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板書の極意

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板書の極意

授業をする上で、板書はとても重要なものである。

昨今、ICTの活用により電子黒板やタブレットなどを活用し、全体として板書の機会が以前より減ってはいる気がするが、それでもやはり板書は重要な役割があると思う。

また、先生によっては、板書はあくまでもメモ代わりであり、あまり板書自体に重きを置かない先生もいる。

各々のこだわりがあるので、当然「これが板書の正解だ!」というものは提示できないとは思うが、それでもやはり板書を使って授業を最大限効率よく機能させることができると信じている。

ちなみに私は、基本的には「黒板に書いたものは全て写す」よう、生徒に指示している。

その理由も後ほど述べていく。


本記事では、効果的な板書の仕方、いや、板書の極意について書いていきたいと思う。

「板書力」と名付けておくが、実は「板書の内容」そのものよりも、「生徒にどのように板書を使ってもらうか」という点が大切である。その点も含めた板書力について紹介していく。


私が数学講師なので、ひょっとしたら他科目の先生にとっては議論が分かれる部分もあるかもしれないが、なるべく汎用性のあるものにしたいと思う。


<目次>

01. 板書は目的ではなく手段

02. 板書は本当に必要なのか

03. 板書に夢中で、話を聞いていない生徒

04. 授業をしっかり聞かせて、板書をしっかり取らせる方法

05. 板書を上達させるオススメの方法



01. 板書は目的ではなく手段

新人講師の研修を担当しているとき、非常によく見られるのが用意した板書を再現することに必死になり、肝心の授業が疎かになってしまうケースだ。

板書はそもそも、生徒に理解をさせるための手段の一つであり、それが目的になってしまってはいけないのだ。

授業においては、あくまでも何を伝えるのか(さらに言うと、何を伝えないのか)が大切であり、板書はその補助具に過ぎない。

美味しい料理を作ることが目的ならば、様々な調理器具を使うことはその手段でしかないのだ。


私は生徒が効率よく復習するために板書を活用している。

「生徒が復習しやすいノートを作らせること」が板書の役割だと思っているのだ。

私は、自分の授業を良い意味で信じていない。授業中には「あ!なるほど!!」と理解した生徒も、家で復習するときには「あれ?これなんだっけ?」となると思っている。

これは私自身もそうだったからだ。

「あれ?これなんだっけ?」となった際、ノートを見直し、「あ!そうだ!こういうことだったな!」と思い出しやすくするための手段として、板書を用いている。

このように、板書の中身どうこう考える前に、「自分の板書は役割は何のためか」をしっかりと決めることが大事だ。


参考までに、私が「復習しやすいノート」になるよう工夫している点を述べておく。

ここでは「板書」のみの私の工夫について書いているが、それ以外の「生徒に板書を取らせるときの工夫」や「板書を上達させる方法」は記事の後半で紹介していく。


白チョーク(黒ペン)以外は3色まで

生徒が3色より多くのボールペンを持っていない可能性があるので、私は色チョーク(色ペン)は3色までしか使わない。数学という科目においては、さほど色分けは多くなくて良いと思っており、極端な話「黒と赤」だけのノートでもどうにかなると思う。あとは、視認性の問題で、一応私は以下のように意識しているが、わりかし適当な部分もある。

<黒板&チョーク>

白:メイン(基本的に文字は全て白で書く)

黄:下線、囲み線(黄で字を書くことは少ない)

赤:下線、囲み線、装飾(黄一色だと見づらい際に使用)

青:まとめ項目の下線(ほぼ使わない。黄、赤だけだと彩に欠ける時に使う)


<白板&マーカー>

黒:メイン(基本的に文字は全て黒で書く)

赤:下線、囲み線(赤で字を書くことは少ない)

青:下線、囲み線、装飾(赤一色だと見づらい際に使用)

緑:まとめ項目の下線(ほぼ使わない。赤、青だけだと彩に欠ける時に使う)


生徒は赤ペン1本さえあれば足りるのだが、後から復習した際の視認性の観点でこのように使い分けている。

学年が上がるにつれて、色の使い分けは少なくなっていき、高3で入試問題の解説などをしているときは、ほぼ白、黄チョーク(黒、赤マーカー)しか使わないこともある。

学年が低い場合は、見やすさ、わかりやすさが重要なので、結構カラフルな板書になる。

 

