【漢方の質問に答えます!その1】「証」に関する質問
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漢方薬剤師の猪子英恵先生が、YouTubeの視聴者から募集した漢方の質問に答えるシリーズです。第1弾は、「証」についての質問にお答えします。
なお、このコラムは、どなたでも最後まで無料で読むことができます。OTC教室では、会員限定のコラムなども随時配信しております。
Q1. 体力(虚実)はどうやって判別すればよいですか?
A. 本来は問診スキルを身に付けるための勉強が必要ですが、「店頭で簡易的に体力の虚実を判別するためのポイント」を3つご紹介します。
今回の質問募集の企画では、「証の判断ができない」というご質問をたくさんいただきました。漢方の大原則は、病名で選ぶのではなく、患者さんに合わせて処方を選ぶことです。
ここでは、虚実の判断方法について解説しますが、本題に入る前に、「証」の基礎知識について解説します。
補剤・瀉剤と虚実について
漢方薬には大きくわけて、補剤と瀉剤があります。
・ 補剤:足りないものを補う漢方薬
・ 瀉剤:余計なものを捌く(さばく)漢方薬
また、虚実の違いは以下の通りです。
① 虚
・ 「足りない」イメージであり、補剤を使うことが多い
・ しばり表現:「体力虚弱で」「やや虚弱で」など。効能効果にこの表現を含む漢方薬は、補剤であることが多い
・ 処方例:補中益気湯、当帰芍薬散など
② 実
・ 「過剰」なイメージであり、瀉剤を使うことが多い
・ しばり表現は、「比較的体力があり」「体力が充実して」など。効能効果にこの表現を含む漢方薬は、瀉剤であることが多い
・ 処方例:防風通聖散や麻黄湯など
足りない「虚」の方に瀉剤を提案したり、過剰な「実」の方に補剤を使用したりすると、効果がない、または、かえって悪化することになりかねません。まずは、その漢方薬が、補剤と瀉剤のどちらなのかを最低限理解できていることが望ましいです。
さらに、本来は、証を判別するための「問診スキル」を身に付けることが大切です。患者さまの体力や病態の虚実を把握することで、適切に処方を結び付けられるのがベストです。
ここでは、店頭で簡易的に「体力の虚実」を判別するためのポイントを、3つご紹介します。おすすめの書籍も紹介しますね。
簡易的に体力の虚実を判別するためのポイント3つ
虚実を判別するためのポイントは、「印象」、「胃」、「腸」の3つです。
・ 印象:明らかな痩せ、青白い、声が小さいなど
・ 胃:胃が痛くなりやすい、もたれやすいなど、トラブルを毎月のように感じる場合
・ 腸:腹痛や軟便、下痢など、お腹が弱いと感じられるとき
これらの項目に当てはまる場合、いわゆる「実」に使用する漢方薬を避け、優しい処方にするとよいでしょう。例えば、風邪の初期に使用することの多い「葛根湯」の体力のしばり表現は、「体力中等度以上のものの」であり、「実」に使う処方と判断できます。
また、患者さんの見た目や胃腸の状態により「葛根湯が強すぎるかもしれない」と感じた場合、過去に服用歴があれば服用できる可能性もあります。しかし、服用歴がなく、葛根湯を選ぶのが心配な場合、例えば桂枝湯などの優しい処方を選択するのがよいでしょう。
なお、登録販売者がOTC医薬品を販売する時は、添付文書通りの服用を勧めることが大原則です。しかし、臨床で虚の方に対し、「少し強いかも…」と感じる漢方薬をお渡しする時は、食直後の服用を指示するなど、できるだけ胃腸負担を避けるような形で提案することもあります。
この方法は、副作用被害救済制度の関係上おすすめはできませんが、知識の1つとして覚えておくとよいかもしれません。
Q2. 漢方の選び方がわかりません。勉強方法を教えてください。
A. おすすめ書籍などを使った勉強方法を、段階別に紹介します。
今回、「漢方の選び方」がわからないというご質問もいくつか頂きました。例えば、以下のように病名で漢方を覚えていると、壁にぶつかってしまうかもしれません。
・ ダイエット = 防風通聖散や防已黄耆湯
・ 頭痛 = 呉茱萸湯、釣藤散、五苓散
このような覚え方も導入としては悪くはないのですが、「それぞれの生薬にどのような役割のある漢方薬なのか」、「その漢方薬は補剤・瀉剤のどちらなのか」、「気・血・水のうちどのバランスを取る処方なのか」などを分かっていないと、患者さんに不利益が生じることもあります。
一方、これが理解できていると、「なぜ風邪の引き始めの葛根湯が肩こりや頭痛に使われるのか?」が分かるようになります。
そこで、今回は、漢方(証)を勉強する際の「参考図書」を段階別でご紹介します。
<ステップ1> 漢方を難解に感じてしまい、最初のとっかかりが欲しいという方
浅岡 俊之 著 『Dr浅岡の本当にわかる漢方薬』 (羊土社)
Amazonの販売ページはこちら↓
<ステップ2> 店頭にある商品についてある程度落とし込みたい方
杉山 卓也 著 『現場で使える 薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 わかる!選べる!漢方薬163』 (翔泳社)
Amazonの販売ページはこちら↓
杉山 卓也 著 『現場で使える 薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 症状からチャートで選ぶ漢方薬 単行本』 (翔泳社)
Amazonの販売ページはこちら↓
<ステップ3> 患者さんにきちんとNOと言える、自分の提案でしっかり結果を出したい、効率的で満足度の高いカウンセリング技術を磨いてリピーターを付けたい、という場合
猪子が所属する、以下の協会をおすすめいたします。
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参考:臨床漢方カウンセリング協会 お茶会
ご興味のある方は、まずはぜひ「お茶会」にご参加ください。登録販売者の方、募集中です!
https://kampo-counseling.or.jp/lp/lp3
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自分の学習レベルに合わせて、上記の書籍などをぜひ活用してみてください。
このコラムの回答者
猪子英恵(漢方薬剤師)
多くの医療機関で薬剤師として漢方外来を担当しており、相談数は月100名を超える。
2021年に臨床漢方カウンセリング協会を設立し、薬剤師・登録販売者の先生方に向けて、「現場で使える」をモットーとした漢方とカウンセリングスキルに関する講座を行っている。
※猪子先生とOTC教室のオーナーの村松で撮影したYouTube動画もあります。
【視聴者からの漢方の質問!漢方薬剤師と一緒に答えます✨「証」の見極めってどうすればいいの?葛根湯とかぜ薬の併用はOK?】
画像クリックでYouTubeにジャンプします↓
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