ヒロインキャラを記号化させないためには?キャラクターの魅力の出し方
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この記事の作者はプロのラノベ作家です。
Q.キャラクターの魅力の出し方について。
新作をノベラボのガチ勉強会に出したところ、プロ作家の方たちか一様にヒロインキャラが記号化しているという指摘を受けました。
ひとつの仮説として、原因は
①1万字以内でキャラクターの魅力を出すのが難しい。
②ヒロインキャラを一気に出しすぎている。
③テンプレ展開のための役割に徹しさせて過ぎたためではないか? キャラクターの心情変化に納得がしにくい。
ためかな?と考えています。
今まで、書籍化されてうまくいったケースだと
①この作品のメインヒロインは、このキャラとバシッと最初に提示している
②ヒロインキャラの好感度は最初からほぼマックスで、なぜマックスなのかの理由付けがされている
パターンが多かったように思えます。
ヒロインキャラの魅力をすぐに感じ取れない原因の一つは、そのヒロインから主人公への好感度が低いせいなのではないか?
と考えています。
極論すると、
ヒロインキャラの魅力とは
①主人公のことを溺愛している。
②そのことを過剰演出で伝える。
③なぜ溺愛しているのか? その心理に納得ができる
の3つの要素から成立しているのではないか?と考えています。
ここは実は読者の男女差はなく、異世界恋愛と共通しているような気がしています。つまり、大前提として溺愛が弱いと、魅力が低くなります。
ヒロインキャラを最初に一気に出しすぎるデメリットは、それぞれを深堀りできずに、溺愛の過剰さが伝えにくくなることかと考えていますが、この分析は合っていますでしょうか?
A.この質問に対する回答は、その著者が何を目指しているかによって変わってくると思われます。場合によっての個人的に思う回答を示すので、あてはまるパターンをご参考ください。
【1】とりあえずwebから書籍化を目指したい(書籍化さえ達成できればまずはそれだけでもよい)場合
この場合、ヒロインが記号化することは全く怖かる必要性はありません。
記号化というのは言い換えると「形式に当てはまった、広くよく見られがちな記号的要素」という意味になるかと思われます。
しかしweb投稿小説の世界においては、これ自体は全く悪い事ではありません。
例えば『主人公が悪役令嬢(悪役貴族)としてゲーム世界に転生したあと、人を助けてしまってその善人性が周りから認められて主人公のことを好きになる人が現れる』といった構図は優秀なテンプレートの一つとして好まれますが、根本的に考えればそもそもこの構図自体が「形式に当てはまった、いろんなところでよく見がちな記号的な構図」、すなわち記号的な存在であり記号的脚本です。
誤解を恐れず言えば、web小説の世界はどれだけ正確に『記号的なテンプレート』を再現し、それに反した要素を入れないかが重要な世界であり、記号をうまく再現できれば一定の評価がついて必ず書籍化の話はいつか来ます。
『主人公のことを無条件に愛しているヒロイン』や『テンプレート展開を進めるためにあるあるな言動しかとらないヒロイン』はおおむね"記号的"ですが、読者の方々はそういったヒロインを「こういうのでいいんだよ」のような姿勢で意外と受け入れてくれるので、
最初は自分の作品が誰かから「記号的ですね」と言われたら、テンプレートをうまく使えているんだという誉め言葉として受け取ってもいいとまで考えてしまってもよいと思います。
※ただし、「記号的ですね」ではなく、「このキャラクターおかしくないですか?」と言われたら、それは修正をした方がいいかもしれません。
具体例をあげると、
例えばゲーム的ファンタジー異世界で、一人の悪役貴族がヒロインをいじめていたが、その悪役貴族の身体にある日主人公が転生し、「俺はゲームの悪役貴族に転生してしまった!」というシーンから始まる作品があったとして、その主人公をヒロインが無条件溺愛するというのは『記号的』ではなく『明らかにおかしい』状態です。
読者目線、「なんで今までいじめられてた悪役貴族のことを好きだって言えるのか。中身が主人公になったことは知らないはずなのに」となってしまいます。この場合、当たり前ですがその主人公が転生した悪役貴族が、一回何かでヒロインを助けるというシーンを加えるという工事は必須になります。
[2]コミカライズ化やアニメ化がはねなければ意味がない(コミカライズ化やアニメ化でのヒットが狙えないのであれば書籍化の声が出版社からかかっても全く意味なんてない)と考える場合
この場合、他人から「ヒロインが記号的ですね」と言われることは少し深刻に受け止める必要があります。
何故ならこの場合、そのヒロインに個性がないと判定されているからであり、これはキャラクター性の不足を表しています。
webからの書籍化でコミカライズ化やアニメ化ではねることを狙う場合、キャラクター(特にヒロイン)は、『主人公のことを溺愛している』かつ『主人公のどの点に惚れたかが明確(とりあえずかっこよくて好きになった、が許されない)』かつ『少し変な個性があってそれが読者にとって面白い』という3本柱が必要です。
とりあえず書籍化だけできればいいという場合この3本柱を意識する必要はあまりなく、『主人公のことを溺愛している』という1本目の柱さえちゃんと作れていれば意外と何とかなるという背景があります。
しかしこれがコミカライズ等小説以外のところに飛び出していく形になると、読者からの評価基準が『テンプレートをしっかり再現できていること』から『キャラクターに魅力があること』へと変化していきます。
この時、1本柱だけではキャラクターの魅力を演出しきれないことが多いです。そして「記号的である」とは、言い換えると「1本目の柱はちゃんと立ってるけど3本柱としては立ってない」という状態であることが、とても多いです。
しかし難しいのは、3本柱を立てようとするとどれに集中してよいのか分からなくなり、結果的に1本もちゃんと立てられなかったいう状態に陥るかもしれない点です。
なので以下は個人的なおすすめにもなりますが、まだwebからの書籍化を経験されていない方は3本柱の話を完全に忘れてまずは1本だけ立てることを意識し、逆に1本目の柱は無意識にでも立てられるとなった人は2本目3本目の意識をそこで初めて行うというのでもいいのではないかと考えています。
……上記を全て踏まえた上で、「ヒロインキャラを最初に一気に出しすぎるデメリットは、それぞれを深堀りできずに、溺愛の過剰さが伝えにくくなることかと考えていますが、この分析は合っていますでしょうか?」というご質問にお答えすると、
・ヒロインキャラを最初に一気に出しすぎると、一人につき3本の柱を立てる必要があるので、3人出て来ただけでも計9本の柱を立てなければいけなくなり、これがそもそも厳しい
・ヒロインキャラを出し過ぎることにより「溺愛の過剰さ」が伝えられないことも当然デメリットではあるが、うまく「溺愛の過剰さ」を出せていたとしても今度は「なんでこんなに過剰に溺愛してるの? 主人公を無条件に愛するヒロイン像としてあまりに記号的では?」と疑問を持たれる可能性が高く、記号的であることの解決になっていない。(記号的であることの脱出方法が3本柱を作ることなので、そもそもこの3本を作ってから『溺愛度』を演出しないと意味をなさない。ただとりあえず書籍化すること自体が最終目標であれば、1本柱でもいけることがあるのでこれはあまり気にしなくてOK)
という回答になると思われます。
2024年7月17日に作成した記事
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