現代の物語は、展開が早い方が人気が出ますか?
テキスト
- 内容
- ライブラリ
この記事の作者はプロのラノベ作家です。
Q.現代の物語は、展開が早い方が良いのではないか?
と考えていますが、いかがでしょうか?
TSUTAYAの漫画売上ランキングをチェックすると、双葉社のなろう系漫画(がうがうモンスター)が上位に来ることが多くなっています。
双葉社のなろう系漫画は
「主人公が追放されてスキルが覚醒して無双して、ヒロインにモテてざまぁフラグを立てる」までが1話です。
(これは1話が退屈だと読者の大量離脱が起きるため)
また、通常、なろう書籍化作品の一巻がコミカライズの3~4巻に該当するのですが、双葉社は展開を早く、濃密にするためか、ラノベの1巻を、コミカライズの2巻で行うようです。
漫画がこのようになっているのは、「現代の読者は非常に飽きっぽくなっており、ちょっとでも退屈すると離脱するから」ではないかと考えています。
このように感じる理由としては、なろうでもカクヨムでも、展開が遅い、1話でなんの変化も発生しないと、あからさまに評価が落ちる傾向があることが上げられます。
(1話中で単純に主人公をアゲただけでは評価されずに、そこに何らかの変化が無いとダメだと考えています)
こういったことから、コミカライズ展開を見越したうえでも、展開はなるべく早い方が良いのではないか? と考えているのですが、いかがでしょうか?
A.作品のジャンルによります。
スローライフ系や日常系、料理を作って食べるだけ系のグルメタイプの作品は、そこまで展開が早くある必要はありません。
読者はこういった作品に対して「結果」ではなく「キャラクターのほのぼの感」を求めているので、展開が早くなくともキャラクターのほのぼの感を出してくれればそれでよいということになります。
一方で、「結果」を気にさせるような作品作りをしている場合、当然ですが読者は「結果」を求めているので、その結果に"近づいている"ような展開の速さがないと飽きられてしまうという可能性があります。
この原因としては、
確かに「現代の読者は非常に飽きっぽくなっており、ちょっとでも退屈すると離脱するから」というものも一因としてあるのですが、
実は大きな理由として「この著者は最初から自分の物語の何が面白いか分かっていないのでは? =一生需要とは違うことをやり続けるのでは?」と思われているという本質的な理由があるのではないかと言われています。
つまり、退屈して離脱しているのではなく、著者への信頼度が落ちて離脱しているという考え方です。
極端な例をあげると、
『主人公とヒロインはお互いに片思いで、本当は両想いなのにお互いそのことに気付いていない』という始まり方をする現代ラブコメ企画があったとします。
この場合「結果」というのは、「このヒロインと主人公は、一体いつ互いが両想いになることに気付くのか?」という結果です。読者はこの結果の提示を楽しみにして作品を読んでいくことになります。
ここで、この先の展開については大きく3通りあります。
①主人公とヒロインが、本編と全く関係ない事件に巻き込まれて恋愛絡みの設定が全く出てこない
②主人公とヒロインが、互いに両想いであることに速攻で気付いて結ばれる
③主人公とヒロインが、互いに両想いであることに気付きそうになる瞬間があるが、大体何かに邪魔されて結局気付けずに終わる
以上の3通りです。
まず①は、悪い展開の典型例です。
仮に、本編とは全く関係ない事件の展開やテンポ感が早かったとしても、読者は「全然自分たちの求めてる結果に近づいていない。著者は、この作品の一番の肝が『二人が両想いに気付くかどうかということ』であることに気付いていないのでは?」ということを直感的に感じ取ってしまいます。
それゆえに、退屈して離脱しているのではなく、信頼度の低下により離脱をします。
次に②ですが、これはものすごく展開のテンポが速い例です。
ある意味最速で読者が求めている結果を提示しているので、読者は離脱しませんが、話自体が速攻で結末を迎えてしまっているので読者が離脱する前に話自体が終わってしまっています。典型的な、「展開が早すぎて駄目」のパターンです。
そして一つの理想形と言われているのが、③です。
主人公とヒロインがいいところまでくっつこうとするが、両思いだと気づくというゴールにたどり着くことはなく、必ず毎回あと少しというところで何かに邪魔されて終わってしまいます。
これはある意味、全然ゴールしないという意味でテンポや展開が早くないのですが、読者目線で「この著者は明らかに自分の作品のゴールが二人の両想いであることを認識したうえで、あえて読者にドキドキを与えようとわざとゴールをギリギリで見せないという焦らしをして、長めに楽しませようとしている。」というように見えます。
よって極端な言い方をすれば、この著者は少なくとも読者が何を期待しているのかを理解しているので、焦らしを入れつつも恐らく最終的には二人のゴールに辿り着かせることはするだろうという、信頼度は失われません。
重要なのは、この読者への信頼度です。
1話で何の変化もないのが問題なのは、話が進まないことが問題というよりも、「この著者は本当に読者を楽しませようという気概があるのかが分からない」と受け取られてしまうことが本質的問題になります。
コミカライズを見越して展開が早い方がよいのでは、というのも間違ってはいないのですが、結局展開を早くしたところで上記の①や②のパターンになってしまっては意味がないので、「自分は自分の作品の魅力について相当考えています」ということを提示できるような、意味のある展開の速さを出す事が理想――というのが、あいまいで難しい部分にはなりますが回答になると思います。
2024年4月28日に作成した記事
エンタメノベルラボに入会するとより高度な情報が閲覧できます。
ぜひ入会してください!
