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【記事】倒壊建物を利用した救助訓練が珠洲市にて開催!そこから学ぶことと

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【記事】倒壊建物を利用した救助訓練が珠洲市にて開催!そこから学ぶことと

■はじめに

 技術系NPOとして様々な災害現場で活動するDRTJAPANが主催となり、6月10日、11日に「倒壊建物を利用した救出研修会」が開催されました。FTET管理人は11日に取材に行ってまいりましたので記事としてまとめていきます。


(県内外から学びに来た消防士。写真:FTET)

■まずは座学から

 11日は石川県内を中心として40名程度の消防職員が参加しました。午前中は共通認識を深めるための座学からスタートします。DRTJAPAN黒澤氏が震災直後の状況を話しつつそれぞれの資機材の特性や活用方法を伝え、DEF東京の鈴木氏が建物構造の説明をしていきます。


(シンプルな資機材が災害現場では活躍する。写真:FTET)

 例えばチェーンソーの場合は地面に置かないで始動する方法(通称:またがけ、たちがけ)から始まり、建物の梁(はり)切断の仕方、切断する際の注意点などなどが話されていました。どうしても消防としては消防救助操法で止まってしまう場合が多く、現場対応を踏まえた訓練ができていない場合も多々あります。チェーンソーはあるけど実際に木材を切断したことがないという方も少なからずおられると思います。消防救助操法はあくまでも基礎であり、積載されている道具を使いこなすためには基本と応用を踏まえた座学と訓練が必要だと改めて感じました。


(時には座ってエンジンを始動するしかない場面もある。写真:FTET)

 さらに共通認識の重要性を感じました。例えば「垂木を切って」という指示が伝わるのは「垂木」について隊員間で知っているから切断を行うことができます。これが良くわからず返事だけして「はい!」と「母屋」を切断すれば倒壊の危険が一気に高まります。木造軸組工法に関係する全ての名称を覚えることは難しいかもしれませんが、代表的な名称は隊員間で確認しておく必要があると強く思いました。余談ですが分からないことは分からないと言える関係性は大切です。大きな事故につながります。


(僕も作ろう。写真:FTET)

■倒壊建物を利用してリフティング訓練を実施

 座学終了後は実践です。能登半島地震によって倒壊した建物を使わせていただき訓練が開始されました。使う資機材はチェーンソー、爪ジャッキ、バールなどです。これらを利用して建物の梁(はり)を上に持ち上げる訓練を行います。クリブ(適度な長さで切断した角材)やウェッジ(ドアストッパーみたいなもの)など安定化のために使われる木材は倒壊した建物からの調達です。そう考えると「ものすごくシンプルな資機材」で重量物となる柱や梁から身体の挟まれの解除(クラッシュ症候群の疑いがあれば医師の指示のもと)を行うことができることが分かります。


(地面に設置していた梁をシンプルな資機材で上にあげることができる。写真:FTET)
 
 少なくとも倒壊建物からの人命検索ではなく、「倒壊建物からの救出」であれば派手な資機材よりも地味でシンプルな資機材が生きる場面が多いことが分かります。このようなシンプルな資機材であれば救助隊か否かに関係なく訓練をすれば誰もが活用できます。消防団や自主防災組織でも可能でしょう。積載スペースもそこまで場所を取りません。特に木造軸組工法の古い建物が多く存在する自治体では町ぐるみで準備し、訓練することも必要だと考えます。


(これらの道具は最低限揃えておく必要がある。写真:FTET)

■隊員をこの建物に進入させられるか?

 リフティングの訓練の中でDEF東京の鈴木氏が語りかけた言葉です。状況は下記の写真の通りで建物の中から「助けて」と声が聞こえます。一個小隊4名がいる。という想定です。一人ひとり消防士に質問していきます。



皆様はどう感じますか?

