お知らせ クーポン ヘルプ

47友達の物理が急上昇48偏差値20の差は49ユリウ○へ切り替える

テキスト

47友達の物理が急上昇48偏差値20の差は49ユリウ○へ切り替える
47話 
友達の物理の偏差値が急上昇したわけ。
48話 
子の偏差値20の差は、母のリサーチ力の差。
49話 
 〇進から、ユリウ〇に切り替える?
をお届けします。


母の行動で友達の偏差値が20も上がったと聞いた私は
悪あがきを始めます。

偏差値は、親でも先生でもなく、
子、本人の努力の賜物だと思っていましたが

いやいや。
どうしてどうして。

親のリサーチ力
指導者の力の賜物でもあったのです。
優秀な先生をつけて成績があがるんなら
私はつけてやりたいです。

いよいよイケメン先生の影が出てきます。

影?

だってまだ見たことないんだもん。

幻?

ああ、高校からやり直せるなら・・・

ああして、
こうして、
そうしたい。



47話 友達の物理の偏差値が急上昇したわけ


私が「勉強は自分でやるから!(放っておいて)」
と言っているイチローに、
半ば強引に個別指導を
勧めようとしているのには
実はこんな理由があった。

師走の足音が聞こえてくる11月の末、
関東大会へ向けての練習試合があった。

練習試合は終了時間が遅いので、
高校生が帰宅時にトラブルに
巻き込まれぬよう
親が迎えに行き、
そのついでに試合観戦をするのが
常だった。

私も迎えかたがた会場へいき、
試合を見ながら
母友たちとしゃべっていた。

そこへ
マサヒロ母が少し遅れてやってきた。

マサヒロ母は
私たちを見つけるや否や
挨拶もせず、
少し興奮した調子で
開口一番こう言った。

「マサヒロがね、物理が解る!って言い出したの!」

その声に反応し、
一斉に皆が顔を上げ、マサヒロ母を見る。

遅れてきたマサヒロ母は
観覧席の後ろにいたので
母全員が試合から目を背け、
後ろを向いた図になった。

「え?物理?」

「そう。物理。」

マサヒロ母は思わぬ全員の注目に
少したじろぎながらもこう続けた。

「今見てもらっている先生がいいみたいでね、
数回見てもらっただけなのにもう物理が解るんだって。
もしかしてオレできるかも!て言ってるわ。」
マサヒロ母はとてもうれしそうだった。

たった数回見ただけで・・・?
物理といえば・・・、
イチローが高2の時、
9点を連発してしまうほど、
一旦こじらせてしまうと
取り戻すのが難しい科目だ。

「物理がわかる」
そう言わせたのは
都大会のときに、
マサヒロ母がヒデキ母を誘っていた
あの個別指導の先生だった。

マサヒロはイチローみたいに
計算ミスをしないから
定期テストの点が9点じゃなかったけど、
理解度はそんなに変わらないはず。

そのマサヒロの物理を、
その先生は、
たった数回指導しただけで
もうなんとかしたってことなのか。

でも塾を見つけてから
まだ二か月くらいしかたっていないはずだけどな。
週一回と言ってたから8回くらい?
ずいぶん早く出たその効果に、
私は驚きを隠せず
彼女の話に聞き入った。


一方、推薦組と文系選択組の母は
この話に最初だけ反応して
すぐに興味は試合観戦へと移っていった。

そんな中、私と同様に、
試合そっちのけでその話に
食いついた母がもう一人いた。
それはヒデキの母だった。

9月にマサヒロ母から
その塾に誘われたときは断ったヒデキ母も 
「効果はてき面!」
というこの事実に
すっかり魅せられ、
心が動いたようだった。

ヒデキは付属大の
セイフティーネットを持っていたが
国立大学が第一志望で
一般受験を考えている子だ。 

部活ではヒデキのポジションをやれる子が他におらず、
高3の冬になるというのに
試合も練習も休むことは許されない状況で
受験勉強が思うように進まず、
ヒデキ母は気が気じゃなかったのだ。

ヒデキ母はマサヒロ母から
塾の電話番号などを聞き出している。

すかさず
「私も私も!私にも教えて!」
と必死に頼んだのに、
「marimcreamの家からは遠いから・・・無理だよ・・・。」
と言われてしまう。

確かに塾は果てしなく遠いし、
部活もまだあるし、
ウチは学校へもかなり遠い・・・。

やはり無理なのだろうか。

このマサヒロ母は、
以前から熱心にいろいろ探し、
ちょっとでもよさそうなことは
次々試す人だった。

母がなんでそうなったかは、
マサヒロがうちの息子と同じような
落ちこぼれだったからじゃないかと思う。

マサヒロは高校になるや否や、
トーマ〇を始めた。
(母が勧めたのだと思う。)

