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小説でキャラの魅力を引き出す法則とわかりやすさが矛盾した場合の解決法

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小説でキャラの魅力を引き出す法則とわかりやすさが矛盾した場合の解決法

Q.作家志望の方からの質問

私は主人公とどんな関係性であろうと、物語に大きく関わらないキャラは名前を一切出さずに書いてきました。


ですが、クラスメイトや同僚など主人公が名前を知っていなければおかしいモブキャラは名前を書いた方が良いのではと、迷いが出てきました。


プロ作家さんのご意見をお聞きしたいです。よろしくお願いします。
どんなふうに書いてきたか、一応例文を書いておきます。


(書いてきた文章の例)
「冨岡さんは一人でご飯を食べて下さい」
 胡蝶の言葉に別の仲間も賛同する。
「うむ! 俺も冨岡とはメシを喰わん!」
 彼とはずっと仲良くやっていたつもりだったが、庇ってもらえなかったのだ。


↑以上となります。


「仲良くやってきたつもりなのに名前を出さないのは不自然だ!」と読者に突っ込まれないか心配です。


A.プロのラノベ作家が回答します。

とてもよいご質問ありがとうございます。
今回頂いた疑問には、小説を執筆するにあたって重要になってくる以下の二つのテクニックの話が関与しています。


①著者は読者に対し、注目させたい情報が何かが分かるように言い回しに工夫を施す必要がある。


②キャラクターに活き活きとした魅力を与えるために、著者はキャラクターに一貫性のない行動を取らせてはいけない。


上記①と②の2つです。


それぞれ簡単に説明すると、まず①の方ですが、


例えば「とある少女が靴を履いている。その靴は赤色である」という情報があったとして、同じ情報でも読者に何の情報を注目させたいかによって文章が変わってくるというお話になります。


この中で一番読者に注目している情報が「靴は赤色である」という情報であった場合は、
『少女が履いている靴は、赤色だった』
という文章が考えられます。


情報として超重要だからより強くスポットをあてたいという場合は、『少女が履いている靴は、鮮明な赤色だった』『少女が履いている靴は、光沢が美しい赤色だった』『少女が履いている靴は、血に染まったような赤色だった』という文章も考えられます。


しかし一方で、もし物語の進行上読者に注目して欲しい情報が「靴をはいている人物=彼女である」という場合は、


『その赤い靴を履いていたのは、彼女だった』


という文章になります。


より強くスポットを当てたい場合には、『その赤い靴を履いていたのは、まさかの彼女だった』『その赤い靴を履いていた人物は、あろうことか彼女――鈴木花子だった』という文章が考えられます。


特に人物名が出ると、よりこの文章における重要情報が靴の色ではなく人物の方であるということが際立つこととなります。


なので裏を返すと、例えば「靴の色は赤い」という情報を読者に覚えておいて貰いたいにもかかわらず、『その赤い靴を履いていたのは彼女だった』という文章を書いてはいけないということになります。


なぜならこの文章自体が、情報重要度の観点からスポットが「彼女」にあたるような構造になっているからです。


読者によっては「赤い」という文字を読み飛ばすこともあり、「赤い」という言葉に注目できるような構図にはなっていないからです。
(なので、著者としては読者から批評を受けたときに「それはちゃんと本文で説明してるじゃん、読んでないの?」と思うことがあるかもしれませんが、これは大体「確かに書いてはあるけど注目されるような工夫が欠落している」場合に発生することが多いです。)


そして話は変わり②の方についてですが、これは単純で「キャラクターに一貫していない行動を取らせるとキャラクターが活き活き見えなくなる」という現象です。


例えば、

「甲子園に絶対に出たいという夢をもった高校一年生の野球部の少年が、何故か入部しているだけで素振りの練習などを一切していない」

「ある女性キャラクターがある男性キャラクターに恋心を寄せているが、その女性キャラクターがその男性キャラクターの名前を覚えていないシーンがある」

等があげられます。


「甲子園目指してるのに何で練習してないの?」「好きな男性キャラクターがいるのに何で名前すら覚えてないの?」という不和が、「この作品の著者が描くキャラクターはリアリティがない」という感想につながり、結果としてキャラクターが活き活きしていないように思われてしまいます。