写真1枚目は中1の導入授業、写真2枚目は共通テストの解説。導入授業の場合、結構カラフルになる


生徒のノートの完成形をイメージする

私は、黒板を分割して使用している。だいたい指示棒をマックスで伸ばした分の幅(約120cm)で区切っている。

これで、だいたい生徒のB5ノートの1ページの半分くらいの幅になるようになっている。

生徒がノートの真ん中に、縦に線を引けば、ちょうどその幅で黒板の一段落分が収まるようになっている。




他にも吹き出しなどを用いて、解説の「本文」なのか「補足・イメージ」なのかがわかるようにしている。


余白を多く作る

ノートになるべく余白が残るように板書を意識している。これは、後ほど生徒から「ここの部分がわからないんですけど」と質問が来た時に、そのノートに直接補足事項を書き込めるようにするためである。

あと、特に低学年(中学生など)の生徒は、ノートが勿体無いのかギチギチに詰めて書く傾向にある。

ノートで大事なことは、節約することより読みやすくすることなので、あえて板書で多く余白を取り、生徒にそのまま板書させるようにする。



02. 板書は本当に必要なのか

そもそも、板書は必要なのだろうか?わざわざ黒板やホワイトボードに講師がメモを取り、それを生徒が写すというのは、非効率的なのではないか。

事前にプリントやスライドを用意することで、板書の時間を減らすことができ、より生徒が効率よく学習できるのではないだろうか。

結論から述べると、

板書を用いる方が、最も効率の良い授業ができる

と、私は考えている。ただしこれは、講師自身が考える授業の役割などによって、大きく変わる部分もあると思う。あくまでも「私は」だ。

その理由を2つ述べる。


イレギュラーに弱い

私も「板書って非効率的なのでは」と思った時期があった。講師をはじめた19、20歳の頃である。

私の先輩講師に「板書プリント」というプリントを作っている、すごい算数の先生がいた。

膨大な量のプリントで、まさに自分の板書内容を全てプリントにして生徒に毎回配付していたのだ。

生徒は「授業を聞くこと」に集中させ、板書をノートに取らせない。生徒がペンを動かすのは問題を解く時だけ。

このスタイルを初めて見た時「なるほど!」と思い、すぐに真似をしてみた。


結論として、私の授業ではうまくいかなかった。正確にいうと、学力の高いクラスにおいてはそれなりに効果があったが、学力が高くないクラスにおいては、定着率が異様に悪く感じた。

どれだけ入念に準備し、プリントを作っても、思わぬところで生徒が躓き、補足が必要になる場面がある。事前にプリントを用意し、それに全てを依存する場合、想定外やイレギュラーに弱い。


これは、パワーポイントなどでスライドを利用する場面でも同様のことが言える。途中で編集するのがものすごく大変なのだ。

こうした経緯から、私は事前に板書内容を全てメモしたものは配付しない。スライドを使った授業も(スタディサプリの授業などを除いて)使用する事は無くなった。


「流れ」が意識できない

プリントやスライドというのは、既に完成形であることが多い。「穴埋め式のプリント」にしたり「アニメーションを用いたスライド」にすれば、多少の流れは作ることができるが、それはいわばトビトビの情報で、コマ送りのような状態だ。

生徒と一緒に考え、一つずつ思考を進めていくには、板書のように共に流れを追っていく方が効率が良い。


上記の2点から、私は板書をメインツールとして授業を進めているが、ただ、例外として次の2つは配付することがある。

① 図形が複雑な問題の、図形のみを書いたプリント

複雑な図形を板書すると、生徒がそれを写すときに凄く時間がかかる。間違えて写すことも少なくない。そこで、複雑な図形問題を解説するときは、事前に図形をプリントアウトしておき、それに板書内容を写させるようにしている。

これは、解説の時間が長く取れない授業(イベント授業など)でも効率的に授業ができるので、よく活用している。


こちらのプリントは、中学3年生向けの授業で使用したプリントである。生徒はこれを切り取り、ノートに貼ることで図を書く時間が短縮できる。


こちらは、イベント授業で用いたもの。上段は生徒が解くときに用いる図で、下段は解説を書き込む際に用いる図。

イベント授業などはノートを持参していない子も多いので、教材にメモ欄を設けるのだが、その際に図も入れてあげることで、授業が効率よく行える。


② 計算や記述が多い問題の解答プリント

入試問題演習などをしていると、解説が非常に長くなることがある。当然、板書の量も増える。

ただ、入試問題の解説で重きを置かないといけないのは、解答そのものではなく「どうやってその解答に至るのか」という道筋である。私は『思考のベクトル』と呼んでいるが、これに時間を割くとどうしても細かい解説や計算を書く時間が足りないことがある。

