木山ヒロミ/Hiromi Kiyama

CEO / DH Dumont

生産者: Ilse & Toni Bodenstein / イルゼ & トニ・ボーデンシュテイン

ワイン名: Prager “Hinter der Burg Federspiel” / プラーガー “ヒンター・デル・ブルグ　フェーダーシュピール”

葡萄品種: Grünerveltliner / グリューナーフルトリナー

ワインタイプ: 白ワイン

生産国: Austria / オーストリア

生産地: Niederösterreich / ニーダーエステライヒ

地区: Wachau / ヴァッハウ

インポーター: Firadis / フィラディス

ヴィンテージ: 2017

参考小売価格: ¥4,300

 

 

同じブロックで私のニューヨークの養親、Drew Nieporent(*2)氏がRobert De Niro氏とパートナーになって展開するノブレストラン(*1)が世界中に進出する中、彼が所有していた伝説のMontrachet(*3)がフレンチファン達に惜しまれクローズしたのが2007年、クラシックフレンチレストランから、モダンフレンチに変動しはじめた実にドラマティックな時代。リーマンショックの起きた2008年にフランス料理界の貴公子、Paul Liebrandt(*4)シェフをCo-Ownerに迎え、Drew氏とこざっぱりしたカッコいい白とグレーを主張したデコのお店を同じWest Broadwayにオープンした。しかしながら、残念な事に、Cortonは2つ星を獲得したにもかかわらず、2013年にクローズしてしまったが、その全盛期に、そこから4ブロック程離れたDrew氏とRobert De Niro氏が共同経営するTribeca Grillと、なんと両方のお店を掛け持ちで、メインのソムリエさん達が休暇を取りやすく調整する春から夏にかけての短期のみ、働かせさせていただけるという、ソムリエとして濃厚なチャンスをいただいた。この貴重な職歴は現在でも私の一生の宝物だ。

 

Cortonの毎日変わるテイスティングメニューとワインリストを覚えるのは、私の瞬間記憶能力には、なかなかの試練であったが、更にこの私にアドレナリンを高分泌してくれたのは、Tribeca Grillのワインリストの分厚さ！リストにはChâteaunef-du-Papeだけで200種類以上(世界最多)あり、そのリストは大辞林よりも重かった。

毎回、注文を受けるたびに、体育館位広いダイニングルームからキッチンを通る螺旋階段で、地下1.５階の3箇所あるカーヴまで、一本一本のボトルをいち早くサービスする為に、毎日ジムで体力作りをしていた。ちなみに平均ディナー予約数は控えめにいって220名‼︎ それにつきソムリエは一人という、カジュアルなコンセプトのアメリカンなお店だ。

 

日本でもそうだが、ニューヨークでソムリエをするには、アスリート位鍛えていないと、営業前にバテる。トライベッカグリルはハイヴォリュームなお店だったし、リストが分厚かった！当時フランスワインばかりを好んで勉強していた私は、フランス以外の産地に関しては教科書の内容だけで、はっきりいって、知識は未熟だったし、余裕はなかったと思う。

小さい文字でぎっしりと書かれたページ数の多いドイツとオーストリアのリストは、正直、私の苦手なテリトリーで、ドイツ語の発音は全くできなかった。先代のヘッドソムリエさんが東ヨーロッパ系のバックグラウンドを持ったアメリカ人で、それらの産地のワインが豊富だった。

昼間は50ケース程のワインを動かし、タフだった私の脳ミソと肉体も、夏のオーバーヒートとアドレナリン分散不可能で完全にグロッキー状態だった。