金融の専門家は神かチンパンジーか?

テキスト

金融の専門家は神かチンパンジーか?

チンパンジーに負ける専門家


素人受けする講義の一つは、優良銘柄の選択においてアナリストや経済学者がチンパンジーに劣る、というものです。これは「確率に騙される」というエピソードとしてよく知られています。

その理由はこうです。株式市場は完全ではないけれどほぼ効率的であるため、ランダムな選択をするチンパンジー(および一般の人)のほうが、銘柄や株式市場についてバイアスを持っているアナリストや経済学者の予想より勝ることがある。これは確率(リスク)入門のお話です。

ではヘッジファンドはどうでしょうか? ヘッジファンドは株式市場などの歪みに「賭け」ます。彼らはチンパンジーに勝てるのか? これもまた興味深い問いです。


 不動産金融の黎明期 ― 専門家が勝てる市場


私は20年ほど前に住信基礎研究所という組織のトップの方から依頼を受けて、この研究所の専門を都市計画から不動産金融へと変えることのお手伝いをしたことがありました。不動産金融工学を世間に公表したタイミングでした。今ではJ-REITやキャップレートなどの用語は不動産業界の日常語になっていますが、約20年前は日本では誰も知らないという状況でした。この研究所に限らず三井不動産のトップからも要請がありサポートした経験があります。

その後、他の金融機関や企業からも声がかかるようになり、「来年はどうなる?」といった講演にも招かれるようになりました。当時、不動産市場は株式市場に比べてランダムネスが低いので、**不動産の専門家がチンパンジーに勝る可能性がある**と私は考えていました。


危機の「予兆」を読む力


実際、世界金融危機の予兆は2005年には出ていました。ARESという社団法人の機関紙に「潮目の変化...」といったレポートを発表しました。市場が壊れるぞ、とは書けないのでお茶を濁したタイトルにしましたが、「下げのシグナル」を発したつもりです。また、2007年7月には「1年後に米国住宅市場が崩壊する」という予告を日経の経済教室に投稿しました。これは没になり公開されませんでしたが。

コロナ禍については、私は予測できていませんでした。ただし、2019年秋に英国フィナンシャル・タイムズに「次の危機があるとすればパンデミック、疫病伝染であろう」という記事がありました。能登の巨大地震、ウクライナとイスラエルの戦争の勃発なども予測できませんでした。

示唆:「確率」を使いこなす


以上、株式の銘柄選択と業界のトレンドを例にして、専門家は神なのか? チンパンジーなのか? について考えるヒントを皆様に差し上げました。答えは**市場の効率性の度合い**や**予測の時間軸**によって異なります。「確率」というツールを皆様が使いこなすきっかけになればと思います。

ポイント


- 効率的な株式市場では、バイアスを持つ専門家よりランダム選択が勝ることがある
- 不動産市場のようにランダムネスが低い市場では、専門家の知見が活きる可能性がある
- 危機の「予兆」を読む力こそ、専門家の真価が問われる場面

 References


- 効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)
- 世界金融危機と不動産市場の予兆シグナル

---

川口有一郎

オンラインサロン情報

AI時代の知的鍛錬塾(メルマガ)

AI時代の知的鍛錬塾(メルマガ)

550円/1ヶ月ごと
サロンページを見る

サロン紹介

情報を追うだけでは、もう足りない。 これから必要なのは、本質を見抜き、自分で考える力。 AI時代の知的鍛錬塾の内容の一部を川口有一郎氏による解説付きでメルマガ配信していきます。
運営ツール
DMMオンラインサロン専用コミュニティ

あなたにおすすめの他サロン

おすすめサロンをすべて見る
ページトップに戻る