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風予想の教科書〜デジタル編〜

テキスト

風予想の教科書〜デジタル編〜

はじめに


近年急速に浸透した予想ファクター「風」
私自身取り入れ始めたのは約1年前と割と最近ではあるが、今では予想全体の中でも大きな比率を占める重要な考察材料に。

風予想には大きく分けるとアナログ的な使い方とデジタル的な使い方の2種類があると考えているが、今回は抽象度が低く初級者にも取り入れやすい後者について話して行こうと思う。



①Hペース/Sペースの判定


まず1つ目は自分が最初に取り入れた予想法。実質的なペース負荷の判定に風を活用するというものになる。
ここで1つ例題を。全く同じコース、馬場状態で行われたAとBの2レースがあったとして、Aが前半3F34.0、Bが前半3F34.3だとしたらどちらのレースの方が逃げ馬の負荷は大きくなるか。尚、ここでは1F毎の細かいラップの踏み方の違いは考慮しないものとする。
この文章だけを見れば当然Aの逃げ馬の方が負荷は大きいと考えられるだろう。

ではここに以下の条件を加えるとどうなるか。

A→前半3F34.0/風速10m/sの追い風
B→前半3F34.3/風速10m/sの向かい風

こう見ると途端にBの方が実質的なペース負荷が大きく見えないだろうか。ちなみにこの先全ての内容に共通する話だが、レースに影響を及ぼす風速は個人的な所感だと大体3m/s辺りから。

この予想法は実際の数字より大きい負荷を受けた先行馬を評価するのに使うもの良し、逆に数字程の負荷を受けていない”見た目上のHペース先行履歴”を持つ過剰人気馬を切るのも良し、はたまた実質Sペースの差し損ね馬を狙うのにも活用出来たりと非常に汎用性は高い。
まず初めに覚えておきたい基本だろう。

例)22/9/17 初風S(中山ダ12/3勝C)

→前半3F33.8は3勝C中山ダ12としては一見緩めの流れに映るが、向正面4.8m/sの追い風で実質的なペース負荷は数字以上。
同レースの前受け組からベイビーボス、カイアワセがその後OPに昇級している。





②上がりの価値


テンの数字に取り入れられるなら、当然終いのラップにも活用出来る。
よく2歳戦等の評価で用いられる「上がり3F○○秒以内〜」という文言があるが、当然直線向かい風で記録したのと追い風で記録したのでは価値が異なる。

またより実用的な活用法としては、レースラップと脚質に上記の風予想を組み込む方法。
これに関しては以下の例で説明。

例)21/10/06 東京盃(大井ダ12/JpnII)

→直線9.8m/sの向かい風ながらラスト2Fが11.6-12.5と非常に速い数字。直線入口時点で先頭集団に位置していたサクセスエナジー、リュウノユキナが上記ラップを刻んでいたのを物差しにすると、中団から差し込んできたレッドルゼルが純粋な脚力面では最上位であると評価出来る。
その後の活躍については言わずもがな。





③半周コースの時計価値


①②と異なり、こちらは各コースにおける向正面と直線の距離の違いに風向きを掛け合わせて実質的な走破時計の価値を求める方法。
他要素の影響を考慮しないものとして、走る距離が長い区間が追い風ならそれだけ時計は速くなりやすく、対照的に当該区間が向かい風なら遅くなりやすいというシンプルな考え方になる。

以下に向正面と直線の走行距離の差が大きいコーストップ5を芝・ダート別に記しておく。

芝 向正面 直線 差
・京都1800m         912m  404m  508m
・京都1600m(内)716m  328m  388m
・京都1600m(外)712m  404m  308m
・新潟1400m         648m  359m  289m
・新潟2000m(外)948m  659m  289m

ダート
・京都1400m         610m  329m  281m
・中山1200m         502m  306m  196m
・福島1150m         484m  295m  189m
・阪神1400m         542m  353m  189m
・新潟1200m         525m  354m  171m


これを出した後に言うのも恐縮だが、中距離戦に関しては単純な走破時計が実力の指標になりづらく、それよりも時計が能力を反映しやすいスプリント戦の方が遥かに風の効力を実感しやすい。あくまで感覚の話ではあるが、実際に取り入れる際の参考にして頂ければ。





④1周半コースの時計価値


これも本質は③と同じで、向正面と直線の走る距離の違いに着目した予想法。
前章で「中距離戦は単純な走破時計が実力の指標になりづらい」と述べたが、それを差しい引いても向正面1回、直線2回を消化する1周半コースでの風向きの違いがレースレベルを判断する大きな手助けになるのは想像に難くないだろう。
例えば中山2000mだと直線区間の走行距離が715m、向正面は正確な数値が不明だがおおよそ350mで、約2F弱の差がある。

例)22/04/16 山藤賞(中山芝20/1勝C)

→その中山2000mで良いサンプルになるのが昨年の山藤賞。同レースは直線4.2m/sの向かい風で2:00.3が記録されているが、これは直線5.8m/sの追い風で1:59.7での決着となった皐月賞と実質的な時計だけで見れば遜色ないレベル。
実際に前者の勝ち馬ローシャムパークは次戦でいきなり近年最高レベルのセントライト記念3着とクラシック組に混じって結果を残した。
ちなみに今週の函館記念は勝つと思っています。





⑤コーナー負荷


ここでは主にコーナー区間、特に4角での向かい風に焦点を当てて話を進めて行く。
アナログ的な視点だと、〈1〉純粋に外回し組の負荷が大きくなる〈2〉物理的なスピードが落ちる事により遠心力が小さくなって外負荷が小さくなるという相反する考え方が存在するが、今回の記事は出来る限り人間の主観を排除した数字へのアプローチがテーマなのでここについては議論を避けたいと思う。

これに関しても特段難しい思考が必要という訳ではなく、例えば4コーナー区間が12.0で外3を回したとして、そこが向かい風なら実質的にはより速いラップでの外負荷を受けているので数字以上に厳しい競馬になるというシンプルな話。

例)22/06/25 鷹取特別(阪神ダ20/2勝C)

→持続力が活きやすい阪神ダ20でL4→L3が13.1→12.6なら外を回す負荷はそれ程大きくないように映るが、当時は4角で9.8m/sの向かい風をモロに受ける風向き。
ここで外4を回して他馬をねじ伏せたカフジオクタゴンは見た目以上に強く、同馬は次戦でレパードSを勝利して以後重賞戦線の常連に。





おわりに


今回は数字に着目した風予想の取り入れ方について話してきた。これまでこのファクターを避けていた人にとっては拍子するほど簡単な内容だったのではないだろうか。
以前に比べて妙味がなくなってきたラップ予想に、風というエッセンスを一つ掛け合わせるだけで一気に戦える武器に変わるのなら取り入れない手はないというのが個人的な意見。
複数の強みを掛け合わせて価値を上げるという考え方は仕事にも活かせる教訓ではないかと。

次は風予想の教科書〜アナログ編〜でお会いしましょう。

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