逆に、甲子園を目指しているなら素振りのシーンがあったり(または素振りのシーンはないが、何万回と素振りしなければできないだろう血マメが手のひらに大量にできているシーンがあったり)、また好きな人がいるならばその人の名前はもちろん誕生日や血液型、好きな食べ物を諳んじて気持ち悪いくらいにペラペラ言える方が、キャラクターとしての一貫性が生まれるのでキャラクターが活き活き見えてくるという現象が生まれます。


そしてこれら①と②を踏まえた上で頂いた質問に戻ります。


例えば主人公が作中でモブキャラ(だけど主人公と仲は良い)に話しかけるシーンがあったとします。


この時、②の「一貫性を持たせる」という事を気にするのであれば、主人公はそのモブキャラに話しかける時にその名前を呼んであげてしかるべきということになります。


名前を不自然に呼ばなければ、「主人公はこのモブキャラと仲が良い。しかし名前を呼んであげない」ということが、本当に仲が良いのか分からないという若干の矛盾感を呼ぶため、②の規則よりこの主人公から若干活き活きした感じが消失される原因となるのです。


しかし①の観点から考えると、今別に読者にはモブキャラの存在よりももっと注目して欲しい情報があり、ここでモブキャラの名前を出してしまうと「注目して欲しいのはモブキャラだよ」という雰囲気が出てしまい、この「重要な情報にスポットを当てる」という工夫が成されていないことになってしまいます。


なので、この手の「名前を呼ばなければ不自然だし、かといって変に呼ぶとそれはそれで面倒臭い」問題は、①を守れば②が違反になり、②を守れば①で違反するというかなり難しい状況にいるということが本質的な問題となります。


その上で解決策となりますが、


結論的には①と②、大切にしたいのはどっちかということをよく考えるということが重要ということになります。


例えばこの会話の目的が『★』という重要な情報を読者に知って欲しいということが目的であれば、①の遵守が第一目的となり、②は重要ではないが何とか回避しなきゃ的な感覚となります。


つまり『★』という情報を目立たせることが本目的であるが故に、そのモブキャラの名前を変に出してそっちに注意を取らせたくないという流れになるので。


例えば修正案としては、

「なあ、お前知ってる?」

「……あのさ、○○(主人公の名前)。人を呼ぶ時はちゃんと名前で呼ぼうぜ」

「面倒だからいいだろ。それよりお前、『★』って知ってるか」


という会話の流れとして、情報『★』に注目させながら主人公がモブキャラをお前と呼ぶことを事前に正当化させるという手段があります。


また例えば、話し相手が一人だから名前を呼ばなければいけないのであって、話し相手を複数にする(3~4人で話していることにする)ことで、「お前ら」と呼ぶ流れを自然なものとして名前呼びを回避するという方法もあります。


また更に、『★』という情報を出すだけで良いのであればモブキャラと会話する以外の方法を考えるのもアリだと思います。


また、もし②の「名前を呼ばない違和感」の解決の方を優先する=つまりモブキャラであろうが名前は出した方が良いということを優先して考える場合は、①の「重要な情報以外にスポットがあたらないように」を何とか回避できればよいという考え方になるため。


「なあ鈴木。お前に一つ聞きたい事がある」

「何だ。俺の出生の秘密についてか」

「違えよ。誰がお前の出生に興味があるかよ。そうじゃなくて、『★』について知ってるかどうかってことだ」


のように、

モブキャラの名前は出すが、そのキャラクターが重要ではないということをあからさまにセリフの中で出し、その上で改めて『★』が重要そうという空気をすぐに出すというのも解決策の一つとなり得ます。


こんな形で、長くなりましたが①と②をどちらを優先し、優先しなかった方をどう回避するのか、ということを考えると、総合的な解決に繋がるのではないかと思います。


2023年10月20日に作成した記事


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