そのような時は、解説プリントを予め用意している。この解説プリントは、いわば模範解答のようなもので、ポイントや方針などを書いていないシンプルなものだ。生徒は、解答に至る道筋と大まかな解答の流れを板書で確認し、解答プリントで細かい点を確認するわけだ。

これは非常に効率が良いので、特に受験学年の授業では、毎回の授業で全問題の解答プリントを用意することもある。欠席だった生徒にとっても、ノートをコピーさせてもらい、この解答プリントを与えればどうにか追いつける。授業では「何を教えるか」と同じくらい「何を教えないか」を考えることが大切であり、それは板書においても言える。


この解答プリントに関して、よく「解答があると、生徒が授業を聞かないのでは」と疑問を持たれることがある。解答プリントは、解答が載っているだけであり、どうやってそれに至るのか、という『思考のベクトル』は授業でしか学べない。入試問題の「解答」だけを読んでも「なぜ、そのような解答に至るのか」という『思考のベクトル』が備わっていないと解答は再現できないのだ。

よって、生徒が授業を聞かないということはまずない。もしあるとすれば、それはその先生が解答プリントの解答をそのまま板書しているからだ。生徒も「だったら、わざわざ授業なんか聞かなくてもプリントを見ればいいや」と考えて当然である。



 03. 板書に夢中で、話を聞いていない生徒

年度はじめの授業で多く見られるのが、「板書をノートに写すこと」に夢中になるあまり、授業の大事な部分を聞き逃してしまっている生徒だ。

真面目な生徒ほど、この傾向は強い。

特に幼少期に親から「先生が黒板に書いたことは、ちゃんとノートに取るんだよ!」と言われていた子の中には、

(板書をしっかり取ること)=(授業をしっかり聞くこと)

だと思っている生徒もいる。


冒頭で「板書はあくまでもメモ代わりであり、あまり板書自体に重きを置かない先生もいる。」と述べたが、そういった「メモ板書」の先生方の多くは、まさにこの

「板書を取ることに夢中で授業をしっかり聞いていない状態」を危惧している先生が多い。

とにかく授業を聞くことに集中してもらいたいから、あえて板書を簡素なものにするわけだ。

特に、思考の流れが重要となる講義の場合は、ちゃんと授業を聞いてほしいので、この気持ちはよくわかる。


そうとはいえ、やはり簡素なメモ板書を写したノートの場合、生徒が復習する際に十分に役割を果たさない危険性があると思っている。

私自身、浪人時代に受けた現代文の授業がまさに「簡素な板書」だったのだが、復習をする際に解答を再現できなくて困った過去がある。

また、いわゆる「できると勘違いしている生徒」が、板書から自分なりにポイントを抽出し、メモのようなノートを取るというケースも少なくない。私も何度も見ている。ただ、そういう生徒の多くは、後日頓珍漢な質問に来たり、以前扱った内容が抜けていたりする。もちろん例外的に、講師の板書から必要な情報を抽出して効率の良いメモを取れる生徒も中にはいる。ただ、多くの生徒は丸写しさせた方が結果的に効率が良いケースが多いように感じている。


冒頭でも述べたが、私は基本的に「黒板に書いたものは全て写す」ように指示している。それは、上記のように後から復習しやすくするためである。

またノートに「書く」という行為そのものが、記憶の定着も助ける。


やはり、板書は大切なのだ。


そうとはいえ、プリント授業やスライド授業、メモ板書などに比べ、「板書に夢中で、話を聞いていない生徒」が生まれる確率は高くなる。

矛盾しているように見えるが、


「板書はしっかり取り、授業もしっかり聞く」


これが大切だし、当たり前のことにしていかないといけない。


そして、それは当然授業をする側が工夫をしなければいけない


それも含めて「板書力」なのだ。


そして、これは「生徒に話を聞かせる技術」も大切になってくる。これもまた、本サロン内で述べていきたいが、ざっくりポイントを掴みたい方はこちらの動画を参考にしてほしい。

それでは、具体的に、どのように「(授業を)しっかり聞かせて、(板書を)しっかり取らせる」のかを紹介していく。


04. 授業をしっかり聞かせて、板書をしっかり取らせる方法

私のように「自分の板書をできるだけ正確に写してほしい」と思う先生も、メモ板書の先生も、結局のところ

「しっかり聞かせて、しっかり取らせる」

ことが重要である。その際のポイントを書いていく。が、ポイントは実は1つだけで、あとはおまけだ。

板書単体ではなく、板書をどう取らせるのか、という点まで含めて「板書力」だ。

このポイントが、板書力の肝と言って良いだろう。

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