間違えだらけの医療―何が正しいのか―

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間違えだらけの医療―何が正しいのか―
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放射線や抗がん剤、天然成分の効果と自然治癒力

はじめに


医学の進歩により、多くの病気が治療可能となり、平均寿命も飛躍的に伸びた。しかし、その一方で、現代医療における治療法の選択は複雑さを増しており、患者や医療従事者が何が正しく、何が最善なのかを見極めることが難しくなっている。特に、がん治療においては、放射線治療や抗がん剤が標準治療として用いられる一方で、天然成分の活用や自然治癒力の重要性を唱える意見も少なくない。本稿では、放射線治療、抗がん剤、天然成分の効果について最新の研究を基に分析し、自然治癒力の可能性についても考察する。


1. 放射線治療の現状と課題

放射線治療(Radiotherapy)は、がん細胞を殺傷するために高エネルギーの放射線を使用する治療法である。近年、画像誘導放射線治療(IGRT)や陽子線治療など、精度の高い治療法が開発され、正常組織への影響を最小限に抑える技術が進歩している。しかし、依然として以下の課題が存在する。

1.1 放射線の副作用

放射線治療の主な副作用としては、
 • 急性期反応(皮膚炎、疲労、食欲低下)
 • 晩期反応(線維化、放射線誘発二次がん)

特に、放射線誘発性の二次がんは、長期的な課題として注目されており、放射線治療を受けた患者の中には、10年以上経過後に新たながんを発症するケースも報告されている。

1.2 放射線耐性の問題

がん細胞の中には、放射線に対して耐性を持つものも存在する。特に、低酸素環境下では放射線の効果が低下し、再発リスクが高まることが知られている。これを克服するため、放射線増感剤の開発や免疫療法との併用が試みられている。


2. 抗がん剤治療の功罪


抗がん剤(Chemotherapy)は、がん細胞の増殖を抑制するために使用されるが、その作用は正常細胞にも及ぶため、多くの副作用が伴う。

2.1 抗がん剤のメカニズムと効果

抗がん剤には、
 • アルキル化剤(DNA損傷を引き起こす)
 • 代謝拮抗薬(DNA合成を阻害)
 • 微小管阻害薬(細胞分裂を妨げる)
といった異なる作用機序を持つ種類がある。これらを適切に組み合わせることで、がんの進行を抑えることができる。

2.2 副作用と患者のQOL(生活の質)

抗がん剤の副作用としては、
 • 骨髄抑制(貧血、白血球減少による感染症リスク)
 • 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢)
 • 神経毒性(手足のしびれ、認知機能低下)
などがあり、患者のQOLを大きく低下させる要因となる。

2.3 抗がん剤治療の限界

一部のがんは抗がん剤に対する耐性を持つことがあり、治療の継続が困難になる場合がある。また、「抗がん剤ががんを悪化させる」という議論もあり、近年では個別化医療や免疫療法と併用する形での治療戦略が模索されている。


3. 天然成分とがん治療


がん治療において、天然成分が補助的な役割を果たす可能性が注目されている。特に、以下の成分は多くの研究でその有効性が示唆されている。

3.1 クルクミン(ウコン)

クルクミンは、抗炎症作用と抗酸化作用を持つ成分であり、がん細胞のアポトーシス(自殺)を促進することが報告されている。特に、乳がんや大腸がんに対して有望であるとの研究結果がある。

3.2 緑茶カテキン

緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)は、がん細胞の増殖を抑制し、血管新生を阻害する作用を持つ。前立腺がんや膀胱がんに対する予防効果が期待されている。

3.3 高濃度ビタミンC療法

ビタミンCは抗酸化作用を持ち、高濃度で投与することによりがん細胞を選択的に死滅させる可能性がある。ただし、その効果については未だ議論があり、標準治療として確立されているわけではない。


4. 自然治癒力の可能性


人間の体には本来、がん細胞を排除する免疫機能が備わっている。
近年の免疫療法の進歩により、
 • PD-1/PD-L1阻害剤(オプジーボなど)
 • CAR-T細胞療法
などが実用化され、自然治癒力を活性化させることでがんを克服するアプローチが注目されている。

