ラノベ読者は主人公に自分を一体化させて読んでいる?

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ラノベ読者は主人公に自分を一体化させて読んでいる?

この記事はプロのラノベ作家が監修しています。


Q.ラノベ読者は主人公に自分を一体化させて読んでいる?

お疲れ様です。


ライトノベルを読む時の、読者の視点について伺いたいです。
小説を読む時の視点は2種類あると思っています。


①主人公を含めた世界を俯瞰する視点
②主人公に自分を一体化させた視点


私はライトノベルの新人賞向けに百合色の強いファンタジーやSFを書いています。


最近だと「獄門撫子此処ニ在リ」「勇者殺しの花嫁」のような作品があり今後も取られる可能性があると思っています。


このようなジャンルでは、キャラクター同士の関係性もあるし、主人公のアクションもあるし……みたいな感じなのですが、読者は①と②のどちらの視点で読むのが多いのでしょうか?


また、「週に一度クラスメイトを買う話」のようなバトルやファンタジー要素のない純百合ものだと、①の読者の割合が多くなったりするのでしょうか?
なぜこのようなことを聞いているかと言いますと。


百合やBLが好きな人は、よく「壁になる」と表現しますが、①の見方で主人公たちの関係性を楽しみます。


ところが、ノベラボで、ラノベは「無双して快感を得るのがニーズである」「ハーレムなどでモテる快感がニーズである」という話を聞きました。これは、②の視点であることを前提にしていると思いました。


気になってXのフォロワーにアンケートを取ったのですが①が80%②が20%という回答でした。


ただ、わたしの周りは百合好きが多く傾向に偏りがあるのかもしれません。


そのため、実際のラノベ読者はどうなのかが気になっています。読み方に対して提供すべきものがかなり変わる気がしていますので、伺わせていただきました。


A.前提として、ラノベの読まれ方には①と②の2通りがあるという考え方はその通りだと思います。

③④といった例外の存在を指摘する考え方もありますが、ほぼ①か②の亜種なので、とりあえずは①と②しかないと考えてよいと思います。


結論として、一般的にカクヨムでは圧倒的に②のニーズが高いです。


その上で、百合系は仰って頂いた通り①パターンになることが多く、読者に「壁になる」ことを要求することも多いので、カクヨムでは純粋な百合系がランキングに載りにくいです。(王道の②パターンと比べて相対的にということ)


例外として、百合の形をとっているのに②パターンになることはあります。


それは、女性主人公が最強に近い力を有していて、パートナーとなる人物も女性である場合です。葬送のフリーレン等はこれの分かりやすい例になります。これなら百合なのに②になるので、カクヨム等ウェブ界隈でものびる可能性が十分にあります。


カクヨムではなく、いわゆる新人賞系やオリジナル企画系の作品の読者傾向ですが、ウェブ系に比べれば①型を好む読者の割合が増えると思われますが、それでも実際は②の方が多いのではないかな…と思われます。


もっと正確にいうと、最近の新人賞系の流行は、「ぱっと見で①のタイプに見えるが、冷静にみたら②に分類される、①偽装タイプ」が多いような感触があります。


例えば今年売れたライトノベルである「誰が勇者を殺したか」は、主人公である勇者が既に死んでいて、そのまわりの人間たちが勇者について語っていくというストーリーなので、色々な人間たちから世界の情報が語られる口伝的小説という意味ではほぼ①です。


しかし実際は周りの人間たちが「勇者はすごかった」と褒めまくる内容なので、読者は②型の楽しみ方をしている可能性がかなり高いです。


そしてこういったタイプの読者の方は、「本当は②型としてこの作品を楽しんでいたのに、SNS等で人におすすめするときは、とても面白い①タイプの小説だったと人に勧める」というパターンが発生することが実はかなり多いです。


乱暴な言い方をすれば、読者自身が著者の上手い誘導によって①か②かよく分からないまま作品を楽しませられている、とも表現ができます。


現実がファンタジーかによらず、女性主人公がそれほど何かに秀でた最強キャラというわけではないキャラで百合ということになれば、ほぼほぼ視点形式は①になると思われます。


しかし読者の割合的には②好き(もしくは①のフリをした②型が好き)という事実はあるので、もし本当に純粋な①を狙うのであればカクヨム等だと少し苦しいスタートラインを切ることになる、というのは意識した方がよいかもしれません。

(その意味では、新人賞の方が少し勝ち筋が拾える可能性が高いかもしれません)


そしてこういった純粋百合作品に、あまり②が好きな読者は手を伸ばさないので、結果として割合としては①が好きな読者が一番多くなるという結果になると思われます。


2024年10月10日に作成した記事


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