認知症による「資産凍結」 -家族の預金が「開かずの金庫」になる前に-

テキスト

認知症による「資産凍結」 -家族の預金が「開かずの金庫」になる前に-

本記事で分かること

- 認知症によりなぜ資産が凍結されるのか
- 法定後見制度の不自由さ
- 元気なうちにしか打てない資産を守るための具体策

1.認知症による資産凍結リスク

「親の通帳の場所も、暗証番号も知っているから大丈夫」。もしそうお考えであれば、その楽観視こそが最大のリスクかもしれません。
銀行や証券会社は、口座名義人が「認知症により意思能力を喪失した」と判断した場合、その口座での取引や入出金を制限します。このような措置により口座内の財産が事実上「凍結」されることになるのです 。これは意地悪ではなく、本人の財産を詐欺被害等から守るためになされるものです。一度凍結されると、たとえ家族であっても、また、目的が本人の医療費や介護施設の入居一時金の支払いのためであっても、資産を引き出すことはできなくなります。

 想像してみてください。目の前に親の資産があるのに、親のために使えない。結果、数百万円単位の介護費用を、あなた自身の教育資金や老後資金から持ち出し(立替払い)続けなければならない事態を。これが「資産凍結」による家計破綻のシナリオです。
 
 また、影響は預金をはじめとする口座内の資産にとどまりません。「親が施設に入ったから、誰も住まない実家を売却して費用に充てよう」。そう思っても、所有者である親に意思能力がなければ、不動産の売買契約も締結できません 。売ることも貸すこともできず、固定資産税と維持費だけが垂れ流しになる「負動産」の塩漬け状態も発生しうるのです。

2.「法定後見制度」は万能薬ではない

凍結された資産を動かすほぼ唯一の手段として「法定後見制度」(民法843条以下)があります 。しかし、この制度はあくまで本人の財産保護を至上命題として設定されています。成年後見人らは本人の財産を本人のためだけに管理・保全する義務がありますので、本人の財産を家族のために使うことや、相続税の節税対策のために使うことは許されないのです。

 具体的には家族旅行の費用や孫への入学祝いといった「家族のための支出」は厳しく制限されることになります。「自分の親のお金なのに、他人に管理され、自由に使えない」。「親の資産をこれまでどおり柔軟に活用したくて法定後見制度を活用したのに期待どおりにいかない」といった声が聞かれる所以がここにあります。

3.「家族信託」という選択肢

では、どうすればよいのでしょうか?

 その答えの一つが「家族信託」です 。これは、親が元気なうちに、信頼できる家族に資産の管理権限を託す契約です。これにより、万が一親が認知症になっても、託された家族の判断で預金の引き出しや不動産の売却が可能になります。

 しかし、この家族信託も「認知症になってから」では契約できません。本人の判断能力が健全な時期にしかできない対策なのです。下表が法的後見制度と家族信託の主な違いの概要となります。「まだ早い」と思っている今が、唯一の対策期間です。


本記事のまとめ

資産凍結

認知症等により意思能力がないと判断された場合に、金融機関等の措置により預金の引出や取引ができなくなる状態。


法定後見制度

判断能力が不十分な人を支援する法的制度だが、柔軟な資産活用が難しい場合もある。

家族信託

元気なうちに家族に財産管理を託す契約。成年後見制度よりも柔軟な財産管理・承継が可能なこともある。

ネクストアクション

推奨行動

まずはご家族が元気なうちに「資産の棚卸し」を行いましょう。

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MEDICOG-LINKでのセミナー受講にて法定後見制度や家族信託に関するより実務的な知識を得ることができます。

監修・著者:手代木 啓(弁護士)

所属:弁護士法人大江橋法律事務所パートナー

保有資格:弁護士、NY州弁護士

専門分野:相続、事業承継、M&A、知財、IT


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