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五戸美樹のごのへのごろく〜なんで本番になるとカミカミになるの? 〜

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五戸美樹のごのへのごろく〜なんで本番になるとカミカミになるの? 〜
《 本日のごのへのごろく 「『お知らせ』が 力が入ると 『お知だて』に」》 

スピーチ、プレゼン、会議、挨拶…たくさんの人の前に立つと、“噛んで”しまう方。改善方法としてよく言われるのは「メンタルを鍛え、滑舌練習をする」です。メンタルは重要ですが、残念ながら、滑舌練習をしても“カミカミ”は改善しない場合が多いです。ではどうすればいいでしょう? 声と脳の専門家・山崎広子先生監修、トーク編第51回「噛まない発声」。 

 ■噛んでしまう■

言い間違えたり、うまく言えなかった時に使う「噛む」という用語。現在は一般的になりましたが、もともとは芸能関連の専門用語です。辞書に載っている言葉は「とちる」ですが、コラムでは一般的になった「噛む」を使用してご説明します。

噛んでしまう症状は、大きく分けて2種類。「読み間違え」と「言い間違え」です。

 ■読み間違えの場合■

「読み間違え」は「あえいおう」と書いてあるのに「あいうえお」と読んでしまうなど。視覚の誤認識によるものです。黙読でもいいので、書いてある通りに読むようにする練習で改善できます。

続いて、「言い間違え」は、「言いづらい言葉」の場合と「言いづらくないのにつっかえる」場合があります。

 ■言いづらい言葉の場合■

「言いづらい言葉」の場合は、「アンリ・ルネ・ルノルマン」などラ行が続くものや、「すももも桃も」などマ行が続くといった、舌や唇の動きが忙しい時が多いです。そのため早口言葉で滑舌練習をするという発想が起こるわけですが、このコラムで度々お伝えしている通り、口を大きく開けると滑舌は悪くなりますので、言いづらい言葉ほど、あまり開けずに、口の中で音を作るような意識を持つと、言いやすくなります。

 ■言いづらくないのにつっかえる場合■

私は講師をしていて、生徒さんの噛む症状としてこの「言いづらくないのにつっかえる」場合が一番多いと感じています。普通に話している時は何ら問題なく言えているのに、本番になった途端に噛んでしまう。芸能の生徒さんだと、フリートークは噛まないのに、ナレーションになると噛んでしまうのです。この場合は、滑舌練習はあまり役に立ちません。

何を隠そう、私がそうだったのです。入社4年目くらいまで、ナレーションになるとカミカミになっていました。当時の私は、何かを読む時に、声の音程を高くしていました。そのほうが明るく聞こえると勘違いしていたためです。

 ■五戸がカミカミだった原因■

のちのち山崎先生に指摘してもらったことですが、音程を高くして声を出すというのは、喉頭に力を入れて、上に引き上げ、声道を短くして発声している状態です。外側の「喉頭筋」に過度な力が働いています。

それは、喉頭筋肉群・神経群が過度に緊張するということになり、舌骨に繋がる筋肉「舌骨筋」にも影響してしまったと考えられ、カミカミになっていた、ということですね。

 ■五戸のカミカミ改善法■

私は、カミカミを治すため、ナレーションの前にフリートークを入れて、繋げて読む練習をしてみました。「わかります、そうなんですよね、ニッポン放送からのお知らせです」といった具合です。

ナレーションの声が自分の出しやすい音程になり、噛む回数は劇的に減りました。これは、本来の喉頭位置で話すことで、喉頭筋肉群・神経群の緊張も抑えられ、舌骨筋が自然とスムーズに動くようになった、ということです。

このように、「言いづらくないのにつっかえる」のは、単なる「メンタルの問題」や「滑舌の問題」とは言えないのです。

 ■メンタルの影響■

もちろんメンタルは大きく関わってきます。例えば、たくさんの人の前に立つと、我を忘れるくらい緊張してしまう方は、緊張し過ぎないようにする練習が必要です。自己否定が強かったり、慢心があったりすると、その精神状態も影響します。

 ■危険な事例と原因■

私が危険だなと思うのは、過去に誰かに「滑舌の問題である」と誤った指導をされ、口を大きく開けてたくさん動かそうとした結果、神経群が興奮し、噛む回数が増えた事例です。前述したように、口を大きく開けるのは間違いです。

滑舌の問題ではなく、簡単にいうと「力み」です。どこかに何らかの「力」が入り過ぎている方が多いです。私の場合は、咽頭に力が入り過ぎていました。口を大きく開ける方は、表情筋や舌骨筋に力をいっぱい入れています。他にも、肩にガチガチに力が入っている、唇に強く力が入っている、鼻に必要以上に力が入っている、などなど。

 ■改善方法1:録音チェック■

コラムで度々お伝えしている、オーセンティックボイスを見つける方法と一緒です。色んな場面で自分の声を録音し、噛んでいない時の声を探しましょう。噛まずに話していて、自分で「いいな」と思える声が見つかったら、その声を繰り返し聞き、脳に覚えさせましょう。自然とその声が再現できるようになるといいですね。

 ■改善方法2:ストレッチと呼吸■

腕を伸ばしたり、表情筋を揉んだり、目をぱっちり開いたり、肩を回したりと、上半身を中心にストレッチをし、肩や首に力が入らないようにしましょう。軽い運動もいいですね。呼吸は腹式呼吸で、上半身に力が入らないように心がけてください。

 ■改善方法3:腹話術風練習■

口元を少しだけ開けて、だらんとさせながら、なるべくハッキリ「あいうえお」「かきくけこ」と声に出してみましょう。慣れてきたら「こんにちは」「そうですね」と、話し言葉でやってみてください。表情筋の力を抜く練習です。力みが取れた感覚を保ちながら、普通に話してみてください。

何かを読む必要がある方は、私の当時の改善法のように、フリートークから繋げて発声をする練習もおすすめです。


「第75回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」

【参考図書】
山崎広子先生の著書『相手に届き、自分を変える 心を動かす「声」になる』(大和書房)、『8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声』(角川新書)、『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』(NHK出版新書)、『人生を変える「声」の力』(NHK出版)。

◆山崎広子(やまざき・ひろこ)国立音楽大学卒業後、複数の大学で音声学と心理学を学ぶ。音が人間の心身に与える影響を、認知心理学、聴覚心理学の分野から研究。音声の分析は3万例以上におよぶ。また音楽・音声ジャーナリストとして音の現場を取材し、音楽誌や教材等への執筆多数。「音・人・心 研究所」創設理事。NHKラジオで講座を担当したほか、講演等で音と声の素晴らしさを伝え続けている。

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