小説の書き方。キャラに感情移入させるためのテクニックとは?
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Q.作家志望の方からの質問
先日、エンタメノベルラボの分析会でのフリートークの中で、キャラクターへの感情移入について言及される場面がありました。
私も感情移入について何となくのイメージは持っていますが、いざ言葉で説明するとなると難しいなと感じます。
そこで質問です。
①そもそもキャラクターに感情移入できるとはどういう状態なのか?
②、①を踏まえた上で、読者をキャラクターに感情移入させるためのテクニックにはどういった例があるか?
参考までにプロ作家の考えを伺えると幸いです。
A.プロのラノベ作家が回答します。
2つの質問にそれぞれ回答をさせて頂きます。
①のそもそも感情移入できるとはどういう状態なのかについてです。
こちらはいくつか「感情移入」の形に種類があると思われます。よくあるものとしては、
①.負の状況からの立ち直り
特定のキャラクターがマイナスの状況に置かれ、そのキャラクターがその負の状況にがっかりするか、その状況から何とか立ち直ろうと頑張るという行為に対して発生しやすいです。
極端な具体例としては、「あるキャラクターが本気で挑んだ試合やバトルで負けて、泣きながら悔しがる」「あるキャラクターが好きだった異性に告白したらふられてしまい、でも仕方ないなと振り切って頑張って前を向こうとする」のようなパターンです。
人は、勝ちまくって何の悩みもない人間よりも、何かに負けて悩みを抱えている人間の方が「人間としての本性が出ている」と思うことが割合として多く、親近感が湧くという意味で感情移入がうまくいくことが多いです。
主人公がとにかく俺tueeeをやる作品ではこのパターンは使えないですか?というお話に関しては、確かに主人公をこの負の状況に追い込むことは作品の企画と相性が悪くなります。
しかし、主人公の近くにいるヒロインやサブキャラクターを、この負の状況に入れて感情移入をいざなうというエピソードとして使う分には問題がなかったりもするので、使う余地はあると思います。
②.憧れへの自己投影
こちらは上記①とは異なり、とにかくかっこよくて強いキャラクター(特に主人公)に対し読者が自分自身を重ね合わせることによって、満足感を得られるというタイプの感情移入です。
強い主人公が弱者を救ったり敵を倒したり(場合によっては同情の余地がある敵すら救おうとしたり)するという"強き正義"としての行動に読者が感情を移入し、その物語を強者の目線から楽しむための感情移入となります。
③.理不尽な状況への同情
こちらは上記①や②と異なり、割とコミカルなシーンで登場がすることが多いです。
具体例としては、「何回主人公に告白しても『え、何だって?』と返されて全く聞いて貰えないヒロイン」「戦記モノの作品で、前線に行きたくないがために色々工作するが結局最前線に送られてしまう主人公」のようなパターンです。
強いて言うと「理不尽という名の負の状況に置かれている」という意味で上記①の一種と考えることもできますが、この場合の理不尽というのが絶対に乗り越えなければいけないマイナスな状況ということはあまりないです。
あくまで読者が「理不尽な目にあって可愛そうに」というおもしろおかしい同情を寄せるという意味で、感情移入を果たしているという考え方になります。
感情移入とはどういう状態か?
他にもパターンは色々ありますが、大体全部に共通して言えるのは。
「感情移入」とは「読者がキャラクターに親近感を覚えること」&「読者がそのキャラクターに自らを重ね合わせることができると思えるくらい、そのキャラクターを信頼できる」ということの2つが揃っている状態の事を指す、ということです。
物語を読むにあたって、読者はその物語の誰かに自分自身を投影する必要があります。
例えば同じ戦争であっても、主人公が勝者側の人間であり読者がその主人公に自己投影しながら読む物語は「大勝利の物語」になります。
逆に主人公が敗北側の人間だった場合は、読者はその負けた主人公に自己投影をしながら「敗北と立ち直りの物語」を楽しむことになります。
全く同じ戦争でも、読者が"感情移入先"を誰に設定するかによって物語は全く変わります。それくらい、読者が物語世界を見るためのカメラ=キャラクターは重要なのです。
しかしその際に、キャラクターがもし「感情移入できない」キャラクターだと、読者はその物語世界を楽しむためのカメラを失うことになります。
だから、読者が安心して自己を投影できるキャラクターを作るために、そのキャラクターは「感情移入」できるキャラクターである必要があります。
どうすれば読者をキャラクターに感情移入させられるかのテクニック
一番手っ取り早いのは、上記①の質問の回答である①~③のテンプレートを用いてみるということです。
が、それ以外の考え方として、あえて逆に「全く感情移入することができないキャラクター」という悪い例について考えてみるという手があります。
例えば適当な例ですが、「主人公は勇者。子供の時からある小さい村で育ち、村人たちに可愛がられながら成長して勇者になったが、ある日王都のギャンブル場でお金を溶かしてしまう。主人公はお金が足りなくなったので、村に戻って村人達を痛めつけてお金をむりやり強奪した」みたいな主人公を考えてみます。
一言で言えばいわゆるクズ主人公なのですが、読者はこの主人公の子供時代からこの主人公目線でこの物語世界を見ているので、最初は読み進めていると「この主人公は村人から愛されているんだな。きっと主人公は成長したら心優しい勇者になるのだろう」と主人公に信頼を覚え、その主人公に読者が自分自身を投影し始めます。
が、その主人公が大人になって、恩があるはずの村人を痛めつけてお金を強奪するという最悪な行為に出ると、読者は一気に冷めます。
そしてここが重要なポイントなのですが、
なぜ冷めるのかというと、「主人公が最悪な行為をしたから」ではなく、「主人公が最悪な行為をすることによって、その主人公に自己投影していた読者自身が悪い事をしたような気分になるから」なのです。
言い換えると、「感情移入」の基礎である「親近感」&「信頼」という2点が、主人公自身の最悪な行為により両方とも崩れて、読者はこの物語世界を一体誰の目から見ればいいのか分からなくなり、(=今までは主人公目線で物語世界を見ていたが、この主人公が読者自身の"目線"として使うにはあまりに駄目なカメラだったということに気付き、)一気にこの物語世界が見れなくなるのです。
つまり、「適切な感情移入」とは、読者が物語世界を安心して見ることができる目線=キャラクターを確固たるものにするためのテクニックであるということが、このことから分かります。
なので感情移入させるためのテクニックとは、「読者が物語世界を安心して見ることができる目線=キャラクターの信頼度をとにかくあげるように心がけること」とも言えるのではないかと思います。
2023年10月20日に作成した記事
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