フォローしたサロンの情報を、ご登録のメールアドレスにお届けします。
サロンをフォローする
-
ミステリー小説の書き方講座。謎の三要素。梶永正史先生
このミス大賞受賞作家:梶永正史先生によるミステリーの書き方講座 。第1回 魅力的な謎を作る…
動画
-
編集者講座。物語の大ヒットの法則『責任ボール』について
大ヒットと大失敗を分ける法則「責任ボール」について知らないと物語が失敗に終わってしまうリス…
テキスト
-
編集者講座。中級者向けヒットの法則。爆弾の設置と導火線の設置
中級者向けヒットの法則。第4回「爆弾の設置と導火線の設置」 「ある程度、小説を書いたことが…
テキスト
-
わかつきひかる先生のポルノ小説の書き方講座
わかつきひかる先生は、ラノベや時代小説も書かれていますが、乙女系などが得意分野で、ジュブナ…
動画
-
文芸小説で評価される文章とは?ラノベとの違い。梶永正史先生
このミス大賞受賞作家:梶永正史先生による文芸講座 1:筆力/文章能力ってなに? 2:人称の…
動画
-
編集者講座。中級者向けヒットの法則。誘導力のある文章
中級者向けヒットの法則。第3回 「誘導力のある文章と、無い文章」 「ある程度書いたことがあ…
テキスト
-
作家わかつきひかる先生のキャラクターの作り方講座。キャラ立ての秘訣
作家歴20年のベテラン小説家わかつきひかる先生のキャラクターの作り方講座。わかつき先生は、…
動画
-
編集者講座。中級者向けヒットの法則。承認提供者の有無と地位
中級者向けヒットの法則。第2回 「承認提供者の有無と地位」「ある程度書いたことがあり、基本…
テキスト
-
編集者講座。中級者向けヒットの法則。主人公を魅力的にするタイプ別の方法
中級者向けヒットの法則。第1回 先日、「最近ノベラボ内でやっている講義が、ちょっと簡単すぎ…
テキスト
-
大賞を取れる!ストーリー構成の秘訣。プロ作家、梶永正史先生
梶永正史先生は、4回目の応募で、小説新人賞の中で、最も権威がある「このミステリーがすごい大…
動画
-
編集者講座。小説の腕をあげるための「ミクロインプットのやり方」
・マクロインプット 作品を一通り読んで、「この作品の展開はここが面白いなあ」など、作品全体…
テキスト
-
作家わかつきひかる先生のラブコメの書き方講座。『換骨奪胎のやり方』
小説を書く上での重要な型、換骨奪胎の講座『ロミオとジュリエット』を元にしたラブコメの書き方…
動画
-
プロ作家どまどまさんの初心者向け『なろう小説講座』3つのポイント
実際にこれまで2回、小説家になろうから書籍化されて、ランキング1位を取ったプロ作家どまどま…
動画
-
『大賞を取れる!質の高いストーリーを書くための秘訣』梶永正史先生
梶永正史先生は、4回目の応募で、小説新人賞の中で、最も権威がある「このミステリーがすごい大…
動画
-
編集者講座「創作で最も大切なこと。イナバウアー理論」
創作で最も大切なこと。イナバウアー理論 これから小説を書く人は、絶対にこれを押さえておこう…
テキスト
-
このミス大賞受賞作家・梶永先生によるキャラの作り方講座
このミス大賞受賞作家・梶永先生によるキャラの作り方講座『このミステリーがすごい!』大賞受賞…
動画
-
プロ作家による「なろう小説創作」講座。書籍化の重要なポイントとは?
「小説家になろう」から何度も書籍化されているプロ作家。なろうのランキング上位に何度も入って…
動画
-
編集者小説講座。設定が読者に伝わらないのはなぜ?原因と解決方法
「物語の設定を上手に分かりやすい文章で書いているつもりなのに、なぜか読者に伝わってない」原…
テキスト
-
作家:瀬川コウによる創作講座。飽きずに読める小説の構成
22019年3月31日に行われたオンライン講座です。 飽きずに読める小説の構成 ・起承転結…
動画
-
作家:瀬川コウによる小説講座。売れる小説3つの要素
22019年4月27日に行われたオンライン講座です。 売れる小説3つの要素売れる小説には3…
動画
オンラインサロン情報
小説家オンラインサロン【エンタメノベルラボ】書籍化&新人賞受賞者多数!
サロン紹介
- 運営ツール
- DMMオンラインサロン専用コミュニティ