誹謗中傷で傷つけているのは自分自身〜五戸美樹のごのへのごろく〜

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誹謗中傷で傷つけているのは自分自身〜五戸美樹のごのへのごろく〜

《 本日のごのへのごろく 「やべーうぜー その音の響き 大丈夫?」》


5月に急死した女子プロレス選手の木村花さんに対し、SNS上で誹謗(ひぼう)中傷を書き込んだ人たちが「死に追いやってしまった」と思い悩んでいるというニュースがありました(7月14日、毎日新聞)。「情報開示を受けたら逮捕されるのではないか」と心配している人もいるそうです。そのように、のちに後悔することになる誹謗中傷の書き込み。実は、自分の身体へのマイナス影響もあります。トーク編コラム「誹謗中傷は自分をも傷つける」。

 ■私が受けた誹謗中傷■

木村花さんが受けた誹謗中傷とは比べものになりませんが、私も不愉快なリプライやコメントをもらうことがあります。たとえば、ラジオの生放送を終えた後に「最低(むかむかマーク)」「二度と聞かない(むかむかマーク)」「五戸美樹はまるで駄目だコリャア(むかむかマーク)」といったリプライを送ってくる方がいます。

このリプライを送る方は、複数のアカウントを持ち、複数人を装っていますが、同じ人が一人で送っていることがわかっています。他のリスナーさんやフォロワーさんが、Twitter社に「報告する」というボタンを押してくれているようで、度々アカウントが消されているのですが、その度に新しいアカウントを作り、攻撃的なリプライを送ってきます。

「二度と聞かない」と書き込まれてはいますが、毎週律儀にラジオを聞いてから攻撃コメントを送っているようなので、自分のことを見てほしいという、いわゆる“かまってちゃん”のようにも感じ、なるべく刺激しないようにしていたのですが、先日「以前の面影が失くなり激ヤセ。芸能界の薬の誘惑が心配です。」と私の写真付きでつぶやいているのを見つけてしまいました。自分でリツイートして拡散しようとしているようだったので、さすがに困ってしまい、弁護士の先生に相談をしました。

結局、全く拡散されなかったので、特に物理的な被害は受けていませんが、疲労は大きく、SNSによる言葉の攻撃について、身をもって感じる機会となりました。

 ■言葉と音の響きの関係■

言語は、言葉と音の響きが密接に関係しています。特に日本語はその傾向が大きく、擬音語・擬態語には顕著に表れます。雨の表現でも、「しとしと」「パラパラ」「バラバラ」など、それぞれ音の響きだけでなんとなく意味がわかります。他にも、「じめじめ」は音の響きだけでなんとなく湿度が高そうですし、「カラッと晴れる」は音の響きだけで湿度の低さが伝わります。

これは擬音語・擬態語に限らず、いわゆる「汚い言葉」は「汚い音の響き」となります。例えば、「気持ち悪い」と「きもっ」の音の響きを比べてみてください。「きもっ」のほうがなんとなく“嫌な感じ”がしますよね。また、「汚い言葉」を使う時、口調もきつくなる場合がほとんどです。「死ね」「うぜー」などを穏やかな口調で使う人はあまりいません(穏やかに言われたらそれはそれで怖いですしね)。誹謗中傷の言葉は、音の響きと口調によって、説明不要の“嫌な感じ”になるのです。

 ■人は自分の声を聞いている■

この“嫌な感じ”は本能です。聴覚は本能と繋がっており、なんとなく聞こえただけの音についても、「好き」や「嫌い」を無意識裡に判断しています。それは、他の人が話した声だけでなく、自分の声に関しても同じです。人は話す時に必ず自分の声を聞いているからです。

つまり、自分で「死ね」「うぜー」と言うと、それをそのまま自分で聞くことになり、「嫌だ」「辛い」といった感覚が蓄積されていきます。自分のことが嫌になり、自身への身体に影響を及ぼすことも容易に想像できます。

黒板で爪をとぐ「キーッ」という音、ほとんどの方が「嫌だな」と思いますよね。その音を四六時中聞いたら、具合が悪くなると思いませんか。

 ■誹謗中傷で傷つけているのは自分自身■

この現象は、しゃべった時に限定されると思いきや、人は文字を打ち込む時にも、わずかに声帯を動かしていることがわかってきました。つまり、スマートフォンでSNSに「死ね」と書き込む時、「死ね」ときつい口調でしゃべっているのに近い状態になるのです。それは自分の脳に刻まれます。

つまり、相手を攻撃するためだったとしても、その誹謗中傷、実は無意識に自分の身を滅ぼしているのです。

表現の自由は権利ですし、人それぞれ何を思うのかは自由ですが、誹謗中傷は相手を不快にさせるだけでなく、自分をも傷つけていることを、ぜひ知ってほしいなと思います。


【五戸美樹】(コラム「第83回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)(題79回までは日刊スポーツコムに掲載し、オンラインサロンのライブラリに抜粋。第80回以降ライブラリにのみ掲載)


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