*無料記事<5>*

テキスト

*無料記事<5>*

wine + you =? <1> by松本昭生


<ソムリエプロフィール>

松本 昭生 / Akio Matsumoto
2019年L’effervesenceを海外移住のため辞職。
11月よりニューヨークでビバレッジコンサルタントとして職を開始。{Torien NY}

<ワイン情報>
生産者:Domaine de Villeneuve /ドメーヌ ド ヴィルヌーヴ
ワイン名:La Griffe / “ラ グリフ”
葡萄品種:Grenache(50%),Mourvèdre(20%),Cinsault(20%),Syrah(10%) /グルナッシュ、ムールヴェドル、サンソー、シラー
ワインタイプ:赤ワイン
生産国:フランス
生産地:Châteauneuf du Pape / 南フランス
ヴィンテージ:2016
インポーター:Diony 株式会社
参考小売価格:¥3,900-


 実りの秋に入り食材達も多彩な表情を見せ始めた今日この頃、山では香り高い野生の木の子の山の幸に、海では脂の乗った魚が食卓を彩るこの季節、なによりもメインを飾るのは解禁を迎えるジビエ肉の味わいでしょう。山の生き物たちは山の色合いに合わせて木ノ実や干し草などを食べ始めるこの季節は、味わいも脂の乗りも格別で、レストランではこの季節の風物詩となる。当然レストランのソムリエたちも、季節の変わり目に合わせてオススメするワインを変えてゆくのでしょう。

 自分のこの季節のオススメは、なんと言ってもローヌ地方のワイン。ご存知の方も多いかとは思いますが、毎年高騰するブルゴーニュ、ボルドーに比べると価格変動は穏やかでありつつ、高いクオリティーを保っている産地です。

 今回ご紹介させていただくのは、シャトーヌフ・デュ・パフというフランス南ローヌ地方屈指の銘醸地で、フランスでも特に歴史あるワイン産地。「法王の新しい城」という、なんとも厳格な名をもつ唯一無二のワイン産地でもある。ここでは13品種の葡萄の使用が可能な点と、複雑な土壌構成に特徴がある。葡萄品種はグルナッシュがメインとなり、その他に様々な品種の織り成すキャラクターが輪郭を与える。土壌はベースとなる水捌けの良い痩せた赤土に、大きな丸石が散らばる。土の中の丸石は通気性を、表面の石たちは日中の太陽熱を蓄え、夜には保温の役目を果たすためブドウの成熟に大きく役立つ。しっかりと根を張った葡萄たちは、点在する様々な土壌由来のミネラルを取り込み一層複雑な深みを表現する。

 ここまで聞いていれば生産者や区画、ヴィンテージによって無限の可能性がうかがえる非常に魅力的は産地に聞こえるであろうが、今回のワイン、ドメーヌ・ド・ヴィルヌーヴ、ラ・グリフ 2016は、ローヌ地方のカテゴリーでいうと地酒(ヴァン・ド・フランス)にあたる。ここまで説明しておいて、このワインは原産地呼称名ではシャトーヌフ・デュ・パフを名乗っていないワインという、なんとも的外れな説明をさせていただきましたのは、複雑な事情があるからなのです。

 このワインは上記の産地に隣接する小区画で、強くテロワールの影響を受けた、知る人ぞ知るハイクオリティーとコストパフォーマンスの素晴らしいワインとなっているのです。(今回は紹介出来なかったが、彼らのシャトーヌフ・デュ・パフもまた素晴らしいワインなので試していただきたいワインの1つである。)

 そしてもう一点、彼らのワインはいわゆる自然派ワインであり「病気やウイルスに対して化学薬品という一時的な解決策ではなく、ビオディナミ栽培でブドウの樹の中にあるエネルギーを最大限に引き出すことにより、病気やウイルスに打ち勝つのだ」という造り手の言葉通り、ワインはエネルギーに満ちた果実味を宿す。
 また、醸造に対するアプローチも最小限に抑えた考えの持ち主で、地下6メートルの温度変化が少ない洞窟の中で、陶器に覆われたセメントタンクで自生酵母のみで発酵、ワインの果実味を保全する為に過度な色素やタンニンの抽出を促進しない。ピュアな果実味とクリーンさが印象的な、南フランスの中でも秀逸なオーガニックワインとなっている。

 ワインだけでも十二分に楽しむこともできるのだが、料理との組み合わせでも多彩な面を見せてくれる。冒頭で説明したジビエ肉との相性が良い。ジビエ肉は、彼ら(猛禽類)の生前食べていたものにより肉自体に独特の香りが乗り、それは肉の個性とも取れるが、気になる方も多い。その場合ラ・グリフのような果実味だけでなく土壌由来の鉄のニュアンスや、亜硫酸(酸化防止剤)添加量の少なさからくる、口当たりの柔らかさや、程よい熟成感などがジビエ肉のネガティブな側面を包んでくれる。ソースを付ければ、なお相性が良くなる。スパイスやドライフルーツなどをソースに使えばワインとソースの味わいが近くなりグッと相性が増す。ご家庭では、サラミやシャルキュトリーなどの脂や塩の味わいに相性が良い。

 ワインとは、名前やカテゴリーにとらわれず広い視野で色々なものに耳を傾ければ、最も簡単に新しい世界が開けると思う。この記事を見て少し興味がわいてきたなら、秋の長夜に大切な人とワインを楽しんでいただきたい。



<ソムリエプロフィール>
松本 昭生 / Akio Matsumoto


1988年熊本出身
2015年より東京 西麻布のL’effervesence にてソムリエとして自然派ワイン、日本酒を中心にワインの仕事をスタートさせる。
2019年L’effervesenceを海外移住のため辞職。11月よりニューヨークでビバレッジコンサルタントとして職を開始する。
{Torien NY}

受賞歴
World of fine wine List 2017
World of fine wine List 2017
Most Original Wine List in the World 2018 
Best Champagne & Sparkling Wine List in the world 2018


オンラインサロン情報

SommeTimes

SommeTimes

1,000円/1ヶ月ごと
サロンページを見る

サロン紹介

ワイン専門のオンラインサロン。初級者から上級者まで幅広いワインコラムを配信しています。
運営ツール
DMMオンラインサロン専用コミュニティ

あなたにおすすめの他サロン

おすすめサロンをすべて見る
ページトップに戻る