いい先生を選ぶと高いのよ、

と嘆きながらも、
これで何とかなるならと思うのか
しばらく続けていた。

でもマサヒロが高2になると、
母はトーマ〇を止めて
今度はT大生の家庭教師を付けた。

本当のところは知らないが、
なぜ変えたのか聞いたら、
トーマ〇は高いから・・・
と言っていた。

ウチが物理で9点をとって
「もうダメだ、もうダメだ」と騒いでいた時は
「T大家庭教師、紹介しようか?」
と情報をくれたから、
T大家庭教師にはそれなりに
満足していたのだと思う。


この他にも、
後から聞いたことだけど、
学校の先生にも相談していて
英語などは学校の先生から
特別な宿題をもらったり、
勉強方法などの指導を
受けていたというし、
とにかく熱心で
いつもピカピカのアンテナを立てて
リサーチしているような母だった。

トーマ〇やT大家庭教師には
何の教科をどんなふうに
見てもらっているのかと
聞いたことがあったけど、
確か
どの教科でも見てもらえる先生で、
定期試験前などは
教科を問わず
解らないことをなんでも聞いてよかったし、
普段は先生の指導で
受験勉強をするような話だった。

基本的に指導する科目は
受験に大きくかかわる、
数学と物理が中心だったと思う。

T大家庭教師は
よくある教材を買うような
スタイルではないし、
合わなければ何度でも
交代できるシステムだと言っていたけど、
今一つ思うようにいかなかったのか
マサヒロ母は、
T大家庭教師を続けながらも
いい先生を探すことは止めなかった。

そしてとうとう、
「イケメン先生」 
を探し出してきたのだ。

私はその個別指導が諦めきれずに
試合が終わった息子に
このことを話した。

すると
なんとその個別指導の話は
息子もちゃんと知っていた。

「ああ、マサヒロが言ってた。物理だろ?」
しれっと言ってんじゃない。
しれっと。

でも、
羨ましいと思っていたなら話は早い。

「知ってたんだ!どう?あなたも行ってみない?」
私は思わず畳みかけるように問いかける。
なのにイチローは何の欲も見せずに
「ヤダ。遠すぎる。」
と一刀両断。

えー。
簡単にわかるようになって
ずるいな、いいな、とは思わないの?

諦めきれない私は
「遠いのは確かだけど、実力が上がるのも確かなら行く価値あると思うけどな。」
とメリットを強調する。

イチローは
「ヤダ。無理。遠い。」
とただオウムのように繰り返す。

力のある先生って、
いそうでいない。

私はマサヒロと、
ヒデキの行く塾のことが
いつまでも気になっていた。

でも悩んでいても仕方ない。
そうだ。ウチの近くにも
いい先生がいるかもしれない。
とにかく探してみよう。 
私も動いてみよう。
マサヒロ母の満足そうな笑顔は私を突き動かすのに十分だった。



48話 子の偏差値20の差は、母のリサーチ力の差。


過保護は良くない。
良いわけがない。
子に自分で考させ
失敗しても自力で立ち上がらせ、
声はかけても手は貸さず、
でも決して無関心になることはなく、
心は常に放さずよりそい、
励ましながら温かく見守るのがいい
・・・と。


そんなことは、
こんな私でも知っている。
でも・・・だ。

イチローとどっこいの、
偏差値30台だったマサヒロの物理が
初冬に返却された模試では
偏差値56になっていた。
偏差値20のアップだ。
イチローは偏差値30台のまま。

この二人、9月の末から
ずっと一緒に部活をしてきたわけだけど
いったい何が違ったのか。

母が励まして温かく見守ったから、
なんかじゃない。
偏差値20アップは
明らかに
母が、力のある先生を探して
息子につけた結果だった。

親のリサーチ力が優れていると、
子の偏差値が20も増えるって何?
そんなことがあっていいの?

