医師が教える「殺菌、除菌があらゆる病気の原因」

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医師が教える「殺菌、除菌があらゆる病気の原因」

医師が教える「殺菌、除菌があらゆる病気の原因」


はじめに


現代社会では、殺菌・除菌が健康維持に不可欠と考えられています。

しかし、過度な殺菌・除菌は免疫系の適応力を低下させ、病気を引き起こす可能性があることがわかっています。

前回の講義では自然や土壌の重要性について解いてきました。皆さんも、いかに人間が、医療が、間違った方向に向いてきてしまったかを
実感されたと思います。

今回は、過剰な清潔志向が健康に及ぼす影響について、具体的なデータとともに詳しく考察していきます。


1. 免疫システムの適応と過剰な除菌の関係


人間の免疫系は環境中の微生物と相互作用しながら発達する。乳幼児期に多様な細菌と接触することで、免疫系が適切に訓練されることが知られている(Hygiene Hypothesis)。

しかし、過度な殺菌や抗菌製品の使用は、微生物との自然な相互作用を阻害し、アレルギー疾患や自己免疫疾患の増加と関連していることがわかってきました。

2.アレルギー疾患の増加


2.1. アレルギー性鼻炎

厚生労働省の調査によると、スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎の有病率は、2001年時点で全国平均約12%だったが、その後の調査では47.2%に増加している。

この増加の背景には、都市化による花粉の飛散量増加や、大気汚染が粘膜の過敏性を高めることが影響していると考えられる。

2.2. アトピー性皮膚炎

近年、幼稚園児や小学生の間でアトピー性皮膚炎の有病率が増加していることがわかります。特に、幼稚園児では約2.5%から3.5%へと増加しており、小学生でも同様の傾向が見られます。

また、厚生労働省のデータによれば、アトピー性皮膚炎の総患者数は、平成29年(2017年)には約51.3万人でしたが、令和2年(2020年)には約125.3万人と大幅に増加しています。 

このような増加の背景には、生活環境の変化や食生活の欧米化、過度な清潔志向などが影響していると考えられます。特に都市部での増加が顕著であり、環境要因が大きく関与している可能性があります。



2000~2002年の全国調査によると、アトピー性皮膚炎の有病率は以下の通りです。

4か月児:12.8%

1歳半児:9.8%

3歳児:13.2%

小学1年生:11.8%

小学6年生:10.6%

大学生:8.2%

特に都市部での増加が顕著であり、生活環境の変化や食生活の欧米化が関与していると考えられる。


2.3. 食物アレルギー

消費者庁が平成30年度に実施した全国実態調査によれば、食物アレルギーの原因物質として、鶏卵が34.7%、牛乳が22.0%、小麦が10.6%を占め、これら3つで全体の67.2%を構成しています。

特に「木の実類」の増加が著しく、前回の3.3%から8.2%へと増加しました。 

また、文部科学省が実施した調査では、食物アレルギーを持つ児童生徒数が約52万7千人と報告されており、前回調査(2013年)より約12万人増加しています。 

このような増加の背景には、生活環境の変化や食生活の欧米化、過度な清潔志向などが影響していると考えられます。特に都市部での増加が顕著であり、環境要因が大きく関与している可能性があります。

2003~2005年の調査によると、食物アレルギーの有病率は以下の通りである:

乳児:10%

3歳児:4~5%

学童期:2~3%

成人:1~2%

食品加工技術の進化により保存料や添加物が増加し、それらが免疫系に影響を与えている可能性が指摘されている。

2.4. 気管支喘息

過去30年間で、小児の喘息有病率は1%から5%に、成人の喘息有病率は1%から3%に増加しており、約400万人が喘息に罹患している。これは、室内空気質の悪化や都市部での排気ガスの影響が大きいと考えられる。

3. 精神疾患の増加


3.1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)の増加

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難さや限定的な興味・行動を特徴とする神経発達障害である。
近年、ASDの診断率は世界的に上昇しており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告では、2000年に0.67%だった有病率が、2016年には1.85%に増加している。

3.2. うつ病と不安障害の増加

うつ病や不安障害の患者数も増加傾向にある。日本の厚生労働省のデータによれば、うつ病患者数は1996年に約43万人だったが、2017年には127万人に増加している。この背景には、ストレス社会の影響や、環境要因としての大気汚染や食生活の変化が指摘されている。


4. 環境の変化と疾患増加の関連


4.1. 衛生仮説

衛生仮説(Hygiene Hypothesis)によれば、幼少期の微生物との接触不足が免疫系の正常な発達を阻害し、アレルギー疾患の増加につながると考えられている。Strachanの研究では、兄弟姉妹が多い家庭の子どもほどアレルギー疾患の発症率が低いことが報告されている。

4.2. 環境汚染物質の影響

大気汚染や化学物質への曝露は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎のリスクを高める要因として知られている。ディーゼル排気微粒子や揮発性有機化合物(VOC)が気道の炎症を引き起こし、免疫系の過剰反応を促すことが指摘されている。

4.3. 抗菌剤耐性菌の増加

無差別な抗菌製品の使用は、耐性菌の出現を促進する要因となる。特に、病院内感染症の原因となる多剤耐性菌(MRSAやVREなど)は、公衆衛生上の深刻な問題である。WHOは、不必要な抗菌剤使用を制限し、耐性菌対策を強化するよう警告している。

5. 皮膚常在菌と健康への影響


皮膚には多種多様な常在菌が存在し、これらは病原菌の侵入を防ぐ重要な役割を果たしている。

過度な洗浄や抗菌石鹸の使用により、皮膚の常在菌バランスが崩れ、アトピー性皮膚炎や皮膚感染症のリスクが高まることが報告されている。



トリクロサン:抗菌作用が強く、長期間使用すると皮膚常在菌を減少させ、皮膚のバリア機能が低下する可能性があります。

クロルヘキシジン:強力な殺菌作用があり、頻繁に使用すると肌が乾燥しやすくなるほか、口腔内細菌のバランスも乱れる可能性があります。

ラウリル硫酸ナトリウム(SLS):洗浄力が強すぎるため、皮脂を過剰に除去し、皮膚の炎症やアレルギー反応を引き起こすことがあります。

6.まとめ


適度な微生物との接触を維持することで、免疫系の適応力を高め、アレルギーや自己免疫疾患のリスクを低減できる。

過剰な抗菌製品の使用を避け、適切な衛生管理を行うことが、健康維持の鍵となる。

具体的な推奨事項としては、手洗いは過剰に行わず、石鹸を使った適度な洗浄を心掛けることが重要である。

また、抗菌作用の強い消毒剤の使用を控え、通常の清掃で十分な衛生環境を保つことが推奨される。

屋外活動を積極的に行い、土や植物との適度な接触を促すことで、免疫系の多様性を維持することも有効である。

さらに、発酵食品や食物繊維を含むバランスの取れた食事を摂取することで、腸内細菌の健全なバランスを保ち、免疫機能の向上につながる。



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