うさこの策略
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「よくやるね」と言われる。まわりのひとに。
あきれてるというか、いや、少し嘲笑と憧憬も混じって。
とてもあなたのようにはできない、とも。
「(だれかのものである)小さないきものの命を預かる仕事」は、「よくやる」「とてもできない」「すごいね」と言われる。
そうかなあ。私自身は、そんなに無理な、特別なことをしている気はしていない。ごく自然に、いまのかたちになった。
小さい頃は漫画家を目指したり、大きな芸能事務所に就職した過去もある。いろんな職種でアルバイトもしたし、社員となっていたこともある。専業主婦を続けるという道もなかったわけではない。離婚してから就職した会社は、人生設計を考えるのに都合よかった(給料が安定していた)。
しかし、自分の人生を考えたとき、それの続きを、どれも選ばなかった。
小さいころから漫画家として身をたてていこうと思って生きてきたので「自分の名前で」「ほかの誰とも違う」「自分にしか成しえないこと」を、やるべきだと思ってきた。
それが何なのか、ずっと考えてきた。
うさぎが好きだからといって、ペットショップで働きたかったわけではない。かわいいウサチャンのイメージの仕事につきたかったわけでもない。
命が残酷なのは知っている。
まして、誰かが大切にしている唯一無二の命という、万が一のことがあっては取り返しのつかないものを扱おうなんて、ふつうは考えない。
30年前、捨てられていた「うさこ」をもらい受けて、初めてうさぎのすごさを知った。
うさぎって、賢い。仲間を思いやることができる。人間のことも家族と理解している。つかず離れず、共生してくれる。あたたかい。やわらかい。一緒に寝てくれたりする。
当時はうさぎの食べものもよく知らず、ラビットフードなどはまだ市販されていず、手探りの飼育だったが、長いこと元気でいてくれた。ほんとうにいい子だった。
うちに来て9年。
最後、がんで亡くなったとき、うさこは私に(うさぎ界を…たのむ…)と言って、こときれた。
いまの私の仕事は、その意思を継いでいるだけである。
私は、儲けるためにこの仕事をやっているのではない。
私がなぜ今この仕事を選んだのかというと、うさこや、うさぎのみんながもっている、
「うさぎの個々の尊厳を伝えたい」からだ。
お預かりするうさぎたちは、ひとりひとり個性がある。おりにふれていろんな出来事がおこる。
それは、心を開いてうさぎを見ているものにしか感じられないことが大半だ。
ひとつひとつの出来事を、言葉やかたちにして、うさぎがこんなに賢く思いやりのある動物だということを、広く伝えたい。
とうてい、こんなこと、利益の出る仕事ではない。
続けられたら、うさぎたちが私を「生かした」んだろう。
誰も注目せず、誰にも必要とされなかったら、すぐつぶれていただろう。
先日ご依頼の相談をいただいた、まだお目にかかったことのないお客様(←うさぎさんのかいぬしさまのこと)。
うさぎさんは13歳と6か月という、ご長寿。
LINEでやりとりする。
3か月前からよろけるようになり、つい数日前から自力で移動できなくなってしまった。
どうしても家族で家を空けねばならない用事があり、うちに依頼をくださった。
食欲にむらがあるとのことなので、私も、お預かり中になにかあっては困るので、事前にうさぎさんに会いたい旨を伝えた。
次の通院に、ご一緒させてもらうお話をしていた。
大切に大切に、この年齢まではぐくんできたことがわかる。
うさぎの平均寿命をゆうに超えている。
大切な大切な、家族の一員。
寝たきりでも、うさぎさんに食欲があれば、まだ少し安心して預かれる。
また、環境が変わっても、平気な子もいれば、影響が出てしまう子もいる。
前者なら、できるお世話はなんだってする。
食欲と、図太さ。それがあれば、しもの世話だって、夜中の給餌だって、なんだって、こい!
とにかく慎重に打ち合わせをすすめていた。
今日。
月にかえってしまった、と、LINEが届いた。
まだあったこともない、数日前にやりとりをはじめた、お客様とうさちゃん。
だけど、その知らせは私の心を重くした・・・。
お会いしたことはなくても、お客様やうさちゃんのことをすでに身近に感じていたし、お預かりする気まんまんで、いろいろ考えていたから。
うさこんちをみつけてくださり、思い切って連絡をくださり、何通かやりとりをした、お客様。
最後のLINEに、
「主人は、最初、うさぎを預けることに反対でした。でも、私がうさこんちのホームページを見せると、預かっていただくのがいちばんいい、と、考えが変わりました。うさこ母さまのうさぎ愛を感じたようでした」と、書いてくださっていました。
***
こうして書きながら答えを探しているように、私は明確なプランも計画も(同じか)ないまま、なにかに導かれるように、こうして15年も「うさこんち」をやってきた。
よきお客様にめぐまれ、たくさんのうさぎさんと接し、いろんなことを知った。
これが、うさこの策略でなければなんなんだろう。
こんな目線でうさぎと接している人間は、ほかにはいないだろう。
(うさこ母)
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