者ニーズそのものは変わっていないが、中身は小説、あるいは物語として、かなり、しっかしたものを求めるようになってきていると感じられますが、いかがでしょうか?


A.この頂いた質問に関しましては、大変申し訳ないのですが、明確な回答が分かりません。
ただ恐らくこうであろうと考えられるのが、市場飽和であると思われます。

まず、本来はキャラクター小説が最も人気が出やすいという事実は、昔から変わりません。


「涼宮ハルヒの憂鬱」という小説ではヒロインのハルヒと主人公のキョンが、
「キノの旅」という小説ではキノという主人公が人気となり、ライトノベル以外の作品ですとドラゴンボールという作品では悟空が、ワンピースという作品ではルフィが人気キャラクターとなり作品が発展しました。


一部の例外を除き、ストーリーとは基本的にキャラクターをかっこいいもしくはかわいく見せる調味料のような役割を果たすので、調味料をうまくつかってキャラクターを立てている作品は概ね人気が出ます。


しかしここで難しいポイントとして存在するのが、「真似しやすさ」は、キャラクターよりもストーリーの方が上であるということです。


誰かが新しい小説を書こうとした時に、既存の作品のキャラクターを真似するのは非常に難しいです。


ワンピースのルフィのようなキャラクターを真似しようと思っても、海賊や麦わら帽子といった要素は真似したらパクリになってしまうし、かといって性格面を真似しようとしても、一体何をどう真似すればルフィのようなキャラクターができるかが分かりません。


しかしストーリーであれば、割と真似をすることができます。


「なんの能力も持っていなかった主人公がふとしたタイミングで異能力を手に入れ、それをきっかけに成り上がっていく」といった構図や、「主人公が最初に何かの団体を追放されてしまうが、追放されたあとに新しい団体から実力を認められ、かわいいヒロインが登場したのちにもといた団体が低迷していく」といった構図など、


いわゆるテンプレートと呼ばれるものは、キャラクターそのものよりも模倣がしやすいとされています。


ですがここで、ストーリーとは本来キャラクターを立てるものである調味料だということを、意外と多くのクリエイターが忘れてしまいます。


その結果何が起きるかというと、「既にあるヒット作品のストーリーを真似した結果、ストーリーの部分だけが真似されてしまい、そのストーリーが特にキャラクターを立てているわけではない」というような、ストレートな言い方をしてしまえば「調味料だけがお皿にのっている」ような作品が多く生み出されることとなります。


しかしこれらの作品は真似しやすい分、今まで小説を書こうと思っても書くことができなかった小説家志望にかなり刺さり、あわせて「小説家になろう」や「カクヨム」といったプラットフォームの登場も要因となって、圧倒的な量の小説が無料でWEBで読めるという時代が訪れました。


こうなると、世の中には「今月新刊として発売されたライトノベルの作品数」よりも「今月WEBにアップロードされた小説の作品数」の方が圧倒的に多くなり、結果確率論の問題として、世で発売されている小説よりも、WEBにアップロードされている小説の方からヒットが出るという現象が生まれます。


10%の確率で当たるくじ引きを10本ひくのと、1%の確率で当たるくじ引きを3000本ひくのであれば、後者の方が当たりの確率は低いのに当たりが出やすいという考えに近いものがあります。


結果として、ライトノベル業界には、「あれ、今の時代WEB発の小説の方が当たりの確率が高いのでは?」「今の時代はWEB小説なのでは?」という、ある種の確率マジックから少し変わった流行が訪れることになりました。


ですがこの流行により、WEB小説界にはさらに多くの「ストーリーの構図のみを既存作から真似し、キャラクターは特に立っていない小説」のようなものが、誤解を恐れずいれば「乱造」されていき、こういった作品で市場が飽和されていきます。これがある意味、今の小説家になろうやカクヨムの状況となります。


ここにきて初めて、「何か最近テンプレばっかりでキャラクターが立ってる小説が少ないね」ということに気づき始め、逆に言えば、「あれ、キャラクターが立ってる小説って面白くない?」という、本来一番原点にあるはずの考え方が一周回って読者界隈に広まっていき、


『キャラクターの魅力を引き立てるために、ストーリーがしっかり作られた小説が評価されるようになってきた』という現状にたどり着いたのではないかと予想します。


このあたりの「ラノベ史」は正解がないため、上記には書かれていない要素も更によく考える必要があるかもしれませんが、


ひとまずはこの「調味料だけ食べるより、調味料で味付けされた料理を食べるほうがおいしいのでは」ということを読者層が思い出した結果が、かなりしっかりした料理=作品が求められるようになった現在に繋がっているのではないかと思います。


2025年10月29日に作成した記事


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