能力の差でもなく、
勉強時間の差でもなく、
どの先生が教えたかの差。
でもこれが現実なのだ。

自分が子の立場ならどう思うだろう?
「いいなあ」って、
いや
「ずるいよなぁ」って、
思うんじゃないだろうか。

マサヒロ母は、
いけないことをしたわけじゃない。
ただ、いい先生を見つけただけだ。

いい先生を見付けてくるのが
過保護だろうか。
そんなことはないだろう。

何て言うか・・・、
こういう事実を目の当たりにすると
いい先生を見つけられない
私のリサーチ力の低さが、
私の努力の足りなさが、
息子の成績を低いままにしている気がしてくる。

私は自分のふがいなさを強く感じた。
と同時に
イチローが赤ちゃんの時の
私の失敗がフラッシュバックする。

私はイチローが赤ちゃんの頃、
抱っこひもでマンションの階段を上っていた。
抱っこひもでだっこしているので
足元が見えない。
きちんと足を上げたつもりが
赤ちゃんのおしりが私の足にあたり
どうやら
上げ方が足らなかったらしく
私は階段につまずいてしまった。

そして
まだほんの赤ちゃんだった
イチローの頭を
コンクリートの階段の壁に
ぶつけてしまったことがある。

とっさのことではあったけど
なんとかイチローを守ろうと、
まず、私の膝、
そして私のおでこが先に
コンクリートに当たった。

手はむなしくも宙をかき
イチローの後頭部を
100%守ることはできなかった。

今でも息子が、
つまらない引き算を
間違えたりすると、
やはりあの時、
脳に傷でもつけてしまったのではと
泣きたくなるほど悩んでしまう。

当時のイチローは
頭がぶつかった後は
すぐにギャン泣きしたけれど
じきに泣き止み、

ぶつけたところが腫れることもなく、
触れても痛がることもなく、
全く普通に飲み、普通に寝て
機嫌も普通だった。

だからそのことが原因で
計算をミスするようになったと
考えるのは
冷静に考えれば
馬鹿らしいことなのだろうけど
母親というのは
そんなものだろうと思う。

自分の失態で
子に不利益が生じることなど
我慢できない生き物なのだ。
親がいい先生を見付けられたかどうかで
偏差値が20も差がついたとなっては
もうじっとしてはいられない。

私は
ユリウ〇に電話をかけてみた。
N研で中学受験をして
〇大付属という
中高一貫校に通っていて
現在高校3年生。

ユリウ〇は
大学受験にも対応しているか、
から始まって
理系を選択しているが、
成績が恐ろしいほど悪いこと。
〇進に通っているけれど
成績が上がらないことを告げ、
過去問対策を中心とした

数学の指導を頼みたいけれど
こんな子に
対応できる先生はいるかと・・・。

電話でいきなり話すのは
ためらわれるような、
情けない話だけれど
格好つけていても始まらない。

まあ、
ユリウ〇はもともと成績低迷者を
ターゲットにしているわけだから
こんなドン引きな内容であっても
ひるまない。

あちらも商売。
たとえ適した指導者などいなくても
「そんな指導ができる神的人間はおりません。」
なんていうはずもない。

実際、在籍している学生は
N研卒がほとんどなので
中学受験して
中高一貫校でもまれた経験のある、
つまりイチローの指導には
うってつけの人材で、
しかも、
超一流大学在学中の学生が
本当にたくさんいるらしかった。

工学部を考えているのなら、
TK大の学生はどうかと
言ってもらう。

私は、
「矛盾するようで申し分ありませんが、あまりに優秀すぎて、なんでこんな問題がわからないのだろう?と言うような先生は合わないと思うのですが・・・。そのあたりはどうでしょうか。」
というと受付担当の女性は少し考えて

「そういうことであれば・・・。息子さんに合いそうなのは・・・
〇大なんていいのではと思います。指導もとてもうまいですが、ただ指導するだけではなく、話も面白く、人生相談みたいな感じになって、学校の成績が低迷している子に人気があります。」

〇大か・・・。
TK大と比べるとちょっと頼りない気もするけどな。

そんなやり取りをしていたら
横で電話の内容を聞いていた副室長が
たまらなくなった様子で
半ば無理やり電話に出てきた。

「どうも。お電話変わりました。
ユリウ〇の〇〇教室、副室長の〇と申します。
お電話の内容、だいたい聞かせていただきました。」
私は、突然出てきた副室長に
面喰いながらも、
いろいろと不安に思っている内容を
手短に告げる。

副室長の受け答えは的確で
なかなか納得できるものだった。

そして
「よろしければ一度、教室にお越しになりませんか。」
となり、
私は一人でユリウ〇へ向かうことになる。

私の気持ちは
「マサヒロがね、物理が解る!って言い出したの!」
という母友のセリフを聞いてから、
すっかり個別指導に傾倒していたが
イチローが
現在お世話になっている塾は〇進だ。
二年近く足しげく通っている。

私はそこの担任とやらにも電話を入れ、
ユリウ〇へ相談に行くのと同じ日に、
面談の予約を入れた。
せっかく通っているのだから
〇進のできることや指導方針も
正確に確認しておきたい。

そして
12月〇日 
18:00~
〇進にて、
担任と面談
18:30~
ユリウ〇にて、
副室長と面談

こんなスケジュールとなった。
〇進とユリウ〇は
信号2つ分くらいしか離れていなかった。



49話 〇進からユリウ〇に切り替える?