また、食事療法、ストレス管理、適度な運動が免疫力を向上させることが知られており、統合医療の観点から重要視されている。

ポリフェノール、クルクミン、サルベスタロール、アガリクスなどの天然成分は、その抗がん作用が注目されています。以下に、それぞれの成分についての詳細な情報をまとめます。

1. ポリフェノール

ポリフェノールは、植物に広く存在する化合物群で、強力な抗酸化作用を持ちます。これらの化合物は、がん細胞の増殖抑制やアポトーシス(細胞死)の誘導、炎症の抑制など、多岐にわたる抗がん作用を示すことが研究で示唆されています。

1.1 フラボノイド

フラボノイドは、ポリフェノールの一種であり、特に抗がん作用が注目されています。例えば、ケルセチンやエピガロカテキンガレート(EGCG)は、がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することが報告されています。

1.2 スチルベン

レスベラトロールは、スチルベン系ポリフェノールの代表的な化合物であり、抗酸化作用や抗炎症作用を通じて、がんの進行を抑制する可能性が示唆されています。

2. クルクミン

クルクミンは、ウコン(ターメリック)の主要な有効成分であり、抗炎症作用や抗酸化作用を持つことで知られています。近年の研究では、クルクミンが以下のような抗がん作用を持つことが示されています。 
 • 生体内変換酵素の調節: クルクミンは、第I相および第II相生体内変換酵素の活性を調節し、発がん性物質の代謝や除去に影響を与えることが報告されています。 
 • 細胞周期停止とアポトーシスの誘発: クルクミンは、がん細胞の細胞周期を停止させ、アポトーシスを誘発することで、がんの進行を抑制する可能性があります。
 • 腫瘍浸潤および血管新生の抑制: クルクミンは、マトリックスメタロプロテイナーゼの活性を抑制し、腫瘍の浸潤や新たな血管の形成(血管新生)を阻害することが示唆されています。 

これらの作用により、クルクミンは動物モデルにおいて、口腔がん、胃がん、肝臓がん、大腸がんなどの発症を抑制する効果が確認されています。しかし、ヒトにおけるクルクミンの抗がん効果については、さらなる研究が必要とされています。 

3. サルベスタロール

サルベスタロールは、植物がストレスに応答して生成するファイトアレキシンと呼ばれる化合物群の一種です。これらの化合物は、がん細胞内の特定の酵素によって活性化され、がん細胞を選択的に死滅させる可能性があるとされています。しかし、サルベスタロールの抗がん作用に関する研究はまだ初期段階であり、その効果と安全性については今後の研究が必要です。

4. アガリクス

アガリクス(Agaricus blazei)は、ブラジル原産のキノコで、その抽出物は免疫調節作用や抗がん作用があるとされています。具体的には、アガリクスに含まれるβ-グルカンが免疫細胞を活性化し、がん細胞の増殖を抑制する可能性が示唆されています。しかし、アガリクスの抗がん効果に関する臨床試験の結果は一貫しておらず、その有効性と安全性についてはさらなる研究が必要とされています。


ポリフェノール、クルクミン、サルベスタロール、アガリクスなどの天然成分は、その抗がん作用が期待されていますが、ヒトにおける有効性と安全性を確認するためには、さらなる臨床研究が必要です。これらの成分を含むサプリメントの使用を検討する際は、必ずわたしにご相談ください。


おわりに


放射線治療、抗がん剤、天然成分、自然治癒力は、それぞれ異なるアプローチでがん治療に寄与する。どの治療が最も適しているかは、個々の患者の状況によって異なり、一律の答えは存在しない。重要なのは、最新の医学的知見をもとに、最適な治療法を選択することである。

今後の研究によって、より効果的で副作用の少ない治療法が開発されることを期待しつつ、患者一人ひとりが納得できる治療選択を行える環境が整備されることが求められる。

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