認知症を原因とする遺産分割トラブル -「争族」を回避するために-

テキスト

認知症を原因とする遺産分割トラブル -「争族」を回避するために-

本記事で分かること

- 介護していた子の「使い込み」が疑われる構造
- 相続人の中に認知症の方が含まれていた場合の遺産分割問題
- 「争族」を回避するための対策

1.あの時のお金どこに消えた?

「うちは財産なんて家にないから、相続で揉めることなんてない」。そう思っていませんか?令和6年の司法統計によると、調停や審判など裁判所で争うこととなった相続争いの中で、全体の約76%は遺産額5,000万円以下のごく普通の家庭で生じています。中でも認知症の親を持った家庭でよく生じるのは「使途不明金」を巡る泥沼の争いです。

 例えば、親が亡くなり、遺産分割協議が始まったときに別居していた兄弟からこう言われることがあったとします。「通帳を見ると、毎月20万円も引き出されている。母さんの年金で十分暮らせたはずだ。お前が使い込んだんだろう? その分を遺産から差し引け」。もしあなたが介護を一手に引き受けていた同居の子だとしたら、これほど理不尽なことはありません。

 しかし、認知症が進んだ親の生活費、医療費、介護用品代、施設代等が「親のために使われた」という明確な証拠がなければ、法的には「使途不明金」として扱われ、最悪の場合、不当利得として返還を求められるリスクがあるのです。

2.終わらない遺産分割問題

上記は、被相続人(相続される者)が認知症だった場合に起こり得る問題ですが、相続人(相続する者)の中に認知症の方が含まれている場合のトラブルも考えられます。これが、終わらない遺産分割問題です。

 遺産分割協議は相続人全員の参加と合意が必要であり、これらがなければ無効となります。この遺産分割協議は重要な財産を処分する行為ですので意思能力がなければこうを有効に行うことはできません。そのため、認知症で意思能力を持たない相続人がいる場合には、その人のために後見人等を選任する必要が生じ、手続が数ヶ月から数年単位で停滞することも珍しくありません。

 遺産分割協議が終わらないことで相続財産を処分できないだけでなく、相続税申告にも影響が出ます。相続税の申告期限までに遺産分割が確定していないと相続税に関する配偶者の税額軽減等の優遇措置が受けられない可能性も出てくるのです。

3.「意思」の記録化と共有

被相続人や相続人が認知症である場合の相続問題を防ぐためには、相続が発生する前における「意思」の記録化・共有が不可欠です。
例えば、使途不明金問題であれば、介護等の親のためにかかった費用の記録ははもちろんのこと、「なぜそのお金が必要となったのか」というストーリーを親及び親族間で共有することが重要です。

 また、推定相続人(被相続人の死亡までに何もなければ相続人になる者)の中に認知症疑いの方がいる場合には、被相続人としては遺言書を作成することが有効な対策になり得ます。被相続人が有効な遺言書(例えば公正証書遺言)を残していれば、原則として遺産は遺言どおりに分割され、遺産分割協議は不要になります。また、被相続人のそのような意思(誰にどの財産を遺すか、その理由)を推定相続人と共有することも相続を円滑に進めるための有効な手段です。

 親が亡くなった後も良好な関係を築いていくために、被相続人である親の方も、残される家族の方も、日頃から財産処分に関する事項についての適切なコミュニケーションをとることが大切です。

本記事のまとめ

使途不明金

被相続人(親)の生前に引き出された使途の分からないお金。介護や同居していた親族による使い込みを疑われる要因となる。

終わらない遺産分割問題

相続人の中に認知症による意思能力のない者が含まれている場合に生じる問題。意思能力がない場合には遺産分割協議のために後見人等を選任する必要があり遺産分割協議が長期化する。

遺産分割協議

遺産の分け方を決める話し合い。相続人全員の参加と合意が必要であり、一人でも認知症による意思無能力がいるとそのままでは成立しない。

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監修・著者:手代木 啓

経歴・実績:弁護士法人大江橋法律事務所パートナー

保有資格:弁護士、NY州弁護士

専門分野:相続、事業承継、M&A、知財、IT


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