中医学とアーユルヴェーダ

テキスト

中医学とアーユルヴェーダ


アーユルヴェーダと医療


1. アーユルヴェーダの基本概念

 • 語源:
 • アーユス(Ayus) = 生命・寿命
 • ヴェーダ(Veda) = 知識・聖なる知恵
 • 概要:
アーユルヴェーダは、生命の維持や病気予防を目的とした伝統医学。
インドでは5000年以上前から続く医療体系で、現代医学とも補完的に活用可能。

2. アーユルヴェーダの診療科


アーユルヴェーダは8つの診療科から成り立つ:
 1. カーヤ・チキツァー(内科)
 2. シャルヤ・タントラ(外科)
 3. シャーラーキャ・タントラ(耳鼻咽喉科・眼科・歯科)
 4. アガダ・タントラ(毒物学・救急医学)
 5. ブータ・ヴィドャー(精神科・霊的治療)
 6. カウマーラ・ブリトヤ(小児科・産婦人科)
 7. ラサーヤナ・タントラ(抗老化医学)
 8. ヴァージーカラナ・タントラ(生殖医療)

3. アーユルヴェーダの体質(ドーシャ理論)


 • 人体のエネルギーバランスは3つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)によって決まる。
 • ヴァータ(風): 活発、創造的 → 乱れると便秘・冷え性・不安傾向
 • ピッタ(火): 知的、消化が良い → 乱れると胃潰瘍・怒りっぽい
 • カパ(水): 落ち着きがある、持久力がある → 乱れると肥満・怠けやすい

4. アーユルヴェーダの治療法


 1. 食事療法(アーハーラ) - 各ドーシャに適した食事を取る。
 2. ハーブ療法(ドラビヤ) - 自然の薬草を用いた治療。
 3. 浄化療法(パンチャカルマ) - 身体の毒素を排出する施術。
 4. オイル療法(アビヤンガ) - 温かいオイルを使ったマッサージ。
 5. 瞑想・ヨガ - 精神と身体の調和を取る。

5. 近代医療とアーユルヴェーダの統合

 • 日本の健康戦略:
 • 2016年、内閣官房「健康・医療戦略推進本部」設置。
 • 「アジア健康構想」により、アーユルヴェーダが正式に健康促進政策の一部に。
 • エビデンスの確立:
 • 科学的研究によりアーユルヴェーダの効果を証明する動きが進行中。

6. 実際の臨床応用


① ナスヤ(経鼻療法)
 • 鼻粘膜を浄化し、呼吸器系や自律神経のバランスを整える治療法。
 • 適応: 副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、ストレス障害など。
 • 研究データによると、ナスヤ施術後の自律神経バランスが向上し、ストレス耐性が向上した。

② シロダーラ(額オイル療法)
 • 温かいオイルを額に垂らし、リラクゼーション効果を高める。
 • 効果: 不眠症、ストレス、神経系のトラブル改善。
 • 脳波測定では、施術後にα波(リラックス時の脳波)が増加。

③ カルナプーラナ(耳浴療法)
 • 温かいオイルを耳に注ぐことで、聴覚や自律神経を整える。
 • 適応: 耳鳴り、難聴、めまい、神経性の不調。

中医学的思考


1. 中国伝統医学の原点と漢方医学


中国伝統医学の源流は 『黄帝内経』、『神農本草経』、『傷寒雑病論』 にあり、古代から発展してきた。

陰陽説(あらゆる事象は陰陽のバランスにより成り立つ)

五行説(木・火・土・金・水の五要素による身体バランスの調整)

天人合一(人体は自然の一部であり、環境と共鳴しながら健康を維持する)

2. 中医学の診断方法(四診)


望診(顔色・体型・舌診など)

聞診(声・咳・体臭など)

問診(体調・生活習慣などを詳しく聞く)

切診(脈診・腹診)

3. 中医学における病気の概念


六淫(外因):風・寒・暑・湿・燥・火

七情(内因):喜・怒・憂・思・悲・恐・驚

**五臓(肝・心・脾・肺・腎)**とそれに関連する病症


4. 中医学的治療法と代表的漢方処方


4.1 気虚(エネルギー不足)

特徴:倦怠感、息切れ、食欲不振、冷え

代表的漢方処方:

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう):体力回復、免疫力向上

・六君子湯(りっくんしとう):胃腸虚弱、消化不良改善

・黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう):体力低下、虚弱体質

4.2 血虚(血液不足)

特徴:顔色が悪い、めまい、動悸、爪や髪の乾燥

代表的漢方処方:

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血行促進、貧血改善

・四物湯(しもつとう):女性の月経不順、冷え性

・十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):慢性疲労、虚弱体質


4.3 気滞(ストレスによる滞り)

特徴:胸や脇が張る、情緒不安定、消化不良

代表的漢方処方:

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):ストレス、不眠症、神経症

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):喉の詰まり感、咳、気分の落ち込み

・加味逍遙散(かみしょうようさん):女性の更年期障害、自律神経失調症

4.4 湿滞(体内の水分代謝障害)


特徴:むくみ、重だるさ、口内の粘り

代表的漢方処方:

・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう):肥満、関節の腫れ

・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):めまい、むくみ、心悸亢進

・五苓散(ごれいさん):むくみ、下痢、頭痛

4.5 瘀血(血流の停滞)


特徴:肩こり、冷え、シミ、月経痛

代表的漢方処方:

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):月経不順、子宮筋腫

・桃核承気湯(とうかくじょうきとう):便秘、瘀血体質

・通導散(つうどうさん):高血圧、動脈硬化


5. COVID-19と中医学的アプローチ


予防期:玉屏風散、補中益気湯など免疫向上薬

初期感染(軽症):香蘇散、藿香正気散(消炎・解毒)

中期感染(重症化):清肺敗毒湯、化湿敗毒湯(肺炎症状改善)

回復期:柴胡桂枝湯、十全大補湯(免疫回復)


6. 日常生活で実践する漢方的養生法


季節ごとの食養生

春(肝):酸味の食品(梅干し、酢)で気血の巡り促進

夏(心):苦味の食品(ゴーヤ、緑茶)で心火の鎮静

秋(肺):辛味の食品(生姜、ネギ)で肺の潤い補給

冬(腎):塩味の食品(昆布、味噌)で腎精の補充

土用(脾):甘味の食品(かぼちゃ、さつまいも)で脾胃の強化


経絡に基づいた生活習慣の調整

23~1時(胆経):陽気を蓄える時間、早寝が大切

3~5時(肺経):呼吸器の活性化、深呼吸を意識

7~9時(胃経):しっかり朝食を取り、脾胃の働きを助ける

15~17時(膀胱経):水分代謝促進、老廃物排出


ストレス管理

気虚・血虚改善には十分な睡眠・栄養確保

瘀血・湿滞改善には軽い運動・温熱療法(漢方風呂・温灸)


7. まとめ


 • アーユルヴェーダは、単なる古代医学ではなく、科学的な裏付けを持つ統合医療として活用可能。
 • 予防医学やアンチエイジング、メンタルケアなど、幅広い分野で応用されている。
 • 今後、日本の医療システムにもアーユルヴェーダの要素が取り入れられる可能性が高い。
・中医学は、自然の摂理に基づいた体系的な医学であり、現代医療と組み合わせることで健康維持・病気予防に貢献できる。
・COVID-19や慢性疾患に対する漢方の応用も進んでおり、今後の医療において統合的アプローチが重要となる。
・生活の中に中医学的視点を取り入れ、個々の体質に応じた漢方薬を活用することで、病気の予防と健康増進が実現できる。




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