【連載1/3】人命救助のプロ?緊急援助隊の課題

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【連載1/3】人命救助のプロ?緊急援助隊の課題

はじめに

 被災された皆様の早期復興をお祈り申し上げます。

ボランティア活動へ向かった経緯

 今回FTETの管理人である私は、消防ボランティアチームのひとつであるDGR.119のメンバーとして2/15~2/17の3日間ボランティア活動に参加しました。その中で技術系NPOとして活動されているDRT JAPANの皆様から伺ったこと、私自身が感じたことをこの記事ではまとめていきます。

それで良いのか緊急援助隊

 今回の震災対応は各機関多くの課題が生まれたと思います。

①機関員のスキルと車両の選定

 
 今回の地震で問題になったことのひとつとして、消防車両が現地に到着するまでに時間がかかったことがあげられるでしょう。特に幅と高さが大きく低床の大型消防車両は足手まといとなり、そもそも被災地に入るまでに時間がかかったほか、倒壊した建物によって狭い道幅を抜けられなかったという話を伺っています。

 ここまでは正直、管理人としても仕方がないかと感じてしまう部分がありますが、今回被災地にて衝撃的な話を伺いました。10㎝の切り返しができないから数百mをバックさせたというものです。その消防車両の後ろには様々な車両もいました。それらもバックさせています。機関運用で車両運転は胆です。普段から訓練していないから切り返しができないと判断したのだと思います。人命救助のために向かった消防隊がこれでは足手まといです。自信がないと感じたら訓練をしましょう。


(狭い道路を通行しなければならない写真:DRTJAPAN)

②ことなかれ主義と使われない重機部隊

 今回の災害では複数の重機部隊が出動しています。しかし、本当に必要な場面では活用されずにピカピカのまま、被災地から帰署した隊が多いようです。
 倒壊建物が道を塞いでいる場合、消防車両や救急車両、災害支援車両などを通すためには道を啓開しなければなりません。このとき力を発揮するのが重機です。一般市民の方にとってはなぜ使わないのかと疑問に思うことでしょう。ここには消防特有のことなかれ主義があります。

 ・もし事故が発生してしまったら? 
 ・重機に傷がついてしまったら?
 ・重機を利用したことでの破損した建物の責任は?など

 例にあげたこれらの責任を追いたくない。また、各地域の重機隊がどれだけのスキルを持っているか分からないから不安だ。もしなにかあれば意思決定をした自隊が責任を負うことになる。人命救助ではなく、責任を取りたくないというところにフォーカスすればもっとも合理的な判断は「待機」になります。
 消防は縦の組織です。その重機隊がどれだけ訓練を積んでいても意思決定権を持つ上の部隊が「待機」と命令すれば「待機」になります。
 
 今回のボランティア活動では重機を多用していました。どの重機もピカピカなものはありません。重機というのはそういう激しい活動をするものです。少なくともバケットや爪がピカピカな消防重機は訓練をしていない証拠として見ても良いかもしれません。

 また、こういった状況に対して待機を判断した部隊へ質問したところ「消防とはそういう組織だ。言っても無駄だ。」という返答をいただいたそうです。人命救助をする緊急援助隊は言っても無駄ではなく、その状況を変えるために動くことも仕事ではないでしょうか?また、各隊の力量を知ることも上に立つ者の仕事だと管理人は考えます。


(道路を開通するのも人命救助に直結する作業だ。写真:DRTJAPAN)


(大隊の待機命令により使われず帰署する重機隊。写真:DRTJAPAN)


(道路啓開作業を行うDRT千葉。写真:DRTJAPAN)


(消防の重機もあればもっと早く作業は進んだだろう。写真:DRTJAPAN)

③隊員の知識とスキル不足

 木造建物が倒壊したことにより、柱や梁(はり)に挟まれた要救助者を救う現場が多かったと伺っています。この時に力を発揮する道具は「チェーンソー」です。普段からチェーンソーの訓練をしていた部隊は災害現場において多くの人命を救えたと伺っています。

 ここで質問です。皆様はチェーンソーのエンジン始動をするさいに地面に置いて始動しますか?こう聞くと「その通りだ」と答える方が多いのではないでしょうか?実際に私も現役のころは地面に置いて始動していました。しかし、災害現場に安全な平地はありません。状況によっては地面が濡れていたり、泥まみれな場所もあります。そうすると置いて始動することしか知らない隊員は、エンジンをかけるために平地を探すことになります。実際に一刻を争う現場で隊員を平地に走らせていた部隊もあったようです。これが人命救助のプロなのでしょうか?いっそのことバッテリータイプに切り替えることも手段のひとつかもしれません。


(Instagramのストーリーにて1000名近くが回答したアンケート)


(こんな足元で無理やり下に置いて始動するのか?事故の元。写真は例)


(たち掛けはチェーンソーを使うなら必須のスキルだ)

 また、建物構造を知らないために足を置いてよい場所、置いてはいけない場所。チェーンソーなどで切って良い場所、切ってはいけない場所。安定化の方法などなど。これらを理解できておらず危険な活動をされていた部隊もあったようです。上記は勉強すれば完璧でなくともある程度判断できるようになります。勉強しましょう。根拠のない直感は危険です。


(どこに足を置いてよい?)

管理人が伝えたいこと

 管理人も辞めてから建物構造やチェーンソーの取り扱いなどなどを知りました。現在皆様に共有している知識は辞めてから様々な業界を歩いたことで学んだものです。恥ずかしながら現役消防士のころは一切知りませんでしたし、できていませんでした。現職で特に若い方にはこのような状況も多いと思います。しかし、現在は消防職員として必要な知識やスキルを学ぼうと思えば全国に様々な環境があります。年齢は関係ありません。ぜひ一歩踏み出してみてください。今回のボランティア活動に参加されている多くの消防職員は活動しながら災害現場でのチェーンソーの取り扱いや重機の取り扱い、建物構造を学んでいました。

 なによりも今回の一件であなたの所属する自治体が被災した場合、人命危険が迫るような本当に緊急援助隊が必要な場面で部隊が機能しない可能性があることが浮き彫りになったと思います。つまり、本当の意味で「あなたの管轄する自治体の市民の生命を守れるのはあなたの部隊だけです」。自分の管轄する市民の生命を守るために訓練をしてください。これには服の色は関係ありません。人命救助のプロとして学びそして訓練をし、災害に向けて準備をしましょう。

 私は私ができることをしていきます。

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