vol.8 孤独な夜に明暗を分けるのは、手を伸ばせる先があるかどうか

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vol.8 孤独な夜に明暗を分けるのは、手を伸ばせる先があるかどうか
特殊清掃の密着取材を行った時に出会った孤独死の現場で、忘れられない部屋がある。
その頃はコロナ騒動の真っ只中で、誰もが孤独死と隣り合わせだったから、余計に身近に感じて、脳裏に刻まれたのかもしれない。

特別、ひどい状態の部屋だったわけではない。
むしろゴミは綺麗にまとめられ、まるで死期を悟っていたかのように部屋は綺麗に片付けられていたし、近隣からの「匂いに対する苦情」が原因で発見されたのが信じられないくらい死臭はわずかで、害虫も見当たらなかった。

今までに見てきたどの現場よりも綺麗で、グロテスクではなかった。
それなのに、そこに入った時、今までに出会ったどの部屋よりも猛烈なエネルギーを感じたのだ。
むわっとした蒸気の中に、孤独が溶け、液体になり、そしてその液体が蒸発して部屋中に充満しているような気配を感じた。
じっとりとした湿気をあびるたび、それはまるでそこに住んでいた誰かの孤独が、身体中に張り付いていくようだった。

その部屋に住んでいたのは、高齢者の女性。一人暮らしだったという。
ワンルームの古びたアパートの一室。部屋の奥にある布団の上に、彼女の溶けた跡があった。
死因は、餓死だったらしい。その証拠に、布団の上に溶けた脂肪は、一般的なものと比べて控えめだった。溢れるだけの水分が、体に残っていなかったのだ。

冷蔵庫も、空っぽだった。米びつには数粒の米。
シンクの中には随分前に開けられたであろう、パックのご飯の抜け殻が重ねられていた。

彼女は、動けなくなるギリギリまで丁寧に暮らしていたようだった。
週に一度のデイサービスに持っていく手提げカバンの中には、几帳面に折り畳まれた替えの服が入れてあったし。キッチンのシンクに重ねられていたちらしの裏を使ったメモ帳には、近所のスーパーやかかりつけの医師の電話番号が、綺麗な字でメモ書きされていた。

机に向かって置かれている椅子の背もたれに、ピンク色のカーディガンがかけてある。
いつもここに座っていたのだろうなと想像していると、ふとその机の上に、三冊束ねられたノートが目に入った。
そっと開いてみるとそれは彼女の日記帳で、何年も前から欠かさず、毎日一行ずつ、日々が記録されているものだった。

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