地球と私たちの健康をつなぐ「プラネタリーヘルスケア」

テキスト

地球と私たちの健康をつなぐ「プラネタリーヘルスケア」
地球と私たちの健康をつなぐ「プラネタリーヘルスケア」—— 医師として考える持続可能な医療の未来


はじめに:健康って、人間だけのもの?

「先生、最近アレルギーがひどくなったんですが、何か原因ありますか?」
診察室で、こんな質問をされることがよくあります。昔は大丈夫だったのに、最近になってアトピーが悪化した、ぜんそくの発作が増えた…。

もしかすると、これって「地球の健康」が影響しているのかもしれません。

実は、私たちの健康は地球の環境と深く結びついています。空気が汚れれば肺に負担がかかるし、気温が上がれば熱中症のリスクが高まります。

食べるものや水が汚染されれば、体にも悪影響が出る。逆に、私たちの生活や医療の在り方が環境に負荷をかけていることもあるのです。

「プラネタリーヘルス」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、これは「地球の健康を守ることが、私たち自身の健康を守ることにつながる」という考え方です。

現在、地球環境は汚染が深刻に進み、二酸化炭素排出に伴う温暖化で世界中で異常気象、旱魃や森林火災が続いています。

今回は、医師としての視点から、どうすれば地球と私たちの健康を両方大切にできるのか、一緒に考えてみましょう。

1. 環境の変化が私たちの健康にどう影響しているのか?


① アレルギーや呼吸器疾患の増加

最近、花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎の患者さんが増えています。

その理由のひとつが、大気汚染や気候変動です。温暖化によって花粉の飛散量が増えたり、大気中のPM2.5(微小粒子状物質)が呼吸器を刺激したりすることで、症状が悪化することがあります。

例えば、東京都内に住む40代の女性患者さんは、「最近、ちょっとした外出でも咳が止まらなくなる」と訴えていました。

調べてみると、大気中のPM2.5の数値が高い日には、ぜんそくの発作も増えていることが分かりました。つまり、大気の質が悪くなると、私たちの体もダイレクトに影響を受けるのです。

② 熱中症のリスク増加

夏の暑さが年々厳しくなっているのを実感している方も多いでしょう。
熱中症で救急搬送される人の数は増えており、特に高齢者や子どもにとっては命に関わる問題です。

70代の男性患者さんは、「昔は扇風機だけで十分だったのに、今はクーラーなしでは耐えられない」と話していました。

高温多湿の環境では、体温調節がうまくできずに脱水や熱中症を引き起こしやすくなります。

気候変動によって、私たちの生活スタイルも変えざるを得なくなっているのです。

③ 食の安全と栄養バランスの問題

「最近、野菜の値段が高くなった」と感じたことはありませんか?これは、異常気象や環境の変化によって農作物の収穫が不安定になっているからです。

食糧供給が不安定になると、栄養バランスの乱れや健康リスクの増加につながります。

特に、加工食品の摂取が増えたことで、生活習慣病(糖尿病や高血圧など)が増えているのも問題です。実際、診察に来る患者さんの中にも「忙しくてついインスタント食品やファストフードに頼ってしまう」という方が増えています。

これは、個人の食生活の問題だけではなく、社会全体の食の在り方に関係しているのです。

2. 医療も環境に影響を与えている?
「医療って、人を助けるものだから、環境には関係ないんじゃないの?」と思うかもしれません。

でも実は、医療も環境に大きな影響を与えています。

① 医療廃棄物の問題

病院では、毎日大量の使い捨て医療器具(注射器、ガウン、手袋など)が使われています。

これらは感染リスクを防ぐために必要不可欠ですが、その一方で、プラスチックごみの増加や焼却時のCO₂排出など、環境への負担も大きいのです。

② 医薬品と環境汚染

不要になった薬を捨てると、それが水質汚染の原因になることがあります。

例えば、一部の抗生物質やホルモン剤は、排水を通じて自然界に流れ出し、生態系に影響を与えることが分かっています。

③ エネルギー消費の大きい病院

病院は24時間稼働しており、CTスキャンやMRIなどの高度な医療機器を使うため、電力消費が非常に大きいのです。

ある調査では、病院が排出する二酸化炭素(CO₂)の量は全産業の中でも上位に入ると報告されています。

3. 私たちができること——「プラネタリーヘルスケア」を実践する

では、環境と健康を両立させるために、私たちは何ができるでしょうか?

① 生活習慣を少し変えてみる

• 野菜や果物を積極的に食べる(地産地消を意識すると環境負荷も減らせる)
• 無駄な医薬品の購入を避ける(必要な分だけ処方してもらう)
• エコな移動手段(徒歩や自転車)を取り入れて、運動不足を解消する

② 医療の現場でもできること

• 使い捨て医療器具の適切な管理とリサイクルの推進
• 環境に配慮した医薬品の開発と適切な処方
• 省エネ化(LED照明の使用、太陽光発電の導入など)

③ 「健康」と「地球」を一緒に考える意識を持つ

健康診断を受けるとき、薬をもらうとき、普段の食事を選ぶとき…。
それらの選択が、実は地球の健康にも影響していることを意識するだけでも、大きな一歩です。

おわりに

「プラネタリーヘルスケア」は、私たちが自分の健康を大切にすることと、地球の健康を守ることをつなぐ新しい考え方です。

医療の現場からできることはたくさんありますが、一人ひとりの意識と行動が、未来の健康と環境を作っていくのです。今日から、すこしだけ意識してみませんか。

今後も私の講義では、地球の環境と私たちの健康の関係について、医学的な視点から解説していきます。温暖化が健康に与える影響や、持続可能な医療の必要性について説明することで、環境と健康のつながりを子供達と体感してもらえたら嬉しいです。

プラネタリーヘルスケアのコンセプトを支える技術についても重要です。例えば、再生可能エネルギーを使用した施設や、クリーンな水を提供するシステムなど、持続可能な技術を紹介することで新たな視点を持ってほしいと思います。

医療のアクセス性と持続可能性についても重要です。例えば、地域社会と連携した医療サービスの拡充や、資源の有効活用についての取り組み、医療施設のエコフレンドリー化など、持続可能な医療を実現するためのアイデアを提案していきます。

プラネタリーヘルスケアの考え方を普及させるための啓発活動についてもみなさまで考えていけたら幸いです。
例えば、学校や地域での講演やワークショップの開催、自然保護活動との連携など、幅広い層に対して持続可能な医療の重要性を伝えるための取り組みを共に行なっていきましょう。

私は、1人1人が意識を変え、自分のために身体は周りと、地球とつながっていることが意識できれば、世界は変わっていくと信じています。

ぜひ、一緒にみなさんの意識を変えていきましょう。

オンラインサロン情報

30日間無料

予防医療大学院

予防医療大学院

4,950円/1ヶ月ごと
サロンページを見る

サロン紹介

Dr.JUNによる健康美容セミナー開講!!1年間合計48回の講義を届けます。絶対に他では得られない本当の健康知識を。
運営ツール
DMMオンラインサロン専用コミュニティ

あなたにおすすめの他サロン

おすすめサロンをすべて見る
ページトップに戻る