擁壁・崖地・急傾斜地について考える
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不動産投資の机上調査で「擁壁・崖地・急傾斜地」の存在は知っておくべきです。
利回りが高そうな土地や価格が妙に安い物件の中にはこれらの地形リスクが潜む物件が紛れています。
高低差が大きなエリアで多いです。例えば首都圏だと神奈川県に多いですね。
擁壁の状態により、
・建築確認が下りない。
・再建築時に数百万円〜数千万円の造成費。
・金融機関の融資が付かない。
・出口戦略が限られる。
など、投資として致命的な問題につながることがあります。
ぱっと見では気づきにくく、
図面にもほぼ書かれず、仲介会社も再建築時に必要な措置を把握していないケースが多いため、投資家自身が押さえておくべき重要なポイントです。
この記事では、擁壁や崖地をどのように読み解き、自分の投資判断にどう生かすのかを解説します。
擁壁・崖地・急傾斜地とは?
この記事では「擁壁・崖地・急傾斜地」という言葉をまとめて使いますが、それぞれ少し意味合いが違います。最初に用語をざっくり整理しておきます。
擁壁(ようへき)
斜面や高低差のある土地が崩れないように、「土を支えるために人工的に造られた構造物」です。
コンクリート・ブロック・間知ブロック・石積みなどが典型ですね。
土圧を受けて宅地を安定させるのが目的です。
評価ポイントは、構造(RCか無筋か)、排水、控え壁、所有者、築年数、建築確認の有無など。本記事のメインは、ほぼこの「擁壁」の話です。
崖地
一般的には「ある程度の高さがある急な斜面」を指します。
法律上は、「傾斜角度が30度以上」「高さが2m以上」といった定義で扱われることが多く、「擁壁付きの人工的な崖」も、「自然のままの斜面」も含みます。
この記事では、
・擁壁で支えられた造成地の崖
・自然斜面のまま残っている崖
をまとめて「崖地」と呼んでいます。
急傾斜地
「急傾斜地」は、日常語というより法律・ハザードマップの世界の用語に近いです。
典型的には、
・急傾斜地崩壊危険区域
・急傾斜地崩壊特別危険区域
など、土砂災害防止法に基づいて都道府県が指定する区域をイメージしてください。
擁壁がある/ないに関係なく、一定条件の崖・斜面が「崩落しやすい」と判断されると急傾斜地として指定されます。
指定された区域は、
・土砂災害警戒区域(イエロー)
・特別警戒区域(レッド)
と重なっていることが多く、建築や再建築に制限が掛かったり、構造を強化しないと建てられなかったりします。
擁壁・崖地・急傾斜地の何が危険なのか?
不動産投資において、擁壁(ようへき)や崖地・急傾斜地の評価は、机上調査の中でも重要ポイントです。これらは 収支悪化・資産価値低下だけでは済まない、命に関わるリスクを内包しているからです。
擁壁・崖地が危険と言われる理由
擁壁や崖地は、見た目にはただの段差やコンクリート壁に見えますが、以下のようなリスクが潜んでいます。
① 過去の造成が不明で、構造が信用できないことが多い
現在のように造成が厳しく管理されるようになったのは平成以降です。
昭和の造成地には、
・無筋コンクリート
・玉石積み
・排水設備なし
・控え壁なし
・図面が存在しない
といった行政の安全審査がされていない擁壁が大量に残っており、むしろこちらの方が多い印象です。
② 崩落すると人命事故につながる
擁壁の崩壊は、ただの建物損壊ではありません。
崖下の家を押しつぶす。通行人に直撃する。隣地まで巻き込むなど、重大事故に発展します。
行政が擁壁を厳しく扱うのは、この人命リスクのためです。
③ 建築・再建築が厳しく制限される
擁壁の安全性は、新築・再建築の許可に直結します。
・擁壁が古い
