「ヴィジュアル系かく語りき」
伝説のヴィジュアル系バンド「MALICE MIZER」創始者のMana様が、様々なバンドマンや関係者をお招きする対談企画。今まであまり他バンドのアーティストと絡みのなかったMana様が「音楽」と「ヴィジュアル」を共通項に、ミューシャンたちとの親交を深めます。今回のお客さまは、Plastic Treeのベーシストにしてリーダー、長谷川正さん。まさに同じ時代を駆け抜けてきたアーティスト同士の、奇跡の初対談です。
――Plastic TreeもMALICE MIZERも1997年メジャーデビューという、同じ時代に同じシーンに存在していたバンドですので、お二人が会話をするのは今回がほぼ初めて、というのはとても意外でした。
長谷川正:だいぶ以前の話なんですけど、どこだったかのレコーディングスタジオに行った時に、たまたまMALICE MIZERのメンバーが全員いらっしゃるということで、一瞬ご挨拶したことがあるんです。それが最初で最後なんですけど、覚えてます?
Mana:それは覚えていませんでした~。そうですか! いつ頃ですか?
長谷川正:1997年か98年か、それくらいの頃ですね。
Mana:そうか~。えっと、Plastic Treeは結成もMALICE MIZERと同じ?
長谷川正:僕らの結成はたぶん、MALICE MIZERの1年後ですね。
Mana:ということは93年結成?
長谷川正:そうです。
Mana:Plastic Treeは当時のヴィジュアル系の中でもちょっと異質な存在だという印象を持ってました。独特な……、なんというか……、言葉で表現するのが難しいんだけど。
長谷川正:僕らにとってもMALICE MIZERはとても特異な存在だったという印象です。やっぱりバンドとしての表現に関して、振り切り方が尋常じゃなかったし、一貫したひとつの世界観を表現し続けているっていうのはスゴイなと感じていましたね。ロックバンドというよりも、むしろ表現者集団というか。
Mana:ありがとうございます。
長谷川正:バンド結成当時すでに“ヴィジュアル系”という言葉があったかなかったか定かじゃないんですけど、MALICE MIZERの他に、ああいうアプローチをしているバンドを僕は知らなかったですから。
Mana:MALICE MIZERとPlastic Treeって、同じ時代のヴィジュアル系というくくりではあるんだけど、サウンド的にはまったく違う方向性でしたよね。
長谷川正:そうですね。僕らは音楽的には当時オルタナティヴな方向でしたね。グランジだったりを取り入れてやっていたので、MALICE MIZERのクラシカルな要素を含んだ音楽とは、また違う感じだったかもしれませんね。
Mana:Plastic Treeはヴィジュアル面でもちょっと異彩を放っていた気がする。ボーカルの人、半ズボン履いていなかった?
長谷川正:履いてましたね(笑) 半ズボン履いてランドセル背負って。
Mana:「ヴィジュアル系で半ズボン!? すごく独特だな!」と思っていました。ランドセルなんかもう、意表をついているとしか思えなかったし。
長谷川正:そうですね。竜太朗は対バンする相手さんにも「え!?」って顔をよくされていました(笑)
Mana:メンバーはみんな千葉県民なの?
長谷川正:結成したのは千葉県なんですけど、出身はけっこうバラバラなんです。今のドラムは長崎出身だし、ギターは北海道で。
Mana:そうなんだ。Plastic Treeは市川CLUB GIOのイメージがすごいあるんだよ。
長谷川正:あー、そうかもしれませんね。市川CLUB GIOには僕らすごいお世話になっていて、インディーズのころはバンドの連絡先というか窓口を市川CLUB GIOにしてもらっていたくらいなので。
Mana:そうなんだ。
――メジャーデビュー以前からお互いに存在は意識していたということですから、対バンもされているんですよね?
長谷川正:いや……してない…ですよね?
Mana:対バンはしてないよね。
※ここでスタッフ情報。「ネットによると対バンしているみたいですよ」
長谷川正:え!?
Mana:いつ?