 消防士として声が聞こえるのであれば進入したいと考えるのは当たり前です。ですが、余震が続くなかの活動です。建物の中に進入という判断を取るためには正確ではなくても「建物がどのように崩れる可能性があるか?」「他へ進入経路はないか?」「隊員に任せられるか?」などの判断が迫られます。その判断をするためには木造建物の知識であったり隊員の能力であったり、様々な情報が必要です。判断できないのであれば進入せず、応援隊を呼び、搬送経路を作ることも仕事だということをおっしゃっていました。隊員の命を預かる隊長は感情だけでなく確かな「知識と技術、隊員の掌握」が必要だと感じさせられた一面でした。


(スキルを得るには行動するほうがが早い。写真:FTET)

■研修会終了

 最後に能登半島地震に被災されながらも隊員として活動された方の体験談が参加された仲間へ話されていました。どんな話だったかはぜひ参加された方へ伺ってください。私がこの話を伺って感じたことは本当の意味でその地域の人命を救えるのは「被災した地域の消防職員だ」ということです。自衛隊でも警察官でも緊急援助隊でもありません。これについては東日本大震災について書かれた「孤塁」を読むとさらに認識できます。つまり、自分たちの地域を守るための知識と技術、装備を準備しなければならないということです。準備はできていますか??なにも全部消防で完結しろとは言いません。例えば重機が配備されていない所であれば重機の扱いに長けた一般企業や団体と提携するのも手だと思います。


(災害に強い消防士になるためにまずは行動。写真:FTET)

■さいごにまとめ

 ここまで読んでくれた方々のほとんどは「準備が足りていないかもしれない」と感じたかもしれません。または、「プライベートの時間によくやるな」でしょうか?
 後者の方は消防法第一条を読み直しましょう。

『火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。』

 あなたは消防職員です。消防の目的は上記に記されています。この目的を達成するためにあなたは今消防組織に在籍し、その労働の対価として給与を得て生活しています。あなたはその目的を達成するための能力を持っていますか?もしくは持とうという努力を行っておりますか?持っていなくても持とうと努力する隊員を馬鹿にしたり邪魔をしたりしていませんか?少なくとも邪魔はやめましょう。

 また、「準備が足りていないと感じた方」必要な方向に努力をしましょう。例えば震災対応の力を身に着けたいのに「チロリアン100本渡れる体力と精神力、技術」はまったく無駄とは言えませんが「震災対応という面」では方向性が間違っています。チロリアン100本渡れる能力だけでは震災対応はできません。何度も書きますが建物の知識やUSAR(都市型検索救助)のスキルが必要になります。正しく努力を行ってください。また、今読んでくださっているあなたが裁量権を持っているのであれば「正しい努力」をさせてあげてください。

 そうはいっても裁量権がない。だから「正しい努力をしたいけどできない」という方も多いと思います。そういった方はまずは、与えられた仕事を一生懸命にこなしてください。もしかしたらそれが救助技術大会かもしれません。全国大会を目指してください。あなたが一生懸命やっている姿は多くの人が見ています。ここで「こんなの無駄な訓練」と目の前の仕事を適当にこなしてしまっては「こんなやつが言うことは聞かない」という考え方も一定数でてきます。あなたの行動を周りは見ています。正しい努力は今の時代、外でも可能です。あなたが階級を上げて後輩を育て、組織をより良い方向に動かす裁量権を持てるようになることを目指しましょう。あなたの行動を援護できる道具と立場をFTETは作っていきます。

 最後に、DRTJAPANのボランティア活動は9月頃まで続くそうです。現地では様々なボランティア活動がありますが、多くはUSARのスキルを活用するものが大部分です。被災地に来ることでしか学べないことも多くあります。ぜひボランティア活動に向かってください。あなたの地域を守るためにもここに来て学ぶことは無駄になりません。学び続けましょう。


(被災地はあなたを待っている。次の日に行われたボランティア活動。写真:FTET)

(建物の安定化もボランティア活動で行う)

(あるもので実施。設置から数か月経つが変形なし)

ぜひ被災地へ学ぶことも多いですが何よりもその地域に住んでいる方々の力になれます!

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