#0029 AIは「検索機能+独り言」である

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#0029 AIは「検索機能+独り言」である
皆様、
私が AI に関心を持ったのは1980年代、東京大学の工学部土木にいた頃です。当時の AI は「知識工学」と呼ばれ、エキスパートシステム(注1)がその中心でした。ハーバート・サイモン(注2)は「知能とは記号システムの働きである」と言い、産業界は記号システムに莫大な投資をしました。しかし実用にはなりませんでした。阪神淡路大震災の復興では、建設省(当時。現在の国土交通省)から依頼を受けて、我々のコンピュータシステムを兵庫県の区画整理事業(注)に適用することになりました。地権者の合意形成を支援し、事業を促進するためです。地権者の意見を入力すれば、それを反映した最適なプランが自動的に生成される。当時のAIとしては、よくできたものでした。
現場に持って行って、言われました。「邪魔です」。
理由はすぐには分かりませんでした。性能の話ではなかったからです。そういうものがあると地権者に知られてしまうと、「ここにこの幹線道路を通す」という都市計画の決定ができなくなる。代替案が出せると分かった時点で、決定は止まる。だから代替案はいらない。「この案しかありません」と言い通す。それが仕事だ、ということでした。
システムは動いていました。動いていたから、邪魔だったのです。
当時、神戸市は震災から二ヶ月で復興都市計画を決定しています。あの速さの裏側にいた、ということです。
80年代のAIが実用にならなかった理由を、私は長いあいだ技術の側にあると思っていました。いまは、半分はそうではなかったと思っています。人間の合意形成や意思決定の本質は、記号の操作で書けるようなものではなかったのです。

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