スタッフ:2001年8月26日『SHOCK WAVE illusion2001“真夏の狂宴”』日比谷野外音楽堂。それ以前も1996年、Plastic Treeの『モノクロームシアター』の京都ミューズホールでMALICE MIZERと対バンしてますね。もっというと、Plastic TreeはMoi dix Moisとも対バンしていますよ。
長谷川正:あ――。
Mana:なるほど。すごいたくさんバンドが出るイベント系って、実はあんまり覚えてないんだよ。
長谷川正:そうそう。例えば『SHOCK WAVE』なんかは、メイクも衣装も出来上がった状態で会場に来て、出番が終わったら即会場を出るっていうバンドが多かったんですよね。
Mana:MALICE MIZERも絶対そうだった。演奏終わったら誰とも会話をせずそのまま帰るという。
長谷川正:人数多いですからね。
Mana:『SHOCK WAVE』が2001年ってことはKlahaくんの時代かぁ……。なるほど――。だとしても覚えていないですね。
長谷川正:僕もです(笑)。あんまり楽屋で落ち着いてわちゃわちゃ話すっていう空気感じゃないですもんね。
Mana:そうなんだよ。今考えると、交流できるチャンスではあったんだろうけど。
長谷川正:ほかのバンドさんも、そういう感じでした。
――今ようやく時を経て、こうして面と向かってお話する良い機会でもあるので、今こそ聞きたいことなどあるんじゃないですか?
Mana:ある! Plastic Treeのサウンドって結構ベースがブリブリ歪んでいて激しいでしょ?
長谷川正:そうですね。
Mana:当時はあんまりベースを歪ませて弾いてるバンドっていなかったよね。少なくともヴィジュアル系ではいなかった。
長谷川正:ですね。
Mana:私の中ではPlastic Treeって、フワっとしたイメージを持っていたんだよ。ボーカルが半ズボンだし(微笑)なのに、ベースがとにかく攻撃的っていうのがすごく印象的だった。『クローゼットチャイルド』とか、もう冒頭からブリブリリー! って鳴らしてるでしょ?
長谷川正:そうですね。
Mana:すごい攻めてるなー!って。
長谷川正:自分たちの狙いのひとつとして、そういう“ギャップ”を出したいっていうのはあったかもしれないですね。
Mana:あそこまで歪ませているベーシストはヴィジュアル系以外でも当時は相当珍しかったんじゃないかな。Plastic Treeは全体的にテンポ感がミディアムテンポなイメージで、ものすごい激しい速い曲っていう感じじゃなかったから、余計あのベースが異質で際立ってたと思う。
長谷川正:そうすね。
Mana:面白いギャップだなと思った。
長谷川正:もちろん、Plastic Treeをやるときに自分のプレイスタイルっていうのは模索して、いろんなベーシストのプレイを聴いたりもしたんです。だけど、ああいう感じが自分には合ってるなと思ったというか。
Mana:当時のヴィジュアル系って激しいリズムで「かかってこいよ!」みたいなバンドが多かったじゃない? Plastic Treeはそういうニュアンスでもなかったよね。むしろ柔らかい優しい感じ。だけどベースはやたら刺激的。すごく面白い。
長谷川正:なんていうか、自分の個性を出そうかなと思ったんですよね。
Mana:性格的にも結構攻撃的な感じ?
長谷川正:どうなんでしょうね~。フワっとして見られがちではあります。でも楽器って自分にとっては武器みたいなところ、ありませんか?
Mana:そうね。
長谷川正:自分の中の攻撃的な部分を出すならうってつけのツールが楽器だな、というか。僕の中に実際に攻撃性あるとするならば、それが楽器を通して出ているから普段はフワっとしていられるのかもしれないです。
Mana:音楽も攻撃的なものが好きなの?
長谷川正:僕は昔からパンクが好きですね。
Mana:なんだ、じゃあ結構近いかも!
長谷川正:一番影響を受けたのはいわゆるロンドンパンクという言われるあたりで、ダムド (The Damned)だったり。
Mana:はいはいはい。結構、世代が近いもんね。
長谷川正:そうですね。メイクをし始めたキッカケも、実はあのへんのパンクバンドの影響が大きくて、ダムド (The Damned)もそうですし、アディクツ(The Adicts)っていうバンドとか、そのへんが好きでした。
Mana:なるほど。
長谷川正:でもPlastic Treeでは直接的にパンク的な音楽をやろうとか、パンクのファッションでいこうとか目指していいたわけではないんです。そんな中で、割とまあ僕は個人的にパンク的な要素を出していけたら面白いなと。自分のルーツをどうPlastic Treeの中でうまく出していけるかっていうのはありましたね。
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後半のトピックは…
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