感覚派、理論派の作家はそれぞれ何を努力すると結果につながる?
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この記事の作者はプロのラノベ作家です。
Q.感覚派、理論派の作家はそれぞれ何を努力すると結果につながる?
作家においても「感覚派」の人間と「理論派」の人間がいると思います。
私の場合「ここは○○すると△△といった効果があるから○○にしよう」といったふうに論理的に考えて決めるよりも、「こうしたほうが面白そうだ」という直感に近い形で創作を進めることが多いので、自分は感覚派だと考えています。
感覚派、理論派の作家やプロを目指している人で、それぞれこういうことをやるとよりよい創作活動に繋がるといった行動などはありますでしょうか。
明確な答えがない質問かと思うので、編集者様が考える答えをご教授いただければ幸いです。
A.答え
理論派の作家は「全ての傾向が理論で導けるわけではなく時に感覚が必要になること」、
感覚派の作家は「感覚を頼りにすることを理論を嫌う言い訳に使っている限りは成長しないこと」、
についてよく考えるのが、一番根っこの本質の部分では重要なことかもしれません。
※これは執筆上級者以上の人に重要なことであり、まだ執筆に慣れていないという人は最初はこういったことは気にせず、理論でも感覚でも思うがままに作品を書くことが一番重要です。また、プロ作家デビューを考えておらず楽しんで小説を書きたいという人も、上記のことは全く考えなくて問題ありません。
まず理論派の作家についてですが、
理論を勉強すること自体は全く問題がないことなのですが、時に理論を勉強し過ぎることが「全てのヒットの法則は必ず理論で導ける」という極端な答えに行きついてしまうことがあります。しかしこれは誤りとなります。
例えると、将棋というゲームは計算理論上絶対に先手必勝か後手必勝になる(千日手は無視)といことが知られています。
しかし、どれだけ理論的に高速計算ができるPCも、まだ将棋というゲームが先手必勝か後手必勝かその結論を導けていません。最近ようやく、もしかしたら先手が有利かもということが分かったくらいです。
このように、(超高性能なパソコンですらこれなので、)理論的に考察しても「やっぱり分からない」ということは往々にして存在しうる結果であり、時には「これ以上は理論で考えても仕方がない。これは答えが出ないから感覚で行こう」と割り切る方が、創作上よい結果が得られることがあるので、理論が絶対だと思わないことが意外と重要です。
一方で感覚派の作家については、
もし感覚派だから理論はあまり気にしていないというのであれば、ほぼほぼな高確率で理論派に抜かれてしまうので、いつかは絶対に理論は学ばなければいけない瞬間がきます。
特に、著者本人の心の中に「こういうものが書きたいんだよなあ」という感情があり、それが売れるかどうか分からない(もしくは多分売れないと分かっているが認めたくない)場合、『感覚派』という言葉は「理論的にはよくわからないけど、感覚的にはこれは売れそうな気がするんだよな」という自身を正当化するための逃避手段として使われがちで、これは作家としての成長を大いに妨げます。
なので感覚派の方は、「自分の持っている感覚がただの自己正当化の言い訳になっていないか」&「自分が持っている感覚は理論的に正しいのだろうかと検証してみること」を意識すると、よりよい創作活動に繋がる可能性が高いと感じています。
理論派にせよ感覚派にせよ、一番の理想は『理論的に正しいとされる回答を、何となくこれが正しい気がすると感覚的に分かるようになる事』であると思われます。
例えば、プロ棋士の藤井八冠は、将棋AIが数十億手と読んでようやく「これが最善手かも?」と考える手を、まれに「何となくこの手がいい気がする」と感覚で想起することがあると言われています。
これはまさに、藤井八冠が将棋AIを通じて理論(定石)を研究し尽くした結果、本来膨大な理論を経てたどり着ける結果に感覚でたどり着くようになってしまったという最たる例になりますが、
その意味では藤井八冠は『感覚』派ではあるが、その感覚にたどり着くまでには膨大な『理論』が裏付けとして存在しているということとなります。
これは創作論においても類似していて、感覚を無視した理論も、理論を無視した感覚も、双方不完全である以上、『理論を重視した感覚派』になれるように行動するということが理論派・感覚派どちらの人にとっても最善手であるように個人的には考えています。
2024年3月3日に作成した記事
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