・安全性を証明できない
・所有者が不明
・行政図面が残っていない
といった場合、建築確認が下りず再建築不可扱いになることもあります。
表面利回りが高くても、出口で売れなくなる典型パターンです。
④ 補修・作り直しの費用が高額
擁壁の補修費用は100万円単位では済まず、桁が違います。
一部補修:100万〜300万円
擁壁全体の作り直し:500万〜2,000万円超
重機の搬入が困難な場所:さらに高額
擁壁は「気軽に直せる設備」ではありません。
⑤ 金融機関が嫌う(融資に影響)
金融機関は、以下のような物件を非常に警戒します。
・高低差が大きい土地
・擁壁が古い(特に昭和築)
・造成履歴が不明
・崖条例区域
明確に「融資NG」の銀行もあるそうです。
擁壁問題は、入口・出口ともに悪影響を与えます。
⑥ 安いから掘り出し物ではなく、安い理由がある
擁壁・崖地の物件は相場より大幅に安く出ていることが多いです。
しかし、その理由は明確で、
・安全性の証明ができない
・建築制限がある
・擁壁修繕に大金がかかる
・金融機関が嫌う
・出口戦略が限定される
という 構造的なマイナス要因があるからです。
表面利回りだけ見ると高く見えてしまうため、初心者が最も引っかかりやすい領域です。
しかし、多くの投資家は「擁壁物件はNG」と考えているため、極端にお買い得な物件が存在するのも事実です。擁壁・崖地・急傾斜地でも、知識と運営、出口に自信があれば、お買い得物件にもなり得ます。
私は過去に崖下(すごい崖下)のシェアハウス2棟、現在上下擁壁の2棟アパートを持っています。
擁壁・崖地・急傾斜地は机上調査で確認しておくべき分野
多くの投資家は、立地や利回りに目が行きがちですが、擁壁・崖地は買付を出す前に、最初に見るべき項目です。
・擁壁の種類
・行政の審査歴(建築確認・開発許可)
・所有者
・崖条例
・再建築可否
・ハザード(急傾斜地・土砂災害)
これらは図面や航空写真、法務局資料、ネット調査だけでもある程度の判断ができます。
もちろん、現地調査・役所調査ではさらに詳細に確認します。
擁壁・崖地は「知識がないと地雷」「知識があれば扱える」
擁壁や崖地は、知識のない初心者にとっては最大級の地雷ですが、
・造成履歴
・行政審査
・擁壁構造
・所有者
・条例
・再建築性
・修繕費の想定
これらを理解していれば、むしろ価格が安いため利幅を取りやすい物件にもなります。
つまり、危ない擁壁を避け、安全な擁壁を安く買えるかどうかが腕の見せ所です。
本記事では、この「擁壁・崖地・急傾斜地」の机上調査方法を体系的に解説します。
建築確認・開発許可の有無
擁壁の安全性を判断するうえで最も重要なのは「その擁壁が、行政の審査を通って造られたものかどうか」です。
建築確認や開発許可を受けて造られた擁壁か?
それとも、何の審査もなく勝手に造られた擁壁か?
という違いです。
建築確認・開発許可を経て造られた擁壁は基本的に安全性が担保されている
行政の許可を受けて造成された擁壁には、
・構造計算(壁厚・鉄筋量・控え壁の間隔)
・排水構造(裏込め材・水抜き穴)
・地耐力の調査
・施工管理
・完了検査
・検査済証の発行(造成工事として)
といった厳格なチェックが行われています。
そのため、こうした擁壁は耐震性、排水処理、土圧への抵抗性、長期使用を想定した耐久性が規格通りに確保されています。
もちろん老朽化はしますが、少なくとも 設計上の安全基準は満たしていると考えられます。
問題は「建築確認なし」「開発許可なし」の擁壁
最も危険なのは、
昭和の造成地で建築確認 / 開発許可なしで造られた擁壁。
これです。
昭和の宅地造成では、
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