12月〇日
17時55分
私が〇進の受付に申し出ると
アルバイトと思しき学生の
ぎこちない対応を受け、
カウンターの前に立たされたまま
しばらく待たされる。

そして約束の時間が少し過ぎたころ
やっと6人掛けのテーブルのある
会議室のような個室に通され
ここで待つように告げられた。

しばらくすると
20代後半かな?と思われる
まだ若い女性が
なにやら資料をもって
入ってきた。

〇進はDVDを勝手にPCで見るスタイルの塾だ。
好きな時間に行って、好きなだけいて、好きな時間に帰る。
この人はイチローと
どのくらい話したことがあるのだろう。
挨拶と
困っていることはない?
以外の指導をしてくれたことがあるのだろうか。

イチローの偏差値はひどく低いので
こういうデータのみでものを判断する担当さんと
お話をすると、
どういうことになるのか
目に見えているのだが、
その期待を全く裏切らない面談となる。
とりあえず進捗報告で
週何回くらいきて、
何時間くらい滞在しているとか、
いまどんなところをやっているとか、
聞かなくてもわかることばかりの報告で
これ以上話をしても、
この担当さんの力で
イチローの成績が
あがることはないだろうなと思われた。

イチローにはこれから終えるには
厳しい量のDVDが残っていたが、
期間内に見ることができなかったDVDを
来年度に持ち越すことはできないというし、

もし、浪人になったとしても
ここは現役予備校なので、
浪人生の想定はされておらず、
要するに辞めてもらうしかないということだった。
どうしても、と希望すれば
残れないこともないみたいだったけど
そうまでして残ってここで浪人しても
何もいいことはなさそうだとすぐにわかった。

過去問については
データがある大学のものは
無料でもらえるという事なので
そこは利用できそうだ。

でも自分で解いて、
わからなかったらどうすればいいかと言う話になったとき、
チューターが教えられるものは対応します。
と言う返事だったけど
物理も数学も教えられるチュータが
ずっといないのにどうやって聞けばいいんだ?
いっそ、
過去問のフォローはしておりません。
と言った方がいいのじゃないかと思うけど。

それはこの塾が悪いのではなく、
この仕組みに
イチローが合わなかっただけだし
この面談も
こんな風になるんだろうな、
と思った通りだったので、
今更驚くこともない。

ユリウ〇に切り替えることに
迷いもためらいも感じずに済んだ。
こんな仕組みだったから
どっちつかずにならず
かえってよかったのかもしれない。

私は
「解りました。ご面倒をおかけしますが、これからもよろしくお願いします。」
と表向きはきれいな挨拶をして
後腐れなくその面談室を後にした。

そしてその足でまっすぐユリウ〇へと向かう。
ユリウ〇への階段を上がり、
受付で名を告げると、
しばらくここで待つようにと
自習コーナーのような
衝立がある机の
椅子の1つをすすめられた。

左隣では高校生を思しき子が
なにやら問題を解いており、
右隣では
小学生と思しき子が
なにやら問題を解いていた。

栄冠への道
と言う懐かしい復習教材も見え隠れする。
ユリウ〇は、N研のフォローがメインと
言ってもいい塾なので小学生がとても多い。

Nバッグを背負って頑張っていた
かわいいイチローがよみがえる。

そうだよな。
そもそもN能研のテストご招待の
赤いハガキ から始まったんだ。

あれをみて
「ぼく、これ受けたい!」
と言ったのがすべての始まりだった。

あれさえ届かなければ
イチローは
中学受験もしなかっただろうし、
つまり、
中高一貫に進学もしなかった。
もしかすると
落ちこぼれることもなかったのかもしれない。


そんなことを考えていたら
副室長が出てきて
奥の4人掛けの
白い打ち合わせテーブルに
案内してくれた。

軽い自己紹介のとき
「大体ウチの子がこうなったのは、全部N研のせいよ!」
とすごんで見せてもよかったのだが
淑女の私はそんなことはしなかった。

副室長は
「あー、じゃあN研に通っていたのは、ちょうどTが室長していたころですねぇ。今××で室長してますよ」
と、昔懐かしいN研の室長の名を挙げた。
「そうなんですか。ウチ、T先生には結構相談に乗っていただいたんですよ」

