《 本日のごのへのごろく 「人前が 苦手な自分に サヨウナラ」》
前回の更新から間が空いてしまいまして、大変失礼いたしました。お時間をいただき、おかげさまで初めての著書を出版するにいたりました。5月11日発売、『人前で輝く!話し方』(自由国民社)という本です。これまでのトーク編で連載しているような内容に加え、会議や朝礼、プレゼンや面接など、“人の前で話す機会”に特化して、対策方法を書きました。連載『ごのへのごろく』トーク編第38回、今回は「『人前で輝く!話し方』番外編」です。
■子供の頃から日本人は人前が苦手■
日本人は、中学3年ですでに7割もの子が「人の前で話すことが嫌い」とアンケート調査に回答しています。本『人前で輝く!話し方』では、なぜ日本人は人前で話すことが苦手なのかを分析し、今から自分でできることをまとめました。
■「しゃべり」と「読み」の違い■
「話し言葉」と「書き言葉」の違いについてまとめた章は、特に反響をいただきます。このコラムも、やや“話し言葉より”で書いていますが、基本的には「書き言葉」。自分の文章ですが、このまま読むのは至難の業で、「話している」というより「読んでいる」印象になります。
うまく読むためにはナレーションの技術が必要になり、そうでなければ“棒読み”になってしまうということ。対策として、人前で話す時に用意する原稿を「話し言葉」で書くという方法を提案しています。(この連載では2017年3月更新・トーク編第13回で触れました)
■特にこだわった「声」のお話■
また、今回の本は特に「声」についてこだわって書きました。ボイストレーニングの入り口に、「筋膜リリース」をおすすめし、筋膜リリースの第一人者である竹井仁先生に監修していただきました。そして、このコラムでもおなじみ、声と脳の専門家・山崎広子先生に取材した内容もまとめています。
■良い声=オーセンティックボイス■
山崎先生が行った意識調査によると、日本人は8割もの人が、「自分の声が嫌い」と回答しています。「自分の声が良くなるはずがない」と思っている方も多いように感じます。しかし、声帯に負荷をかけず、それぞれが本来持っている元々の声が出せれば、誰でも良い声を出すことは可能です。その本来の声のことを専門用語で「オーセンティックボイス」といいます。
「オーセンティックボイス」は“楽に出せる声”であり、“出しやすい声”です。ただ、やっかいなことに“出し慣れた声”とは違う場合が多々あります。トークのボイストレーニングとは、「オーセンティックボイス」を見つけて、磨いていくことなのです。
■今すぐできる!声を磨く方法■
見つける方法、本の中にもいくつか書きましたが、私が今改めて思うのは、「見つけられない」あるいは「わからない」と思う方は、何はともあれ、声を“磨くこと”から取り組むのも手だと思います。磨く方法、本では後編にまとめている、滑舌のトレーニングです。(このコラムでは2017年2月更新・トーク編第11回をご参照ください)
よくある早口言葉をゆっくり言うのも楽しいですよ。それでは一緒に声に出してみましょう!
「東京特許 許可局 許可局長」
「この竹垣に 竹立てかけたのは 竹立てかけたかったから 竹立てかけた」
「新設 診察室 視察」
声は死ぬまで付き合っていかなければなりません。オーセンティックボイスを身につければ、それは自分の最大の味方で、最強の道具となります。ぜひ、見つけて、磨いてください。
「第61回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)
【参考図書】
山崎広子先生の著書『8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声』(角川新書)、『人生を変える「声」の力』(NHK出版)、『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』(NHK出版新書)。
◆山崎広子(やまざき・ひろこ)
国立音楽大学卒業後、複数の大学で音声学と心理学を学ぶ。音が人間の心身に与える影響を、認知心理学、聴覚心理学の分野から研究。音声の分析は3万例以上におよぶ。また音楽・音声ジャーナリストとして音の現場を取材し、音楽誌や教材等への執筆多数。「音・人・心 研究所」創設理事。NHKラジオで講座を担当したほか、講演等で音と声の素晴らしさを伝え続けている。