ここはN研とは違うビルで
初めてきた場所なのだが、
なぜか古巣に帰ったような
安堵感があった。

N研時代にもクラス担任はいたのだけど
イチローは偏差値的に問題児だったので
室長に面談等々を
してもらっていたのだった。

「今年のR4一覧ありますけど、見ます?これ、N研卒業生の方に差し上げると皆さん面白がられるんで。」
副室長はおもむろに、
昔よく見た真っ白いA3の、
ちょっとしっかりした紙に
バーッと中学の名が横書きにされた
一覧表を差し出した。
(R4一覧=合格可能性80%の偏差値で、受験日ごとに中学を羅列した表)

息子の学校は
御三家&早慶の受け皿あたりの位置に
しっかり陣取っているようだった。

そこと迷った中学は・・・
ああこのあたり。

えー、この学校こんなに下がってる。
私がR4に見入っていると
副室長が聞いてきた。
「ところで大学なのですが、どのあたりをお考えですか?」
そうだ。
R4見に来たのじゃなかった。
私は顔を上げて、副室長を見ると
「時間がないのは解っています。
息子は驚くほどの愚息です。
お願いしたいのは数ⅠAと物理Ⅰのみ。
それもセンターレベルをお願いします。」
と告げた。
「センター?」
このどん詰まりに駆け込んできて
この母は一体何がしたいのだろう?
そんな不思議そうな目で
副室長が私を見つめる。

私は
「数Ⅲが間に合いそうもないので、
数Ⅲのないセンターで
私大を押さえることを考えています。
一般受験もすることになるのでしょうが、
正直どこにも受からないと思います。」
私は 栄冠めざして という 
河合塾が出している
合格ボーダーの載った、
黄色い本を開いた。

その本は大学版のR3だ。
(R3=合格可能性50%)
そして
「ほら。ここ。60%でしょ?ここなんかも。」
名のある大学だが、
そこであまり人気のない学部を
私は次々指さしていく。

それを見た副室長は言った。
「〇大学付属ですよね?
付属の大学へは行かないのですか?」

私は スーッと少し息を吸い
「行くならユリウ〇なんか来ねえよ!」

と言おうかと思ったけど
淑女の私がそんなことを
口にするはずもなく

粛々と推薦を断った経緯を話した。
確かに付属の方が偏差値は上だ。
不思議に思って聞いてくるのも無理はない。


私の推薦辞退の顛末を聞いて
すぐに状況を掌握した副室長は
「そうですか。
付属で上へは行きたくない、
と言う生徒は珍しくありませんよ。

それに在学校は付属、
というよりは中高一貫進学校ですしね。」
と言った。

そうそう。
イチローが進学するときのN研の指導も
「私大の付属を選ぶことはもったいないです。
特に男子。
これからの6年間で大きく伸びます。
私大は受けたら受かる実力がついているから、そのときチャレンジすればいいのです。今の段階で、大学を決めてしまうのはもったいない。難関国立大への可能性を大きくするために、受験対策をする進学校への進学をおすすめします。」
とかなんとか相当あおってくれたよね。

私は
「進学校、落ちこぼれれば、意味は無し」

とすぐに一句うかんだが、
話が長くなるのでここで発表するのは
やめておいた。

「一般受験で
行きたかった大学へ挑戦できれば
例え落ちてもとりあえず
息子も納得すると思うんです。
その上で推薦で行けた大学に
自力で合格して進学するのなら
男としてのメンツが立つんですよ。」

男子校だからか、
男だからか知らないが、
もう、学歴どうこうとか
あの大学へ行きたい、
あの勉強がしたいとかより
メンツを保つ勝負 
みたいになっていた。

対友達しかり。 
対先生しかり。

イチローにはそういう意味では
学校全体が敵だった。



オンラインサロン情報

marimcreamの医学部オンラインサロン

marimcreamの医学部オンラインサロン

1,000円/1ヶ月ごと
サロンページを見る

サロン紹介

医学部受験対策、留年対策。そして医師国家試験の対策、医師になった子の結婚出産子育て時に親はどう応援すべきかなど、悩みや情報を共有していくサロンです。医師の生声も聞くことができます。
運営ツール
DMMオンラインサロン専用コミュニティ

あなたにおすすめの他サロン

おすすめサロンをすべて見る
ページトップに戻る